物 理 熱力学(気体の基礎)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒
 
 ここでは,気体の熱力学に関し, 【気体とは】【ボイル・シャルルの法則】【ゲイ=リュサックの法則,ジュールの第二法則】【気体の状態方程式】【アボガドロの法則】【モル体積】 に項目を分けて紹介する。

【気体とは】

 気体( gas )
 物質の三態の一つで,一定の形と体積を持たず,自由に流動し,圧縮やずれに対する抵抗が小さく,圧力の増減で体積が容易に変化する状態である。また,外部から力を受けない状態では,気体の体積が無限に膨張する。
 これらの性質は,気体分子の運動(気体分子運動論)で説明される。
 気体の圧力は,自由に飛翔する粒子の衝突,特に容器の壁などの界面との衝突により発生する。
 
 理想気体と実在気体
 理想気体( ideal gas )
 完全気体( perfect gas )ともいい,現実には存在しない理想化された気体である。
 すなわち,ボイル・シャルルの法則を状態方程式とし,内部エネルギーは体積によらず温度だけの関数となり,断熱変化に対してポアソンの法則(Poisson's law)に従う。
 このためには,気体を構成する粒子(分子や原子など)の体積,粒子間の相互作用をともに無視できる系として扱われる。
 実在気体( real gas )
 一般的には実用の気体をいい,理想気体で無視していた気体分子の体積(大きさ)と分子間相互作用の影響で,理想気体に適用する状態方程式を適用して計算した場合に,期待した結果にならない場合がある。
 
 気体の標準状態
 気体は,圧力,温度で容易に変わるので,機器類の検定,気体の物性比較などで基準とする温度と圧力を規定する必要がある。比較の際に用いる基準となる温度と圧力を標準状態( normal state )という。
 標準状態には,用いる基準の温度を 25℃(298.15 K)とする SATP(標準環境温度と圧力: standard ambient temperature and pressure ),基準の温度を 0℃( 273.15 K)とする STP(標準温度と圧力: standard temperature and pressure )がある。
 多くの研究機関などでは,試験室・検査室環境に近い SATP( 25 ℃ 1 気圧 )の採用が多い。しかし,気体関連の JIS 規格,日本の高等学校教育などでは旧来の STP( 0 ℃ 1 気圧)を標準状態とする場合も少なくない。

  ページの先頭へ

 【ボイル・シャルルの法則】

 ボイル・シャルルの法則 (combined gas law)
 ボイルの法則とシャルルの法則とを統合した法則で,
    「気体の圧力 P体積 V に反比例し,熱力学(的)温度 T に比例する」
       PV / T = C(一定)
 しかしながら,定数 C の正体については,18 世紀に原子・分子の概念が確立されることで明確になってきた。
 
 ボイルの法則(Boyle's law)
   「一定温度で,一定量の気体の体積 V圧力 P に反比例する」
       PV = C(一定)
 C は,温度が変わらなければ一定の比例定数である。
 
 シャルルの法則(Charles's law)
    「圧力が一定のとき,理想気体の体積 V熱力学(的)温度 T に比例する」
       V / T = C(一定)

  ページの先頭へ

 【ゲイ=リュサックの法則,ジュールの第二法則】

 ゲイ=リュサックの法則( Gay-Lussac's law )
 フランスの化学者ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックに因んで命名された 2 つの法則をいう。
 一般的に,単にゲイ=リュサックの法則という場合は,第二法則「気体反応の法則」を指す。
 第一法則(シャルルの法則
 1700年代前半にギヨーム・アモントンが発見した一定質量のガスの質量を保って圧力と温度の間の関係として知られるアモントンの法則(Amonton's law)「常温常圧における気体の熱膨張係数は,気体の種類によらずほとんど同一の値 ⇒ 一定の質量と一定の体積の気体の圧力は,気体の熱力学的温度に比例」はすでに存在していた。
 1802 年にゲイ=リュサックは,1700年代後半にシャルルが行った一連の実験結果をまとめて,気体種類によらないすべての気体に一般化したゲイ=リュサックの第一法則「気体の熱膨張は温度に正比例し,その膨張係数(1/273)は気体の種類に関係なく一定 ⇒ 圧力が一定のとき,理想気体の体積は熱力学(的)温度に比例」を発表した。
 この法則は,シャルルの業績が大きいとして,シャルルの法則として知られるようになった。
 第二法則(気体反応の法則
 2 種以上の気体が関与する化学反応に関する法則で,「反応物と生成物の気体の体積の間の比は,簡単な整数の比で表される。」
 
 ジュールの第二法則
 一般にジュールの法則(Joule's laws)という場合は,電流によって生み出される熱についての法則(ジュールの第一法則)を意味し,熱力学に関する法則は,ジュールの第二法則と呼ばれる。
    「理想気体の内部エネルギーはその圧力や体積には依存せず,温度にのみ依存」
       U = f (T)
 従って, 等温過程で紹介したように,理想気体の系に温度変化がない場合は,内部エネルギーの変化もない。

  ページの先頭へ

 【気体の状態方程式】

 気体の状態方程式( equation of state ) は,アボガドロの法則に従い,n mol の気体の状態を示すボイル・シャルルの法則は,次のように書き換えることができる。
       PV = nRT
 この式を,理想気体の状態方程式と呼び,すべての気体について成立する公式として用いられている。
 なお,気体の質量 m,構成する分子の分子量 M のとき,気体のモル濃度 n = m / M である。定数 R は,気体定数と呼ばれる。
 
 気体定数(gas constance)
 0 ℃ 1 気圧( 101325 Pa)の気体 1 mol の体積(モル体積)は,約 22.414 L である。従って,ボイル・シャルルの法則 PV / T = C(一定)から,
       C = 101325 Pa × 22.414 L・mol– 1 ÷ 273.15 K ≒ 8.3145 Pa・m3・mol– 1・K– 1
と計算される。この定数は,気体定数と呼ばれ,記号 R で表記される。
 
 なお,気体定数の単位は, エネルギーの単位 J( N・m )を用いた J・K– 1・mol– 1 が一般的に用いられる。 2010年 CODATA の推奨する気体定数は,R = 8.3144621(75) J・K– 1・mol– 1 である。

  ページの先頭へ

 【アボガドロの法則】

 アボガドロの法則(Avogadro's law)
  「同一圧力,同一温度,同一体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれる」
 彼の功績に敬意を表し,アボガドロの死後に物質量 1 mol とそれを構成する粒子(分子,原子,イオンなど)の個数との対応を示す比例定数をアボガドロ数(Avogadro's number),アボガドロ定数(Avogadro constant)と命名された。
 アボガドロ定数は,「ある物質 1 mol の中に含まれている要素粒子(elementary entities)の総数を意味し,正確に質量 0.012 kg(12 g)の炭素 12(12C)の中に含まれている原子の総数」と定義される。
 一般的に,基本的な定数は,測定技術・精度の向上などで変わるので,科学技術データ委員会( CODATA ; Committee on Data for Science and Technology)で更新される推奨値を用いるのが良い。
 例えば,CODATA の推奨値(アボガドロ数:NA)は,2010年: 6.022 141 29 ( 27 ) × 1023 mol−1 ,2014年: 6.022 140 857(74) × 1023 mol−1である。
 
 なお,0 ℃,1 気圧の単位体積の理想気体に含まれる分子数は,ロシュミット定数(Loschmidt's constant ;記号 NL = 2.6867811(15)×1025 m−3)と呼ばれ,1 mol に含まれる分子数を表すアボガドロ定数 NA (6.022 140 857(74) × 1023 mol−1)を理想気体のモル体積 Vm(22.413962(13)×10−3 m3 mol−1)で除して求められる。

  ページの先頭へ

 【モル体積】

 モル体積(molar volume)とは,単位物質量(1 mol)の原子,又は分子の標準状態で占める体積である。
 固体や液体のモル体積は,規定の温度でのモル質量( kg・mol– 1 )÷密度( kg・m– 3 )でも求められる。
 
 気体のモル体積
 固体や液体とは異なり,温度と気圧の影響を顕著に受ける。 すなわち,気体のモル体積は気体の状態方程式で議論できる。
 シャルルの法則「圧力が一定のとき,理想気体の体積は熱力学(的)温度に比例」により,同じ圧力,同じ温度では,1 mol の気体分子の体積は気体の種類によらず一定である。
 理想気体の状態方程式より,気体の物質量 n モルの体積 V ,気体定数 R ,温度 T ,圧力 p とした時,モル体積 Vm は,
       Vm = V/ n = RT/ p
で与えられる。
 標準状態(SATP),すなわち 1 気圧( = 101324 Pa ),25℃( = 298.15 K )での
 モル体積は,気体定数 R = 8.3144621(75) (J・K– 1・mol– 1 )を用いて,
       Vm = 8.3144621 ( J・K– 1・mol– 1 )×298.15 ( K )÷101324 ( Pa ) = 0.0244656436294955 ( J・Pa・mol– 1)
 圧力の単位 パスカル (pascal) は,Pa = N・m‐2 = J・m‐3 なので,標準状態 SATP でのモル体積は,
       Vm ≒ 0.024466 ( m– 3・mol– 1) = 24.466 ( L・mol– 1 )
と計算される。
 なお,1 気圧( = 101324 Pa ),0℃( = 273.15 K )の標準状態(STP)では,
       Vm ≒ 0.022414 ( m– 3・mol– 1)
と計算される。
 
 実在の気体では,気体分子の体積,分子間の相互作用があるので,気体の種類により異なる。これは,実在気体の状態方程式ファンデルワールスの状態方程式など)の係数の違いでもある。
 ファンデルワールスの状態方程式(van der Waals equation)は,実在気体を表現する状態方程式の一つで,熱力学的温度 T ,モル体積 Vm の平衡状態における圧力 p を
       p = {RT/ (Vmb) }‐{a/ Vm2}
で表される。係数 a , b は実在気体の理想気体からのずれを表現するパラメータで気体の種類ごとに定まる。
 
 なお,実用気体のモル体積は,モル質量(kg・mol– 1)÷密度(kg・mol3)でも求められる。
 例えば,水素では,モル質量(原子量×2 =2.01588 )標準状態(STP)の密度(0.08988 g/ L )から
       Vm≒ 22.43 ( L・mol– 1 )
 酸素では,モル質量(原子量×2 =31.9988 )標準状態(STP)の密度(1.429 g/ L )から
       Vm≒ 22.39 ( L・mol– 1 )
と計算できる。

  ページの先頭へ