化 学 (物質の状態と変化)

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 【固体・液体の溶解平衡】

 固体の溶質が溶けるとは,強い分子間力で拘束されていた粒子が,固体表面から順番に粒子(分子,又は電離したイオン)として液体中に拡散する現象である。
 固体の浸漬で溶解が進むと,溶液中の溶質濃度が増加する。外部からのエネルギー授受が無い場合には,模式図に示すように,固体表面から液体中に分散する粒子(熱運動でランダムに進む)と液体中の粒子が固体表面に析出する数が変化し,ついには分散する粒子と析出する粒子数が同じになり,溶液中の溶質濃度が変化しなくなる。この状態を平衡状態(溶解平衡)といい,この時の溶質濃度が溶解度になる。

溶解現象の模式図(溶解平衡)

溶解現象の模式図(溶解平衡)

 異なる液体同士を接触させた場合も,液体 / 液体界面で同様の現象が起きていると考えられる。

再結晶による精製

 【溶解度】溶解度曲線の紹介で,溶解度は温度の影響を受けることを紹介した。すなわち,ある温度で水に固体を入れ,水溶液が飽和濃度(溶解度)に達した後に温度を変えた場合を考える。
 溶解度が増加する方向に温度が変化した場合には,残った固体がさらに溶解することになる。逆に溶解度が減少する方向に温度を変化させると,溶液中の濃度が減少,即ち固体が増加することになる。
 この現象を利用し,不純物の混入した固体を精製することができる。この方法を再結晶法という。この方法は,溶解度の温度変化の大きい物質,対象物質と不純物の溶解度が大きく異なる場合に有効である。
 ここでは,温度変化で溶解度が急激に変化する硝酸カリウム( KNO3 )と変化がより緩慢な硫酸銅(Ⅱ)( CuSO4 )の混合物について,再結晶法の特徴を溶解度曲線を用いて解説する。

再結晶による精製の原理

再結晶による精製の原理

純粋な硝酸カリウム結晶を得るには
 溶解度変化の大きい硫酸カリウムに不純物として硫酸銅(Ⅱ)が少量含まれている固体を考える。
 硝酸カリウムを完全に溶解した時,図の濃度 A となる固体量に,不純物として硫酸銅(Ⅱ)が濃度 B となる量含まれている場合には,硝酸カリウムの溶解度曲線と濃度 A が交差する温度( TK1以上に加熱することで,すべての固体を溶解することができる。
 すべての固体が溶解した後に,溶液の温度を徐々に下げてゆくと,温度( TK1硝酸カリウムが析出し始める。きれいな結晶を得たい場合は,過飽和とならないように,トリガーとなる結晶核などがあるとスムーズに実験できる。
 温度が,硫酸銅(Ⅱ)の溶解度曲線と濃度 B が交差する温度( TK2まで下がると,硫酸銅(Ⅱ)の析出が始まる。
 再結晶法の操作をこの温度でとどめることで,温度( TK1 )と温度( TK2の硝酸カリウムの濃度差に相当する量の純粋な硝酸カリウムを得ることができる。
 図から分かるように,硫酸銅(Ⅱ)の濃度が,温度( TK1と溶解度曲線との交点の濃度( CCu )を超える場合には,この方法で純粋な硝酸カリウムを得ることができない。
 
純粋な硫酸銅(Ⅱ)結晶を得るには
 硫酸銅(Ⅱ)に不純物として硝酸カリウムが少量含まれている固体を考える。
 考え方は”純粋な硝酸カリウム結晶を得るには”と同じである。すなわち,溶解度変化の大きい硫酸銅(Ⅱ)を完全に溶解した時,図の濃度 A となる量に,不純物として硝酸カリウムが濃度 B となる量含まれている場合には,温度( TCu1以上にすることで,すべての固体を溶解することができる。
 温度( TCu1硫酸銅(Ⅱ)が析出し始め,温度( TCu2までは,溶解度曲線の濃度差に相当する量の純粋な硫酸銅(Ⅱ)を得ることができる。

【参考】

 溶解度曲線の温度依存性が低い塩化ナトリウム( NaCl )などは,温度変化による精製高効率が悪い。そのため,再結晶による精製は,溶液中の濃度を変えるため,煮詰めるなど溶媒を揮発させる方法が採られる。

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