第二部:物質の状態と変化 気体の量と体積

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  前節の例で用いた乾燥空気と異なり,実在の空気は水蒸気を含む。ここでは, 【空気中の水分(湿度)】 について紹介する。

  空気中の水分(湿度)

 一般の空気は,湿度と称される水蒸気を含む。ここで,人が快適と感じる気温 25℃,相対湿度 60%のときに,空気(大気圧)に含まれる水分量を求めてみる。
 相対湿度( RH %)とは,ある気圧,温度での水の飽和水蒸気圧( P* )に対する大気中の水蒸気圧( P )の百分率と定義されている。
     RH %= 100 × P / P* 
 従って,ある温度での水蒸気圧は,飽和水蒸気圧と相対湿度から求められる。
 ある温度( T℃)における飽和水蒸気圧( P* )は,温度の関数(経験式)として求めることができる。

気温(℃)と飽和水蒸気圧( hPa)

気温(℃)と飽和水蒸気圧( hPa)

 大気環境の温度範囲では近似的にはティテン(Tetens)の式が,広い温度範囲ではワグナー(Wagner)の厳密水蒸気圧式が適用できる。

    ティテンの式 : P* (T) = 610.78・10{ 7.5 T / ( T+237.3 ) }
    指数関数で示すと = 610.78・exp { 17.27 T / ( T+237.3 ) }


    ワグナー式 : P* (T) = Pc・exp { ( -7.76451 X+ 1.45838 X1.5-2.7758 X3-1.23303 X6 ) / ( 1-X ) }
     ここで,Pc(臨界圧: 22.12×106 Pa )
         X = 1 - ( T +237.15 ) / Tc
         Tc(臨界温度:647.3 K )

 下表に示すように,一般的な気象範囲( 0 ~ 50℃程度)では,いずれの式を用いても大差ない。

飽和水蒸気圧(Pa),
ワグナー式/ティテンの式の比較
  気温    ワグナー式    ティテンの式    差(%) 
  - 50    6.35    6.08    - 4.6 
  - 25    80.7    79.9    - 0.93 
  0    611.5    610.8    - 0.12 
  25    3.171×103    3.168×103    - 0.12 
  50    12.35×103    12.34×103    0.12 
  100    101.4×103    102.2×103    0.82 
  200    1.557×106    1.645×106    5.4 

 気温 25℃での飽和水蒸気圧は概ね 3,170 Pa となる。従って,相対湿度 60 %の大気の水蒸気圧は 1,902 Pa ( 3,170 × 0.6 )と計算され,大気圧が 101,325 Pa の場合は,分圧の法則を適用し,水蒸気の容量 %は,約 1.88 Vol%( 100 × 1902 / 101325 )と計算される。この値は,酸素に次いで存在量の大きい分子であることを示す。

 空気 1 m3 ( 1000 L )中に含まれる水分量( g )は,水蒸気の容量%,気温 25℃の時のモル体積( 24.465L / mol )と水の分子量( 18 g / mol )とから,約 13.8 g( 18 × 0.0188 × 1000 / 24.465 )と計算できる。
 【参考】
 水上置換での気体捕集実験の注意点
 実験で気体を水上置換(容器を水に満たし,気体と置換して補修)すると,補修した気体は水蒸気で飽和した気体と考えられる。
 従って,補修した気体の体積から気体の量を求めるときは,その温度での飽和水蒸気量を差し引く必要がある。得られた体積は,大気圧から飽和水蒸気圧を差し引き,気体の分圧を求めて計算しなければならない。
 相対湿度( relative humidity )
 相対湿度(RH)とは,ある温度(T)で計測された水蒸気圧(E)と,その温度での飽和水蒸気圧( Es (T))( saturated water vapor pressure ) に対するの百分率と定義されている。
    RH(%)=100×E/Es (T)
 絶対湿度( absolute humidity )
 水蒸気量を直接示すために用いられる。一般的には,大気の一定体積( 1m3 )当たりの水蒸気の量(g)で表わす容量絶対湿度 VH( volumetric humidity ; g/m3 )で表される。
 すなわち,容積 Va(m3)に含まれる水蒸気の質量を Mw(g)とすると,
 容量絶対湿度   VH=Mw/Va  
 で定義される。
 相対湿度 RH との関係は,T:温度(℃),E:水蒸気圧,Es(T):飽和水蒸気圧,とした場合に次式で与えられる。
    VH= (RH/100)・Es(T)・216.7/(T+273.15)
 蒸気圧( vapor pressure )
 気象学では,空気中の水蒸気分圧に対して用いられ,気液平衡の時の水蒸気分圧は飽和蒸気圧や平衡蒸気圧という。物理学一般では,蒸気圧を気液平衡の場合の平衡蒸気圧を指すことが多い。
 飽和水蒸気圧( saturated water vapor pressure , saturated steam pressure )
 気象学において,水蒸気が気液平衡にある場合の蒸気圧をいい,一般的には平衡蒸気圧という。
 なお,地表付近(一気圧),温度 T(℃)の飽和水蒸気圧は,Es(T) ≒ 6.1078・exp{ 17.27・T/(T+237.3)} で近似できる。
 平衡蒸気圧( equilibrium vapor pressure )
 液相,又は固相と相平衡になる気相の圧力で,温度に依存して決まる物質特有の物性値である。
 ちなみに, 液相にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度を沸点( boiling point ),固相の蒸気圧が外圧に等しくなる温度を昇華点( sublimation point )という。

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