化 学 (化学反応)

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 ここでは,電気化学の基礎の電極反応に関連し,【標準電極電位とは】【標準電極電位と式量電極電位】【主な元素の標準電極電位】【参考:関連電気化学用語】に項目を分けて紹介する。

 【標準酸化還元電位(標準電極電位)とは】

 【イオン化傾向】で紹介したように,酸化還元電位( redox potential ,oxidation-reduction potential )とは,水溶液中など酸化還元反応が起きる場(反応系)での電子授受で発生する電極電位をいう。
 酸化還元電位は,規定する条件下において,反応にあずかる物質の電子の放出しやすさ,又は受け取りやすさを定量的に評価する尺度となる。
 【電極電位の測定】紹介した方法により,半反応の電位を計測できる。作用極に不活性電極を用いることで,溶液の酸化還元反応の電位を測定できる。
 金属の置かれた環境での酸化還元電位は,電池の起電力や金属の腐食現象の理解を容易にする。この電位は,作用電極に知りたい金属を用い,知りたい環境を模擬した電解質溶液を用いることで計測できる。
 一方,標準酸化還元電位( standard redox potential ,standard oxidation-reduction potential )は,標準電極電位( standard electrode potential )とも呼はれ,次に示すように,熱力学的に求まる理論値である。

 

 【標準電極電位と式量電極電位】

 標準電極電位は,ギブズエネルギー変化⊿rG0 に対応する電位 E0 と定義される。
      rG0 = - zFE0
      ここで,z :酸化還元反応で授受される電子数,F :ファラデー定数( 96,485 C mol-1
 
 電極反応でのギブスエネルギー変化は,生成物と反応物の標準生成ギブスエネルギー(⊿f G0 )の差(⊿rG0 = ( 生成系の⊿f G0 の合計 ) – ( 反応系の⊿f G0 の合計 ) )として求められる。
 例えば,水素の酸化還元( 2H+ + 2e- ⇆ H2 )では,
      rG0 = ⊿rG0 ( H2 ) – 2⊿rG0 ( H+ ) = - 2FE0
      ∴  E0 =(⊿f G0 ( H2 ) – 2⊿f G0 ( H+ ) )/2F
 参考に示すように,単体と水素イオンの標準生成ギブスエネルギーはゼロ( 0 )と定義されているので,水素の標準酸化還元電位(標準電極電位)は 0 V となる。
 標準電極電位は,熱力学的に求まる理論値である。実環境の電極電位は,標準電極電位との関係式(ネルンストの式)から求めることができる。
    ネルンストの式: E = E0 + ( RT /zF ) ln ( [ox] /[red] )
 逆に,実測した電極電位と濃度を用いて得た E0 は,標準電極電位とは言わず,式量電極電位(式量電位)といい,実用的な電池起電力の計算などに用いられる。

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 【主な元素の標準電極電位】

 ここでは,次項以降で紹介する金属のイオン化傾向や起電力の計算などの参考とするため,主な金属原子の標準電極電位(標準酸化還元電位)を紹介する。
 なお,電気化学では,標準水素電極の反応を酸化反応(アノード反応)として表記するよう定められている。従って,測定対象とする電極反応は全て還元反応(カソード反応)として表示される。電極電位の単位は基準点を明らかにするため, V vs. SHE と表記する。
 ただし,米国で逆の定義を採用していた時期があるので,正負が逆の酸化反応で表記する資料もある。米国の文献を不用意に引用すると混乱するので注意が必要である。
 電子は負の電荷を帯びている。従って,電極電位の負の値が大きいほど,電子のエネルギーが高い状態になる。すなわち,電極電位(酸化還元電位)の比較で,電位の負の値が大きいほど電解質中で酸化(電子の放出)され易い,すなわち金属原子の場合は陽イオンになり易い(イオン化傾向が大きいという)ことを示す。
 
 主な元素について,化学便覧(第五版)から抜粋した半反応と標準電極電位(標準酸化還元電位)を次表に紹介する。

主な半反応の標準電極電位(単位: V vs.SHE )
元素  半反応 電位 元素  半反応 電位
 リチウム  Li+ + e- → Li  - 3.045  コバルト  Co(OH)2 + 2e- → Co + 2OH-  - 0.733
 カリウム  K+ + e- → K  - 2.925  コバルト  Co2+ + 2e- → Co  - 0.277
 バリウム  Ba2+ + 2e- → Ba  - 2.92  ニッケル  Ni(OH)2 + 2e- → Ni + 2OH-  - 0.72
 ストロンチウム  Sr2+ + 2e- → Sr  - 2.89  ニッケル  Ni2+ + 2e- → Ni  - 0.257
 カルシウム  Ca2+ + 2e- → Ca  - 2.84  すず  Sn2+ + 2e- → Sn  - 0.1375
 ナトリウム  Na+ + e- → Na  - 2.714  鉛  Pb2+ + 2e- → Pb  - 0.1263
 マグネシウム  Mg(OH)2 + 2e- → Mg + 2OH-  - 2.687  水素  2H2O + 2e- → H2 + 2OH-  - 0.828
 マグネシウム  Mg2+ + 2e- → Mg  - 2.356  水素  2H+ + 2e- → H2   0.0000
 アルミニウム  Al(OH)3 + 3e- → Al + 3OH-  - 2.300  酸素  O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-   0.401
 アルミニウム  Al3+ + 3e- → Al  - 1.676  酸素  O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O(l)   1.229
 チタン  Ti2+ + 2e- → Ti  - 1.63  銅  Cu2+ + 2e- → Cu   0.340
 マンガン  Mn(OH)2 + 2e- → Mn + 2OH-  - 1.56  銅  Cu+ + e- → Cu   0.520
 マンガン  Mn2+ + 2e- → Mn  - 1.18  水銀  Hg22+ + 2e- → Hg   0.7960
 亜鉛  Zn(OH)2 + 2e- → Zn + 2OH-  - 1.246  銀  AgCl + e- → Ag + Cl-   0.2223
 亜鉛  Zn2+ + 2e- → Zn  - 0.7626  銀  Ag+ + e- → Ag   0.7991
 クロム  Cr(OH)3 + 3e- → Cr + 3OH-  - 1.33  白金  Pt2+ + 2e- → Pt   1.188
 クロム  Cr2+ + 2e- → Cr  - 0.90  塩素  Cl2(aq) + 2e- → 2Cl-   1.396
 鉄  Fe(OH)2 + 2e- → Fe + 2OH-  - 0.891  金  Au3+ + 3e- → Au   1.52
 鉄  Fe(OH)3 + e- → Fe(OH)2 + OH-  - 0.556  金  Au+ + e- → Au   1.83
 鉄  Fe2+ + 2e- → Fe  - 0.44  ふっ素  F2(g) + 2H+ + 2e- → 2HF(aq)   3.053

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 【参考】

 ● 標準生成ギブスエネルギー
 標準状態で一番安定な単体を原点に定め,単体から物質 1 mol を生成する反応のギブスエネルギー変化⊿G を測り,これを各物質の標準生成ギブズエネルギーと呼び,⊿f G0 で表す。なお,添え字の f は formationの頭文字である。
 定義から,単体の⊿f G0 は,全て 0 J /mol になる。また,希薄な水溶液中のイオンについては,水素イオン( H+ )の⊿f G0 を原点( 0 )に採った時の相対値で表す。
 多くの物質について,標準生成エンタルピー,標準エントロピーが求められているので,これらから標準生成ギブズエネルギーを求めるのは比較的容易である。さらに,多くの物質の標準生成ギブスエネルギー値は,理化学辞典,化学便覧等に掲載されている。

 以下の用語は,JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」における解説である。
 ● 標準酸化還元電位,標準電極電位( standard redox potential , standard electrode potential )
 電極反応の標準電位の略称。電極反応 A + ne- ⇌ B の標準酸化還元電位(標準電極電位)( E0 )は,次の式で表す。
      E0 = -⊿rG0 /nF
      ここに,⊿rG0 :反応 A + n/2 H2 → B + nH+ の標準反応ギブズエネルギー,F:ファラデー定数
 ● 電極電位( electrode potential )
 a ) 電極が溶液相などのイオン伝導体相と接しているとき,後者の内部電位に対する前者の内部電位。
   注記 この値を直接実測することは不可能である。
 b ) 注目している電極系を,ある参照電極と組み合わせてガルバニ電池を構成させたとき,注目する電極に取り付けた金属端子の内部電位から,参照電極に取り付けた同種の金属端子の内部電位を差し引いた値。

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