化 学 (物質の状態と変化)希釈溶液

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 【はじめに】

 溶液,即ち溶媒(単一の液体)に溶質を均質に分散させた液体は,元の溶媒の性質と異なる性質を示す。ここでは,溶質の種類と濃度が溶液の性質に与える影響について紹介する。
 この項では,溶液に関わる基本となる用語,及び法則を紹介する。なお,用語については,JIS K 0211「分析化学用語(基礎部門)」などの定義を中心に紹介する。

理想溶液( ideal solution ),実在溶液( real solution ),希薄溶液( dilute solution )

 溶液の性質変化は,溶媒と溶質のモル分率を用いて的確に評価できるのが望ましい。補正なしに性質変化を評価できる溶液を理想溶液といい,補正しなければならない溶液を実在溶液という。
 一般的には,ラウールの法則に従う溶液を理想溶液ラウールの法則に従わない溶液を実在溶液と定義している。
 実在溶液では,モル分率に対して,活量を用いた補正が必要になる。活量とは,理想液体と実存液体の誤差修正のための物理量である。この際に,理想液体からのずれを表す指標として活量係数が用いられる。ずれが無い場合は,活量係数= 1 となり,ずれが大きくなるほど活量係数が小さくなる。
 溶質の濃度との関係は,一般的には濃度が高くなると活量係数は減少し,濃度が低くなると活量係数は 1 に限りなく近づくように増加する。
 活量係数を 1 とみなしても差し支えないほど溶質濃度の低い溶液,即ち理想溶液とみなしても差し支えない溶液を希薄溶液という。

活量( activity ),活量係数( activity coefficient )

 活量は,アメリカの物理化学者,ギルバート・ニュートン・ルイス( 1875 ~ 1946 年)によって導入された物理量で,a と表される。活動度と呼ばれる場合もある。
 理想とする数値からのずれを表す指標として,活量係数γが定義され,i 成分の活量 a iモル分率χi の間には次の関係にある。
       a i = γi χi
 
 なお,JIS K 0211 「分析化学用語(基礎部門)」では,活量とは「ある成分の化学ポテンシャルに関連して与えられる一種の熱力学的濃度(JIS K 0213 参照)。」と定義し,JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」では,活量及び活量係数を次のように定義している。
 活量とは「理想系と実在系に存在する誤差を修正するためにギルバート・ルイスによって導入された物理量。」
   (相対)活量 a i = exp { ⊿μi / RT }
   ここに,μi:i 成分の化学ポテンシャル
        R:気体定数
        T:熱力学的温度
 活量係数
      aB / XB
      aB / ( mB / M0 )
   又は aB / ( CB / C0 )
 で定義される数値。
 ここに,aB :成分 B の相対活量,
    XB ,mB ,及び CB:それぞれ成分 B のモル分率,質量モル濃度,及びモル濃度,
    M0 ,及び C0 :それぞれ標準質量モル濃度(通常,1 mol / kg )及び標準モル濃度(通常,1 mol / L )

希薄溶液の基本法則


① ヘンリーの法則( Henry's law )
 イギリスの化学者,ウィリアム・ヘンリー( William Henry )( 1775 ~ 1836 年)が1803年に気体の溶解性について発見した法則,圧力のあまり高くない範囲では,「一定の温度において,一定量の溶媒に溶けることができる気体の物質量は,その気体の圧力(分圧)に比例」が成立する。
② ラウールの法則( Raoult's law )
 フランスの化学者,フランソワ=マリー=ラウール( 1830 ~ 1901 年)が 1887 年に発見した溶液の性質に関する「混合溶液の各成分の蒸気圧は,それぞれの純液体の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される」という法則である。
 ラウールの法則が成立する溶液を理想溶液という。ラウールの法則は十分に希薄な溶液について成り立つ。一般的には,分子構造の似た物質どうしの混合液が理想溶液に近いとされる。
③ ネルンストの分配律( Nernst's distribution law )
 ドイツの化学者,ヴァルター・ヘルマン・ネルンスト( 1864 ~ 1941 年)が 1891 年に発見した二相系に関する法則で「一定温度で二種の溶媒に溶解する溶質の濃度の比は一定である」で,分配の法則などとも呼ばれる。ない,ネルンストは,ネルンストの式や、熱力学第三法則を発見している。
④ 沸点上昇の法則
 溶媒に不揮発性溶質を溶解すると,蒸気圧が降下する結果として,沸点が上昇する。沸点上昇度は溶質の濃度に比例する。
⑤ 凝固点降下の法則
 溶媒に不揮発性溶質を溶解すると,蒸気圧が降下する結果として,凝固点が降下する。凝固点降下度は溶質の濃度に比例する。
⑥ 浸透圧に関するファントホッフの法則
 オランダの化学者,ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ( 1852 ~ 1911 年)が 1887 年に,「浸透圧は,熱力学的温度と溶液のモル濃度に比例する」,即ち浸透圧(Π:パイ)が理想気体の状態方程式と同じく扱える(Π V = n R T )ことを証明した。

【参考】

 関連する用語について,JIS K 0211 「分析化学用語(基礎部門)」での定義を紹介する。
 式量,化学式量( formula weight,chemical formula weight ):化学式の中に含まれる各原子の原子量の総和。 化学式中の各元素について,各原子の原子量にそれぞれの元素の原子数を乗じたものの和。
 グラム式量( gram formular mass ):化学式量を,グラム単位を用いて表した量。
 恒量( constant weight ):同一条件の下で,物質を加熱・放冷・ひょう量などの操作を繰り返したとき,前後の質量の計量差が規定の値以下となった状態。
 標準状態(気体の)( normal state ):大気圧 101.325 kPa,気温 0 ℃の下に保持された状態。NTP (Normal Temperature and Pressure)と略記される。
 標準温度(体積計の)( normal temperature; standard temperature ):体積計の容積を示すときに標準とする温度。 計量法では 20 ℃。

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