第二部:物質の状態と変化 気体の圧力

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  ここでは,気体の圧力などの諸性質の理解を助ける基本知識として,【理想気体】, 【ニュートンの運動方程式】, 【根二乗平均速度】, 【グレアムの法則】  に項目を分けて紹介する。

  理想気体

 理想気体(完全気体: perfect gas ともいう)
 圧力が温度と体積の逆数(密度)に比例し,内部エネルギーが温度に比例する気体の理論モデルである。
 統計力学では,気体の構成粒子(分子や原子など)の体積,粒子間の相互作用とも無視できる系として扱われる。
    理想気体には気体分子の概念が存在しない。
    理想気体には気体分子間の引力が作用しない。
    内部エネルギーは,分子の並進と回転の運動エネルギーのみを考え,振動を考えない。
 理想気体は,圧縮し続けると体積が減少し続ける。しかし,実際の気体(実在気体という)は,分子に有限の体積を持ち,分子間力が働いているので,圧縮し続けるとある圧力で液体になり,それ以上の体積減少がなくなる。
 実在気体であっても,分子どうしの影響が小さい状況,即ち低圧・高温状態では理想気体に近い振る舞いをする。なお,実用上では,標準状態の実在気体の多くを理想気体とみなしても不都合が少ない場合が多い。

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  ニュートンの運動方程式

 ニュートンの運動方程式( Equation of motion )
 古典力学における一質点の運動を記述する運動方程式である。
         F = m a = m・d2r / dt2 (運動の第 2法則)
        ここに, m :質点の質量,r :質点の位置ベクトル,a :質点の加速度,F :質点にかかる力,t :時間
である。
 運動の第 1法則慣性の法則とも呼ばれ,慣性系における力を受けていない質点の運動を記述する経験則である。
 運動の第 2法則:運動の第 1 法則が成り立つ座標系で,物体の運動状態の時間変化を物体に作用する力と関係付ける法則である。
 運動の第 3法則作用・反作用の法則とも呼ばれ,一方が受ける力と他方が受ける力は向きが反対で大きさが等しいとする経験則である。

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  根二乗平均速度

 根二乗平均速度( root-mean-square speed )
 速度の絶対値の二乗平均平方根,すなわち,個々の速度の二乗の統計平均(二乗平均速度〈ν2 〉 )平方根〈ν21/2 である。
 根二乗平均速度は,多数の分子の運動を扱う気体分子運動論( kinetic theory of gases )などで用いられる。単原子分子(質量 m )の二乗平均速度(〈ν2 〉)は,次の通りである。
      〈ν2= 3 kT/m = 3 RT / NA m = 3 RT / M
     ここで,k :ボルツマン定数(約 1.281 × 10-23 JK-1 ),NA :アボガドロ定数( 6.022 × 10-23 mol-1
         R :気体定数( = kNA :8.314 JK-1mol-1 ),T :熱力学温度( K :ケルビン),M :分子量
である。
 なお, 1原子分子の持つ平均運動エネルギー E は,E =〈1/2・mν2 〉= 3/2 kT となり,温度に比例することが分かる。

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  グレアムの法則

 グレアムの法則は,コロイド化学のパイオニアであるスコットランドの化学者トーマス・グレアム(Thomas Graham FRS,1805~ 1869年)が発見した,“気体の拡散速度が分子量の平方根に逆比例する。”という法則である。
 グレアムは,種々の気体が陶器の小さい穴を通り抜ける時の速度を検討し,同一温度,同一圧力で通り抜ける気体の速度は,気体の密度の平方根の逆数に比例することを発見した。同一温度,同一圧力では,気体の密度は,気体分子の質量に比例するので,気体 A (質量 mA )と気体 B(質量 mB )の分子の速度(根二乗平均速度)と質量の関係は,
      νA / νB = ( mB / mA )1/2
となる。

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