物 理 電磁気学(電荷と帯電)

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 ここでは,電荷の基本に関し, 【クーロンの法則】【帯電とは】【物質の基本構造】【接触・摩擦帯電】【摩擦帯電装置】【誘導帯電】【静電誘導を用いた器具】 に項目を分けて紹介する。

【クーロンの法則】

 電荷(electric charge)とは,素粒子の持つ性質の一つである。電荷の量を電気量(quantity of electricity)電荷量(quantity of electric charge , charge quantity)という。
 電荷を正,負の2種に分類し,それぞれ正電荷(positive charge)負電荷(negative charge)などといい。等量の正電荷と負電荷により全体として電荷のない状態を電気的に中性であるという。電気的に中性の状態から摩擦により正電荷又は負電荷が除かれると,当量の反対電荷が残り,電荷が発生する。
 一般に,閉じた系においては電荷の代数和は一定であるという電荷保存則(principle of conservation of charge)が成り立つ。
 
 クーロンの法則(Coulomb’s Low)
 フランスの物理学者クーロンが提案した電磁気学の基本法則で,電荷のクーロンの法則と磁荷のクーロンの法則がある。
 
 電荷クーロンの法則
 荷電粒子間に働き,反発又は引き合う力が,それぞれの電荷の積に比例し,距離の2 乗に反比例(逆 2 乗の法則)する。
 電荷を帯びた 2つの荷電粒子間に働くをクーロン力 ( F ) といい,2 つの粒子の電荷の大きさ( q1 と q2 ),粒子間の距離( r )とすると,
       
で与えられる。ここで,比例定数 k ( 8.9876×109 N1 m2A−2 s−2 ) は,クーロン定数といわれる。
 クーロン定数は,真空の誘電率 ε0 (= 8.854×10–12 A2 s2 N−1 m−2 ) を用いて,k = (4πε0)–1 で表される。
       
 なお,クーロン力は,静電力,静電気力,静電引力などともいわれる。
 
 磁荷クーロンの法則
 磁気を帯びた粒子間に働く力に関しても,電荷のクーロンの法則と同様に,距離の逆 2 乗の関係があり,これもクーロンの法則といわれる。
 力の基本で述べたように,存在を確認されていないが,仮想的な概念としての磁荷が用いられる。
 粒子間に働く力の大きさ F は,粒子の磁荷を m1 ,m2 ,真空の透磁率をμ0 とすると,
       
で与えられる。

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 【帯電とは】

 帯電(electrification)とは,物体が電荷を持つこと(帯電する),持たせること(帯電させる),又は持っている状態(帯電している)をいう。なお,帯電したまま動かずにいる電気を静電気という。
 代表的な帯電させる方法の分類は次の通りである。
 
 接触による帯電
 接触帯電(contact electrification , contact charging)
 導体がすでに正に帯電した絶縁体との接触で電子を受け取り負に帯電,逆に負に帯電した絶縁体との接触で電子を奪われ正に帯電する。
 摩擦帯電(frictional electrification , frictional charging)
 2 つの物体(絶縁体同士,又は絶縁体と導体)の摩擦により相手の物体から電子を奪い負に帯電,この時,相手の物体は電子を奪われ正に帯電する。
 摩擦帯電には,摩擦現象の違いにより,絶縁性液体や高抵抗粉体のパイプ中の流動中の摩擦による流動帯電,噴出する時の摩擦による噴出帯電,絶縁体を破砕する際の摩擦による破砕帯電など実用面での分類もある。
 
 非接触での帯電
 静電誘導(electrostatic induction)
 導体を帯電した絶縁体に接近させると,導体中の電子が移動し,物体に近い側に帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられ,導体中の相対する表面が互いに反対の電荷に帯電する。
 電磁波の照射
 紫外線,X線,γ射線などの電磁波照射により,物体を構成する原子や分子の軌道電子を放出(電離)し正に帯電する。
 帯電粒子の照射
 負の電荷を持つ電子線,イオンビーム,正の電荷を持つイオンビームなどの照射により,物体中の電荷のバランスが崩れ帯電する。

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 【物質の基本構造】

 既に述べたように,帯電は,物体中の電荷のバランスが崩れることで起きる。
 物体は,単一の元素又は複数の元素の原子(atm)で構成される。
 
 原子の構造
 原子は,直径 10–15 ~ 10–14 m の原子核(atomic nucleus)とそれを取り巻く電子(electron)で構成される。
 元素の種類で異なるが,電子を含んだ原子の大きさは,概ねで直径 10–10 m ( 1Å ,0.1nm )である。すなわち,原子に占める原子核の領域は非常に小さく,ほとんどが電子の運動領域で占められていることが分かる。
 
 水素以外の原子核は,【電気素量】で紹介したように,正の電荷( +e )を持つ陽子( proton )とほぼ同じ質量で電荷を持たない中性子(neutron)がいくつか集まってできている。水素のみは,陽子 1 個で中性子を含まない原子核である。 なお,陽子の数と中性子の数の和を量子数(mass number)という。
 原子核に含まれる陽子の数は,元素の種類により一義的に決まる。電気的に中性な原子では,原子核の周りに陽子の数と同じ数の負の電荷( –e )を持つ電子が取り巻く。
 
 電子の持つエネルギー
 原子核周りの負の電荷を持つ電子の挙動は,正の電荷を持つ原子核による静電ポテンシャル(3次元)の中でのシュレーディンガー方程式(量子力学の波動関数)で説明されるように,電子は主量子数(main quantum number) n ,方位量子数(azimuthal quantum number) l (エル) ,磁気量子数(magnetic quantum number) m で指定される電子軌道(electron orbital)を持つ。
 電子は,パウリの排他原理により, 1 つの軌道には異なるスピン角運動量(spin wave function :上向きのスピン,下向きのスピン)の2つの電子しか入れない。
 すなわち,電子軌道は,とびとびのエネルギー準位しか取れないので,原子周りの電子は,エネルギー順位の低い軌道から収容され,完全に電子で埋まっていない最も外側の軌道にある電子(最外殻電子:outermost electron)が,その元素の化学的性質を決定する。
 
 実用物質の結合様式
 実用の物質は,複数の原子の集まった分子になる。分子には,結合様式の違いで次の 3 種に分けられる。
 有機化合物や無機化合物の分子の形成には,最外殻電子などの電子雲が重なり,新しい分子軌道を作る共有結合(covalent bond),
 第一イオン化エネルギーが小さい元素と電気陰性度の大きい元素の分子では,一方の原子の最外殻電子が他方の原子に移動し生成した正負のイオンによるイオン結合(electrovalent bond)がある。
 金属では,構成する原子の数に相当するn 個の分子軌道が形成される。この結果,エネルギー順位が細かく分裂(エネルギーバンド)し,原子核に拘束されず固体内を自由に移動できる自由電子(free electron)を持つ金属結合(metallic bond)になる。
 
 電子軌道(electron orbital)
 軌道と訳されているため,電車の軌道,衛星軌道などのように,一定の法則に従って運動するときの筋道と錯覚されるが,electron(電子の)orbital(軌道のようなもの)は,電子の状態を波動関数(wave function)で表したもので,雲のように広がった連続的分布をしていると考えられている。電子の分布を電子雲(electron cloud)ともいう。
 
 最外殻電子(outermost electron)
 原子核から最も遠く,最も高いエネルギーをもつ電子殻(electron shell)に存在する電子をいい,原子の化学的性質や反応性を決定する。
 同じ主量子数に属する軌道をひとまとめにして電子殻といい,主量子数 n=1 ,2,3,4,…に対して,K 殻,L 殻,M 殻,N 殻といわれる。

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 【接触・摩擦帯電】

 先に述べたように,物質の帯電は,電気的に中性の物質が何らかの原因(接触,摩擦,誘電,電磁波による電離,電荷注入など)で,物質内の(+),(-)の電荷分布に偏りが生じつことで起きる。
 ここでは,物体の接触で起きる接触帯電(contact electrification , contact charging)と,摩擦帯電(frictional electrification , frictional charging)を紹介する。
 
 接触面での電荷(電子)の授受
 物体が接触した時,接触面において,電子のやり取りが起こる。界面で起きるこの現象を明確に説明することが困難であるが,定性的には,物質同士が接触すると物質同士の仕事関数の差による物質間での電子移動が主要な要因であると説明されている。
 
 摩擦による電荷(電子)の授受
 接触に加えて,摩擦には接触面積を広げる効果があるため,単純な接触より多くの電子が移動し,強く帯電すると考えられる。
 異種物質の接触で電荷の移動は一般的に認められる現象であるが,その電荷移動の序列を求めたものを帯電列摩擦帯電列と呼ぶ。
 
 帯電列(triboelectric series)
 帯電列は,2 種の物質を実際に接触・摩擦し観察し,その序列を定めるのが一般的であるが,文献類を見ると,帯電列は物質種で一義的に決まっていないことが分かる。
 これは,接触・摩擦に関わる物質表面が,実験環境からの物質の吸着や酸化・還元などの影響を受け,実験条件により表面状態が異なることによる。
 従って,帯電列を厳密に決める事は難しいため,種々の帯電列が提案されていると考えられる。
 次の「摩擦帯電装置」で紹介するする図には,複数の文献に示される帯電列を参考に,一般的な材料の序列の例を示した。従って,実際の環境における順番とは必ずしも一致しないことがある。

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 【摩擦帯電装置】

 ここでは,摩擦帯電現象を利用した起電機として,静電気の学生実験などに用いられ,広く知られるヴァンデグラフ起電機(Van de Graaff generator,バンデグラフ起電機ともいう)を紹介する。
 
 この起電機は,アメリカの理学者ヴァン・デ・グラフ(1901 ~ 1967年)が発明したもので,材質の異なる 2 個のローラー間を回転するゴムベルトを基本構造とする。
 ゴムベルトとローラー間の接触・摩擦帯電で発生した電荷をゴムベルトで運び,先端のとがった櫛を用いて受け取った電荷を中空の金属球に溜めることができる。これにより,非常に高い電位差を作り出すことができる。
 
 動作原理
 ローラーに木材や金属を用いた場合には,ゴムベルトとの接触で,帯電列に示すように,ローラーが(+),ゴムベルトが(-)に帯電する。
 ローラーに塩化ビニルを用いた場合には,ゴムベルトとの接触で,帯電列に示すように,ローラーが(-),ゴムベルトが(+)に帯電する。
 ベルトは不導体のため,電荷はベルト内を瞬時に移動できないため,ベルト表面に留まることができる。そこで,帯電したローラーを回転させることで,ベルトの電荷が運搬される。
 先端のとがったにベルトが近づくことで,鋭利な櫛の先端位置電場は非常に強くなり,空気の分子をイオン化することで,電子の授受,すなわち電荷の授受が起きる。
 
 これにより,図に示すように,正電荷負電荷を別々に集めることができる。なお,図のローラー A ,B の材質を変える変えることで,集める電荷の正負を逆転できる。
 なお,空気放電があるので,電荷を無限に集めることができず,金属球の大きさにより到達できる電位に限界がある。
 例えば,直径 30 cm の金属球で 450 kV が限界である。加速器用途に工夫(ヴァンデグラフ加速器)されたものには,15.5 MV(= 15500 kV )を達成できるものも作られている。

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 【誘導帯電】

 先に述べたように,物質の帯電は,電気的に中性の物質が何らかの原因(接触,摩擦,誘電,電磁波による電離,電荷注入など)で,物質内の(+),(-)の電荷分布に偏りが生じつことで起きる。
 ここでは,物体の非接触で起きる静電誘導を紹介する。
 
 静電誘導(electrostatic induction)
 静電感応ともいい,導体(又は誘電体)に帯電した物体(帯電体)を近づけると,接触しなくとも,導体(又は誘電体)の帯電体に近い側に異符号の電荷が,遠い側に同符号の電荷が現れる現象である。なお,誘導された電荷の異符号と同符号は等量となる。
 導体では,導体中の自由電子(free electron)が,外部電荷(外部電場)から力(クーロンの法則)を受ける。外部電荷が負(-)の場合は斥力,正(+)の場合は引力を受け,導体全体がふたたび等電位となるまで,自由電子が導体内を移動する。
 
 誘電体(dielectric substance)
 電気を通さない絶縁体(不導体)として振る舞う。すなわち,導体と異なり自由電子を持たないが,外部電荷から受けるクーロン力(クーロンの法則)により,誘電体を構成する分子が分極(polarization)するため,導体の場合と同様に誘電体内部の電荷配向による帯電が起きる。
 
 分極(polarization)
 電荷の分極(誘電分極,又は電気分極という),磁極の分極(磁気分極),化学結合の分極,電気化学的分極などがある。
 誘電分極(dielectric polarization)は,絶縁体(誘電体)に外部電場をかけた時に,誘電体内部に電気双極子が生じて分極する現象で,電子分極,イオン分極,配向分極,空間電荷分極などがある。

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 【静電誘導を用いた器具】

 電気盆(electrophorus)
 ボルタ電池で知られるイタリアの物理学者ボルタが広めた静電誘導を用いた蓄電器である。
 毛皮エボナイト板を十分に摩擦すると,前出の帯電列に示したように,エボナイト板は負に帯電する。
 この上に金属板を近づけると,静電誘導により,正電荷がエボナイト板と向き合う面に,負電荷が金属板上面に移動する。
 そこで,金属板上面を指で触れ,指を離した後に金属板をエボナイト板から離すと,金属板は正に帯電した状態が保たれる。
 金属板上面を指で触れることで,上面の負電荷(電子)が指を通じて人体にとられ,金属板全体は電子の不足した状態,すなわち正に帯電する。これにより,正電荷の蓄電,移動が可能になる。
 
 箔検電器(leaf electrometer , leaf electroscope)
 帯電電極(金属箔)に働く静電的な反発力を利用して,電荷の有無やその量を調べるためのもっとも簡単な計器である。
 一般的には,大気の流動の影響を除くため,ガラス瓶の中に通した金属棒の下端に金やアルミニウムの箔を二枚つるした構造を持つ。
 電気的に中性の状態では,金属箔は重力により垂直に垂れているが,帯電物を導体に近づけると,静電誘導によって帯電物に近い導体は,帯電物と異種の電荷で帯電し,箔の下端部が帯電物と同種の電荷で帯電する。
 すなわち,2 枚の箔は同種の電荷で帯電することになるので,互いに反発し,箔の間隔が広がる。
 
 箔の開きにより,近づけた物体の帯電の有無を知ることができる。また,箔の開き程度により帯電物の電気量を知ることもできる。開きを精密に測定できる構造のものは箔電位計といわれる。

電気盆,検電器の模式図

電気盆,検電器の模式図

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