化 学 第三部:物質の状態と変化

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒ “基礎化学“ ⇒
 
  気体圧力の理解の基本として,【気体分子の熱運動】  について紹介する。

 気体分子の熱運動

 気体は,粒子(分子,原子)間の距離が長く,粒子間の相互作用をほとんど受けず,熱運動の影響のみを受ける。
 気体に熱を与えると,エネルギー保存の法則(熱力学第一法則)に従い,熱量( Q )は,仕事( W )と内部エネルギー( U ;粒子の運動エネルギーの総量)の和になる。
 
    δU = δQ -δW
    δU :内部エネルギーの変化量,δQ :外から与えられた熱量,δW :系外に取り出される仕事
 
 【熱運動】で紹介したように,気体の粒子の運動は,並進運動(一定速度での直進運動),回転運動分子内振動に分けられる。
 気体では粒子間の相互作用が小さいので,閉じられた系などの外に対する仕事が小さい場合には,与えられた熱は並進運動増加使われると考えてよい。
 すなわち,粒子の質量( m )は変わらないので,与えられた熱エネルギー( E )は,粒子の並進運動の速度( ν )の増加( E = 1 / 2・mν2になる。
 
 気体は多数の粒子の集合体のため,粒子間の距離が離れているとはいえ,粒子同士の衝突がある。気体を構成する原子や分子の衝突は,完全弾性衝突( perfectly elastic collision )と考えられるので,衝突により互いのエネルギーを交換する。
 すなわち,一つの粒子に注目した時,ある時に速度 ν1 で移動し,衝突後に速度 ν2 に変わる。これを繰り返しながら存在することになる。従って,ある温度の気体は,幅広い速度分布(マクスウェル分布)を持った粒子の集まりで,粒子の速度はその平均値でしか表せないことになる。
 下図には,窒素分子( N2 )の温度と分子速度の関係,温度 20℃での各種気体分子( H2 ,He,H2O ,N2 ,O2 ,Ar )の速度分布の計算結果を示す。計算には,ボルツマン定数( 1.3806×10-23 ),質量として窒素( 4.6872×10-26 kg ),水素( 3.348×10-27 kg ),ヘリウム( 6.696×10-27 kg ),水( 2.99×10-26 kg ),酸素( 5.3568×10-26 kg ),アルゴン( 6.6876×10-26 kg )を用いた。
 図から,気体分子は,温度が高いほど,分子量が小さいほど,速度分布が広くなり,ピーク速度と平均速度が大きくなることが分かる。

気体分子の速度分布

気体分子の速度分布


 【参考】
 マクスウェル分布( Maxwell distribution )
 熱力学的平衡状態で気体分子の速度が従う分布関数(マクスウェル-ボルツマン分布:Maxwell - Boltzmann distribution ともいう)である。
 ここで,分子の質量 m ,ボルツマン定数 k ,温度(ケルビン) T とすると,分子速度νの分布は,次の分布式で表せる。

マクスウェル速度分布式

マクスウェル速度分布式

 マクスウェル速度分布からは,分子速度のピーク νmax = ( 2 k T / m )1/2,平均速度νave = ( 4 / π)1/2νmax となる。 なお,気体分子運動論における理想気体の単原子分子の二乗平均速度〈ν2 〉= 3 k T / m となる。
 衝突( collision )
 運動している 2 つの物体が接触し,短時間に力を相互に及ぼし合う物理的現象をいう。 2 つの物体が衝突した時,衝突前の一方の物体の相対速度をνとすると,衝突後の相対速度ν’は,ν’= - e νとなる。
 e は反発係数と呼ばれ,0 から 1 の間の値を取る。e = 1 であれば運動エネルギーが保存されるので,完全弾性衝突( perfectly elastic collision )といわれる。完全弾性衝突以外は,運動エネルギーの一部が熱エネルギーなどに変換される。

  ページの先頭へ