第二部:物質の状態と変化 気体の圧力

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  ここでは,気体分子運動と圧力などの諸性質の理解を助ける基本知識として,【気体分子の運動】, 【圧力】  に項目を分けて紹介する。

  気体分子の運動

 物質の三態の一つで,一定の形と体積を持たず,自由に流動し,圧縮やずれに対する抵抗が小さく,圧力の増減で体積が容易に変化する状態である。また,外部から力を受けない状態では,気体の体積が無限に膨張する。
 これらの性質は,気体分子の運動(気体分子運動論)で説明される。
 気体の圧力(気圧;atmospheric pressure )は,自由に飛翔する粒子の衝突,特に容器の壁などの界面との衝突により発生する。すなわち,容器に入っている気体は,容器の形状によらず,どの表面に対しても均一な圧力(気圧)を与える。

 気圧は,容積の中で並進運動する気体粒子が,容器の壁に衝突することで,力を及ぼしていると考えれば理解しやすい。
 壁へ衝突した気体粒子の運動量は変化する。粒子の壁との衝突は,下図に示すように,完全弾性衝突( perfectly elastic collision )と考えられるので,壁と垂直な速度成分(例えば νX )は変化するが,壁に平行な速度成分(例えば νY とνZ )は変化しない。従って,気体粒子の衝突で容器表面にかかる力は,気体粒子の容器表面に対する垂直方向の運動量変化の時間平均になる。
 なお,運動量( momentum )とは,物体の運動の激しさを示すベクトル量(運動方向を含む)で,複数の物体の全運動量はベクトル和で表される。
 すなわち,質量 m の粒子が速度 ν で運動している場合は,そのを運動量といい,ベクトル量 p = mν になる。なお,運動量の単位は,kg・m・s‐1 である。

気体分子の完全弾性衝突での速度変化(模式図)

気体分子の完全弾性衝突での速度変化(模式図)

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  気圧

 簡単のため,辺の長さ d の立方体(体積 V = d3 )の容器に N 個の分子が存在する理想気体を考える。すなわち,質量はあるが,体積ゼロ,分子間相互作用のない気体分子を考える。
 ある分子(質量 m )が速度 νで運動しているとする。この分子が X 軸に対して垂直で圧倒的に質量の大きい壁に完全弾性衝突で跳ね返るとき,気体分子の X 軸方向の運動量成分( mνX )は,衝突後には逆方向の - mνX となる。
 従って,衝突での X 軸方向の運動量変化(ΔPXは,
      ΔPX = mνX - ( - mνX ) = 2 mνX
となる。
 ニュートンの運動方程式から,力 F は,ある時間変化(Δt )での運動量変化量(ΔP )となる。壁に衝突した分子が,再度衝突するのは,X 軸方向に距離 2d 移動した時なので,時間変化量はΔt = 2d /νX となる。従って,この分子が同じ壁に及ぼす平均的な力 F は,
       F = ΔP /Δt = mνX2 / d
となる。
 なお,壁が衝突した分子に及ぼす力は,分子が壁に及ぼした力 F と大きさが等しく向きが反対になる。

 X 軸の壁の受ける圧力 P は,容器内のすべての分子( N 個)から受ける力の総和を壁の面積( d2で割ったものとなる。従って,圧力 P は,
      P = ∑F / d2 = m ( νX12 +νX22 +・・・) / d3
となる。
 N 個の分子の X 軸方向の二乗平均速度(〈νX2 〉)は,〈νX2 〉= (νX12 +νX22 +・・・) / N となる。 また,N は著しく大きい( 1モルで約 6 ×1023 個)ので,〈νX2 〉=〈νY2 〉=〈νZ2 〉と置ける。
 従って,分子の二乗平均速度(〈ν2 〉 )は,〈ν2 〉 =〈νX2 〉+〈νY2 〉+〈νZ2 〉= 3〈νX2 〉とできるので,圧力 P は,
      P = ∑F / d2 = N m 〈ν2 〉/ ( 3 d3 )
となる。
 分子の平均運動エネルギーは E = 1 / 2・m〈ν2 〉と置け,d3 は容器の体積( V )なので,圧力 P は,
      P = ( 2/3・N/V ) ・E
となる。
 この式より,圧力は分子の運動エネルギー,即ち熱エネルギーに比例することが分かる。

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