化 学 第二部:物質の状態と変化

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  気体の特性をより具体的に理解するため,【理想気体】, 【実在気体】 の特徴と違いを紹介する。

  理想気体

 理想気体( ideal gas )とは,完全気体( perfect gas )ともいい,現実には存在しない理想的な気体である。
 すなわち,ボイル=シャルルの法則を状態方程式とし,内部エネルギーは体積によらず温度だけの関数となり,断熱変化に対してポアソンの法則( Poisson's law )に従う。
 このためには,気体を構成する粒子(分子や原子など)の体積と,粒子間の相互作用をともに無視できる系として扱われる。
 理想気体の状態方程式
 温度 T ( K ),体積 V ( m3 )、物質量 n ( mol ),圧力 P ( Pa )のとき,
      PV = nRT
で表される。
 気体定数 R(約 8.314 J K-1 mol-1 )は,気体の種類によらない普遍定数である。
 なお,物質量を mol ではなく,粒子数で量った場合の比例定数 k ボルツマン定数:約 1.281 × 10-23 JK-1 )を用いる。
 理想気体の内部エネルギー
 温度 T ( K ),物質量 n ( mol )の平衡状態での内部エネルギー U は,
      U = ncRT
で表される。
 比例係数 c は自由度の 1/2に相当する定数である。すなわち,単原子分子は c = 3 / 2 ,二原子分子では c = 5 / 2 となる。
 
 【参考】
 ポアソンの法則( Poisson's law )
 理想気体を断熱準静的(熱の出入りが無く,熱平衡、力学的平衡、化学的平衡が保たれていること)に変化させた時,圧力 P ,体積 V ,及び比熱比γの関係
      PVγ= 一定
 なお,断熱過程( adiabatic process )とは,外部との熱接触のない過程。準静的過程( quasistatic process )とは,熱平衡,力学的平衡,化学的平衡が保たれている状態変化。比熱比( heat capacity ratio )とは,定圧熱容量(圧力一定の条件下で単位量あたりの物質を単位温度変化させるのに必要な熱量)と定積熱容量(体積一定の条件下で単位量あたりの物質を単位温度変化させるのに必要な熱量)の比。
 ポアソン( Siméon Denis Poisson )
 フランスの数学者,物理学者であるシメオン・ドニ・ポアソン( 1781 ~ 1840年)は,ポアソン比,ポアソンの法則,ポアソン分布,ポアソン方程式などで知られる。
 ボルツマン定数( Boltzmann constant )
 分子 1 個あたりの気体定数で,気体定数をアボガドロ定数で割った定数。記号は k や kB を用いる。値は 1.380648×10-23J/K となる。
 なお,科学技術データ委員会( CODATA )の推奨( 2010年)する気体定数は,R = 8.3144621(75) J・K-1・mol-1 である。なお( )内の数値は最後の 2 桁に対する不確実さを示している。
 科学技術データ委員会( CODATA )に 設置された基礎物理定数作業部会が推奨(2010年)するアボガドロ定数(Avogadro constant) NA = 6.02214129 ( 27 ) × 1023 mol−1 である。なお( )内の数値は最後の 2 桁に対する不確実さを示している。
 ボルツマン( Ludwig Eduard Boltzmann )
 ルートヴィッヒ・エードゥアルト・ボルツマン(1844年~1906年)は,オーストリア・ウィーン出身の物理学者,哲学者。統計力学,電磁気学,熱力学,ボルツマンの関係式,ボルツマン定数などで知られる。
 内部エネルギー( internal energy )
 系の総エネルギーから,系が全体としてもつ運動エネルギー,外力による位置エネルギーを引去った残りのエネルギーをいう。すなわち,物体内部の状態だけで決まるエネルギーをいう。

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  実在気体

 実在気体( real gas )は,実用の気体を示し,理想気体に適用する状態方程式を適用して計算した場合に,期待した結果にならない場合がある。
 この原因は,理想気体で無視していた分子の体積(大きさ)と分子間相互作用の影響で,理想気体からずれを生じるためである。
 
 実在気体では,圧力,温度の変化に対し,理想気体の状態方程式( PV = nRT )からずれてくる。その傾向は気体の種類や圧力の程度で異なる。
 
   水素( H2 )やヘリウム( He )のように,分子量分子間力の小さい気体は,温度一定で,圧力の増加に対し,PV が理想気体より大きくなる。これは, P の増加割合に対し V の減少割合が小さいために起きる。即ち圧力変動で変化しない分子の体積の影響で,気体の体積 V の減少割合が小さくなったためと考えられる。
 
   メタン( CH4 )や二酸化炭素( CO2 )のように,分子量の大きい気体は,分子間力(ファンデルワールス力)が大きくなる。このため,温度一定で,圧力を増加してゆくと,はじめは分子間力の影響で PV が理想気体より小さくなる。即ち,分子間の引力が作用し,実際の P の増加分より分子間引力分を差し引いた圧力の効果(実効の P 減少)で,PV が小さくなる。
 しかし,ある圧力を超えると,分子間力の影響より分子サイズの影響が出てくるため,変化傾向が逆転( P 増加に対し,PV の増加割合が増える)し,ついには理想気体より大きい値になる。
 
   圧力一定で,気体の温度を下げると,熱運動が小さくなるので,>分子間力の影響が顕著になり,T の減少割合に対し 実効の P の減少が大きくなり,PV が理想気体より小さくなる。
 
 【参考】
 分子間力( intermolecular force )
 分子間力とは,電気的に中性の分子間に作用する力で,気体から液体や固体への相転移( phase transition :変態ともいう)で重要な役割を果たす。
 一般的な液体で影響する主要な力は,“ファンデルワールス力”で,液体の特性や固体の結晶化などでは“双極子に基づく力”の影響を受けると考えられる。“水素結合”については,原子間の電気陰性度に大きな差があり,大きい双極子モーメントが発生する構造を持つ特定の分子(水やアンモニアなど)で問題となる。
 ファンデルワールス力( Van der Waals force )
 互いに近づいた原子,分子,及びイオン間に働き,その力は粒子間の距離の 6 乗( 7 乗とする文献も)に反比例する。従って,力の作用する距離は限られた範囲となる。

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