化 学 (物質の状態と変化)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒ “総目次(化学)“

 【溶解現象とは】

 溶解( dissolution )という場合は,一般的な液体中に気体,液体や固体が溶ける現象の他に,固体中に気体が溶ける現象,固溶体( solid solution )を形成する現象などについてもいわれる。なお,固溶体とは, 2 種類以上の元素(金属の場合も非金属の場合もある)が互いに溶け合い,均一の固相となっているものをいう。
 さらに,金属工業などの技術分野では,金属が溶融すること,即ち固体の融解現象を溶解と称することもある。合金の製造では,熱して液状にした金属に合金成分を溶解する作業を含むため,融解も含めて溶解と称しているようである。
 
 一般的には,JIS K 0211 2013 「分析化学用語(基礎部門)」に定義する「液体中に他の物質が溶け込んで均一な相になる現象」を溶解と認識されているので,ここでは,液体中に溶け込む現象,物質が溶け込んだ溶液の特性について紹介する。

溶液に関わるの基本用語

溶液( solution )
 2 種以上の物質で構成する液体状態の混合物をいう。
 一般的には,微視的レベルの分子,イオン,それらの会合物が均一に分散している液体を言うことが多い。
 定義から,一方の物質が,巨視的な分子の集合体として均質に分散している場合(コロイド溶液)も溶液と呼ぶ場合がある。
 
溶媒( solvent )
 固体,液体,気体を溶かす液体の呼称である。工業分野では,溶媒より広い意味合いを持たせた溶剤と呼ぶ。溶剤は,単一物質を用いた溶媒の他に,対象物質の溶解性や分散性改善目的に,複数の溶媒を混合した溶液を混合溶剤と称している。
 溶媒の特性は,目的物質を良く溶かす(溶解度が高い)こと,化学的に安定で溶質と化学反応しないことが重要である。
 一般的に用いる溶媒は,分子の特性から,極性(親水性)無極性(疎水性)とに大別(溶質も同様)される。
 無極性溶媒の代表例には,沸点の低い順に,ジエチルエーテル,塩化メチレン,クロロホルム,ヘキサン,酢酸エチル,ベンゼン,トルエンなどがある。
 極性溶媒プロトン性非プロトン性とに分類される。
 プロトン性溶媒とは,ルイス酸・塩基の特性を持つ溶媒で,沸点の低い順に,メタノール,エタノール,プロパノール,ギ酸,水,酢酸など溶媒分子間で水素結合を形成している溶媒である。
 非プロトン性溶媒には,沸点の低い順に,テトラヒドロフラン,アセトン,アセトニトリルなど代表例として挙げられる。
 
溶質( solute )
 一つの溶液において,溶かされた成分を溶質という。溶質は,固体,液体,気体のいずれでもよい。
 溶媒と溶質の関係は,量の多少とは関係ない。例えば,20℃で水100 g に対し,砂糖(ショ糖)は 200 g 以上溶解するが,この溶液は,水を溶媒とする“砂糖水,あるいは砂糖の水溶液”として扱われる。
 溶媒への溶解性は,経験則として「似た者同士の相性が良い」と言い表せられるように,【双極子とは】で紹介した分子の極性を考慮して,無極性分子は無極性溶媒に,極性分子は極性プロトン性溶媒に溶け易いと考えて大きな問題はない。
 
理想溶液( ideal solution )
 溶液の中で,溶媒の分子と溶質の分子との間の相互作用が等価で,それぞれを区別できない混合状態の溶液をいう。
 理想溶液は,熱力学的概念で,ラウールの法則が導かれる。言い換えると,いずれの溶液濃度でもラウールの法則が成立する溶液を理想溶液という。
 経験的には,構成分子の分子の大きさがほぼ等しく,混合熱がゼロで,混合による容積変化もゼロの溶液である。
 
正則溶液( regular solution )
 溶質と溶媒との間の凝集力がファンデルワールス力(厳密にはロンドン分散力)のみの場合の溶液をいう。
 分子や原子などに生じる一時的な電気双極子間の引力によって生じる弱い分子間力をロンドン分散力( London dispersion force )という。ファンデルワールス力も狭義にはロンドン分散力である。
 すなわち,正則溶液とは,静電相互作用(イオン結合),会合(水素結合),双極子相互作用(分極)等が作用しない溶液である。
 経験的には,混合により発熱あるいは吸熱を生じるが,混合エントロピーの変化は理想溶液と同等の溶液である。
 
電解質溶液( electrolyte solution )
 イオン性物質(いわゆる塩)は,溶解することで,正と負のイオンを生じる。このためイオン間に強い静電相互作用が働き,独特の挙動を示す溶液をいう。
 水などの溶媒分子が分極できる極性溶媒は,イオンの周りを溶媒分子で取り囲み,イオンの電荷を遮蔽する。これにより,正・負イオン間の静電相互作用の力を相対的に弱めることができ,イオン性物質を陽イオン,陰イオンに安定的に解離して溶解(電離)することができる。
 一般的には,イオン性物質の溶解度は,極性が強く比誘電率の高い溶媒ほど,電解質を強く解離させることができるので大きくなる。

【参考】

ラウールの法則( Raoult's law )
 「混合溶液の各成分の蒸気圧はそれぞれの純液体の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される」をいう。一般的には,十分に希薄な溶液について成り立つ。

  ページの先頭へ