化 学 (物質の状態と変化)

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 【溶解について】

 JIS K 0211 2013 「分析化学用語(基礎部門)」では,溶解( dissolution )とは,「液体中に他の物質が溶け込んで均一な相になる現象」と定義している。
 
 早く溶かすには
 液体中に他の物質(溶質)を溶け込ます場合には,溶質の形態(気体,液体,固体)に関わらず,温度の他に,溶媒(液体)と接触する界面の状態,溶解した溶質粒子(分子やイオン)の拡散条件(液体の撹拌,対流)が重要な要素となる。
 
 経験的には,固体を細かく粉砕し,液体に投入した後に撹拌することで,固体を早く溶すことができる。これは,粉砕することで,液体と接触する固体の表面積が増え,単位時間に液体に移行できる溶質粒子(分子やイオン)の数が増えるためと考えられる。
 溶質が気体の場合は,溶媒液体と接触する面積(気液界面)を増やすことで早く溶解できる。気液界面の面積を増やす方法には,泡立てるように撹拌する方法,ガス噴射管などを用いて微細な気泡を液体に通す(バブリング)方法などがある。
 また,撹拌することで,溶質濃度の不均一(濃度勾配)を速やかに解消できる。

溶け続ける?

 接触面積を増やし,液体を撹拌することで,溶質を早く溶解できる。この操作を続ければいくらでも溶けるのか? 答えは,物によりけりである。
 
 経験的には,水にアルコールを加えてゆくといくらでも溶け,逆にアルコールに水を加えてもいくらでも溶けることを知っている。
 この際のアルコールとは,エタノール( CH3CH2OH ,エチルアルコールともいう)である。水,及びエタノールは極性分子で,溶媒として用いた場合には極性プロトン性溶媒として分類される。この場合の相互の溶解は,【溶解現象とは】で紹介したように,「似た者同士の相性が良い」による溶解現象と考えることができる。
 しかし,アルコールの分子が大きくなると,分子全体に対する極性基( OH 基)の影響が低下する。このため,下表に示すように,分子鎖が長くなると溶解できる量の上限が小さくなる。なお,ある温度で,水 100 g に溶ける物質の最大質量( g )を水に対するその物質の溶解度という。溶解度の概要については,次で紹介する。


アルコール類(溶媒)への水(溶質)の溶解度(室温付近 g / 100g )「化学便覧など」
溶媒名 化学式 式量 溶解度
メタノール    CH3OH 32.04
エタノール    CH3CH2OH 46.07
1 - プロパノール    CH3CH2CH2OH 60.10
1 - ブタノール    CH3CH2CH2CH2OH 74.10 7.7
1 - ペンタノール    CH3CH2CH2CH2CH2OH 88.15 2.2
1 - ヘキサノール    CH3CH2CH2CH2CH2CH2OH 102.17 0.62
1 - ヘプタノール    CH3CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH 116.20 0.33

 無機化合物であるイオン結晶においても,無限に溶解し続けることはなく,例えば,食塩(塩化ナトリウム)を水に加え続けると,ある量( 25℃で約 36 g / 100 g - H2O )以上では,いくら撹拌しても溶けなくなる。
 すなわち,多くの物質には,物質ごとに溶解の限界が存在する。この場合には,溶質の固体表面と溶液中のイオンとの間で何らかの平衡状態に達し,溶液の濃度増加,即ち溶解の限界に至ると考えられる。

【参考】

 溶解度( solubility )
 溶質が一定量の溶媒に溶ける限界の量(飽和溶液の濃度)である。温度と溶解度の関係を図示したものを溶解度曲線という。
 固体の溶解度は,一定温度( 20℃での測定例が多い)で,溶媒 100 g に対する溶質の質量( g )や飽和溶液 100 g に溶けている溶質の質量( g )などで表す。固体の溶解度は,温度で変化し,多くの溶質は温度の上昇で溶解度も上昇するが,溶解度の減少する物質もある。
 気体の溶解度は,一定温度( 20℃での測定例が多い)で,1 atm ( 1 気圧)の気体が溶媒 1 ml に溶ける体積を標準状態(STP: 0℃,1 atm )に換算して表す(ブンゼンの吸収係数)。気体の液体への溶解度は,温度上昇で低下するのが一般的である。
 なお,【気体の溶解】で紹介するように複数の表記法があるので,単位や条件に留意する必要がある。
 
 溶解度積( solubility product )
 濃度溶解度積,溶解度定数ともいわれ,難溶性の塩について,飽和溶液中での陽イオン濃度と陰イオン濃度の積で表す。溶解度積は,温度で決まる物質固有の定数で,イオン濃度の積が溶解度積を超えたときに沈殿し始める。
 
 溶媒和( solvation )
 溶質分子や電離して生じたイオンが静電気力や水素結合などで溶媒分子と相互作用しながら拡散する現象である。溶媒が水の場合には,特に水和という。
 極性溶媒にイオン性物質や極性物質が溶けやすいのは溶媒和による。極性溶媒に無極性物質が溶けにくいのは,溶媒和がほとんど起こらないためである。なお,無極性溶媒の場合には,溶媒和とは言わない。

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