化 学 (物質の状態と変化)

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 【溶液の濃度】

濃度の定義と関連用語
 濃度に関しては,次に例示するように,立場により異なるニュアンスで定義されている。
 ● 標準化学用語辞典(日本化学会編)では「溶液中の溶質の割合を濃度という,いろいろな表し方がある。質量パーセント濃度,モル濃度等」と定義されている。
 
 ● 国際純正応用化学連合(IUPAC)が発行している Gold Book では次の四つの量,質量濃度 ( mass concentration :単位 kg / m3 ) ,物質量濃度 ( amount concentration :単位 mol / m3 ) ,体積濃度 ( volume concentration :単位 m3 / m3 ) ,数濃度 ( number concentration ) のグループで,混合物の組成の特徴を表す量であると定義している。
 
 ● JIS K 0211 2013 「分析化学用語(基礎部門):Technical terms for analytical chemistry ( General part ) 」では,濃度関連の用語を次のように定義している。
 濃度( concentration )は,溶液,固溶体,混合気体,分散系などにおける分析種の含有率を表す数値。
 含有率( concentration )とは,ある物質にある特定の成分が含まれている割合。

濃度表示の基礎

 溶媒に溶質を溶解させた時の濃度を理解するため,基本単位の中で,基本量である物質量( mol ),体積( m3 ),及び質量( kg )を組み合わせた商の関係を下表に示す。


物質量,体積,質量の関係する基本単位
  物質量( mol ) 体積( m3 質量( kg )
物質量( mol ) 物質量分率 mol / mol
(モル分率)
モル体積 m3 / mol モル質量 kg / mol
体積( m3 物質量濃度 mol / m3
(モル濃度)
体積分率 m3 / m3
(体積パーセント濃度 Vol %)
質量濃度 kg / m3
(質量体積パーセント濃度 w / V %)
質量( kg ) 質量モル濃度 mol / kg 比体積 m3 / kg 質量分率 kg / kg
(質量パーセント濃度 wt %)
 基本単位の中で,太字の単位が溶液の濃度に用いられ,細字のモル体積,モル質量,及び比体積は物質の基本特性を示す単位である。
 なお,青太字で示した単位を,パーセント表示する場合には,混同され易いので,【参考】の表示方法に従うのが望ましい。
 溶液の濃度に用いる単位に関しては,JIS K 0211 「分析化学用語(基礎部門)」で次のように定義している。
 a) 分母が物質量( mol )の濃度
 物質量分率(モル分率)( mole fraction )とは,ある成分の物質量を全成分の物質量の総和によって除した値。多成分系における各成分の濃度の表示方法の一つ。全成分の物質量分率の和は 1 となる。
 b) 分母が体積( m3 )の濃度(容量濃度)
 物質量濃度(モル濃度)( molarity )とは,溶液 1 L 中に含まれる溶質の物質量。要素粒子を明記する。
 体積分率(体積パーセント濃度)( volume fraction )とは,体積単位によって表したある成分の全体に対する比率。体積分率 0.123,又は体積分率 12.3 %などと表す。
 質量濃度(質量体積パーセント濃度)( mass concentration )とは,質量を混合物の体積で除したもの(JIS K 0050 参照)。
 c) 分母が質量( ㎏ )の濃度単位
 質量モル濃度( molality )とは,溶媒 1 kg 中に含まれる溶質要素粒子の物質量。溶質の要素粒子を明記する。なお,要素粒子( elementary entities )とは,原子,分子,それらのイオン,ラジカル,電子,光子などの粒子,又はこれらの特定のグループ。
 質量分率(質量パーセント濃度)( mass fraction )とは,質量単位を用いて表したある成分の全体に対する比率。質量分率 0.123,又は質量分率 12.3 % などと表す。

濃度単位の主な使い分けと換算

 濃度に用いる単位のうち質量モル濃度のみが一定量の溶媒に対する溶質の物質量であるが,その他の濃度は,一定量の混合物,即ち溶媒+溶質の全体に対する溶質の量(物質量,体積,質量)である。
 質量モル濃度は,溶媒の特性に注目する場合に用いられる濃度で,例えば【希薄溶液の性質】で紹介する溶媒の特性変化(蒸気圧上昇,沸点降下,凝固点降下)の解釈に用いられる。その他の濃度は,例えば,溶媒に溶けた溶質の量を分析する場合など,実用的な評価の場面で用いられることの多い量である。
 多くの溶媒は,精度の高い実験や分析を行う場合に,操作時間内で無視できない量の揮発に至る。このため,計測中の溶媒成分の質量減少,体積減少となり,溶液の濃度が変化する。
 さらに,理想溶液や正則溶液として見なせない条件の一般的な液体では,溶媒分子と溶質分子との相互作用があるため,混合後の液体の体積は,混合前の各成分の体積の和と異なる。例えば,25 ℃で 100 ml の水に 100 ml エタノールを混ぜると,溶液の体積は 200 ml ではなく 190 ml 程度に減少する。(物理化学では,この影響を避けるため部分モル容積の概念を導入している。)
 このため,溶液の濃度調整や試料採取では,揮発の影響を抑え,混合後の体積をより正確に計測するため,ホールピペットやメスフラスコなどの体積計を用いるのが一般的である。
 
 濃度単位の換算
 濃度単位の換算では,基本的に,体積を質量に換算することで容易に行うことができる。このためには,関連する溶媒及び溶質のモル質量( kg / mol ),密度( kg / m3 ),及び全体量を体積単位の濃度(容量濃度)とする単位では,溶液の密度が情報として必要になる。

【参考】

JIS K 0050 「化学分析方法通則」
 量及び単位の表し方ついて次のように規定している。
 (1)質量分率,体積分率又は物質量分率(モル分率)については,質量分率 0.5 のように,無名数で表す。数値の後に空白を挿入して,0.01 を表す%又は 0.001 を表す‰(“パーミル”という。)を用いて表してもよい。また,%又は‰の後にどの分率によるかを表示してもよい。
 (2)表内のある行又は列の各欄の全てに%を用いて表した組成を示す場合,見出し欄に質量分率(%),%(質量分率)などのように,質量分率,体積分率又は物質量分率のいずれであるかを記載する。この場合,質量分率(%)などを表の単位記号としてもよい。
 なお,固体の組成で,質量分率の百分率で表すことが明らかな場合には,質量分率と記述せず,単に%だけとしてもよい。また,この場合,表の単位記号を%としてもよい。
 (3)質量濃度(質量を混合物の体積で除したもの),又は物質量濃度(物質量を混合物の体積で除したもの)の記述においては,体積の測定条件を明示する。ただし,20 ℃での液体の体積の場合,又は 101.325 kPa,0 ℃での気体の体積の場合については明示しなくてもよい。 物質量( amount of substance )
 物質を構成する要素として明示された要素粒子の数に比例する物理量の一つ。記号は mol。
 その比例定数は全ての物質について等しく,アボガドロ定数と呼ばれる。
 

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