化 学 (化学反応)
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ここでは,酸・塩基に関連し,【酸・塩基の分類】,【価数による分類】,【強弱による分類】,【硬軟による分類】,【無機・有機による分類】,【酸性酸化物,塩基性酸化物】に項目を分けて紹介する。
【酸・塩基の分類】
酸塩基反応などの説明で,1 価の酸,塩基,2 価の酸,塩基など価数による分類,強酸,強塩基,弱酸,弱塩基など強弱による分類,硬い酸,塩基,軟い酸,塩基など硬軟による分類,無機・有機による分類など,対象とする反応や機構により多くの分類がある。
さらに,水に溶けた時の性状から,酸化物を酸性,塩基性,中性に分類されることもある。
ここでは,主な分類の概要と化合物の例を紹介する。
【価数による分類】
化学では,種々な価( valence )が用いられているので,混乱しないよう,的確な把握を心がける。
酸・塩基の価数は,【分子内結合:酸化数】で紹介したイオン価(イオンの価数),原子価(原子の価数)とは異なり,酸塩基反応で授受できる水素イオンの数ををいう。
多段階で解離する酸や塩基については,その最大解離度数をいう。主な化合物の例を強弱による分類と合わせて下表に紹介する。
なお,次に紹介する酸・塩基の強弱と価数には直接の関係はない。
【強弱による分類】
酸・塩基の強弱は,溶媒中で電離する電解質( electrolyte )の電離度( degree of ionization )によって分類されるが,厳密な評価基準はなく,電離度が 1 に近い電解質を強酸,強塩基に,電離度の小さい電解質を弱酸,弱塩基に分類している。
また,純硫酸よりも強い酸性媒体を超酸ということがある。
電離度(α)={電離した電解質のモル数}/{全電解質のモル数}
電離度は,溶液中の電解質が実際に電離している物質のモル比を示し,0 から 1 までの値をとる。
電離度は,温度,圧力,濃度の影響を受ける。特に,濃度の影響が大きく,濃度が低くなると電離度が大きくなり,無限希釈では 1 に近くなる。
参考:0.10 mol /L 水溶液の電離度例の例, HCl 0.93 ,HNO3 0.93 ,HCOOH 0.043 ,CH3COOH 0.016
このため,電離度は,物性の指標としては扱いにくく,pH の計算など定量的な評価では,次の項【電離平衡】で紹介する平衡定数(酸解離定数 pKa,塩基解離定数 pKb )を用いる場合が多い。
価数での分類 | 代表例 |
---|---|
1 価の酸 | 塩酸 ( HCl ),硝酸( HNO2 ),過塩素酸( HClO4 ),ギ酸( HCOOH ),酢酸( CH3COOH ) |
1 価の塩基 | 水酸化ナトリウム ( NaOH ),水酸化カリウム( KOH ),アンモニア( NH3 ),ピリジン( C5H5N ) |
2 価の酸 | 硫酸 ( NaOH ),炭酸( H2CO3 ),シュウ酸( (COOH)2 ) |
2 価の塩基 |
水酸化マグネシウム( Mg (OH)2 ),水酸化カルシウム ( Ca (OH)2 ),水酸化バリウム( Ba (OH)2 ), 水酸化銅(Ⅱ)( Cu (OH)2 ),水酸化鉄(Ⅱ)( Fe (OH)2 ) |
3 価の酸 | リン酸( H3PO4 ) |
3 価の塩基 | 水酸化アルミニウム( Al (OH)3 ),水酸化鉄(Ⅲ)( Fe (OH)3 ) |
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【硬軟による分類】
酸および塩基の相性を,硬いおよび軟らかいという表現を使った分類で,HSAB則( Hard and Soft Acids and Bases )という。この場合の酸・塩基はルイスの定義による。
一般に軟らかい酸と軟らかい塩基のペア,硬い酸と硬い塩基のペアは反応しやすく,強い結合を形成する。
硬い酸( HA ):電気陰性度が低く,高い電荷密度,分極率が小さい。
例: H+ ,Li+ ,Na+ ,Mg2+ ,Ca2+ ,Al3+ ,Fe3+ ,Si4+ ,BF3 ,AlCl3 など
硬い塩基( HB ):比較的電荷密度が小さい。
例: F– ,H2O ,OH– ,CH3CO2– ,Cl– ,NO3– ,ROH ,RO– ,NH3 ,RNH2 など( R は有機基)
軟らかい酸( SA ):電気陰性度が高く,電荷密度が低いため分極化しやすい。
例:Cu+ ,Ag+ ,Au+ ,Hg+ ,Hg2+ ,BH3 ,RS+ ,I+ ,Br+ ,I2 ,Br2 ,
ニトロベンゼン,金属原子,カルベンなど( R は有機基)
軟らかい塩基( SB ):電気陰性度が比較的小さく,電荷密度が大きく分極しやすい。
例: R2S ,RSH ,RS– ,I– ,SCN– ,R3P ,CN– ,CO ,
エチレンベンゼン,H– ,R– など( R は有機基)
中間の酸の例: Fe2+ ,Cu2+ ,Zn2+ ,R3C+ など( R は有機基)
中間の塩基の例:アニリン,ピリジン,Br– ,NO2– など
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【無機・有機による分類】
無機酸,塩基( mineral acid , base )は,無機化合物の化学反応で得られる酸,塩基で,【強・弱による分類】で例示したように,一般的に認識されている酸・塩基の多くが無機化合物である。
有機酸( organic acid )は,有機化合物の酸の総称で,その多くは,カルボキシル基(-COOH )を持つカルボン酸( RCOOH )である。
他に,スルホ基(-SO3H )を持つスルホン酸,ヒドロキシ基(-OH ),チオール基(-SH ),エノール(二重結合の片方の炭素にヒドロキシ基が置換したアルコール)を特性基として持つ化合物が知られる。
一般に有機酸は弱酸であり,ギ酸や酢酸のような分子量の小さい有機酸は水に溶け易いが,その他の分子量の大きい分子は溶け難い。一方,有機溶媒には溶けやすい物が多い。
有機塩基( organic base )は,一般的には,プロトンを受容するブレンステッド塩基を指す。ピリジン( C5H5N ),トリエチルアミン( C6H15N )など,多くは窒素原子を含むアミンや複素環式化合物で,窒素上に容易にプロトンを受容してアンモニウムなどのカチオン(陽イオン)となる。
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【酸性酸化物,塩基性酸化物】
酸化物の中には,水に溶けてヒドロニウムイオン( H3O+ )を生じたり,H+ を受け取ったりするものがある。これらは,ブレンステッド・ローリーの定義による酸・塩基に分類される。
酸性酸化物:水と反応して酸を生じる。塩基と反応して塩と水になる酸化物などである。
例: SO2 ,SO3 ,NO2 ,CO2 ,P4O10 などの非金属元素の酸化物
塩基性酸化物:水と反応して塩基を生じる。酸と反応して塩と水になる酸化物などである。
例: N2O ,CaO ,CuO ,MgO ,BaO ,Fe2O3 などの金属元素の酸化物
両性酸化物:酸とも塩基とも反応し塩と水になる酸化物である。
例: Al2O3 ,ZnO ,SnO ,PbO などアルミニウム( Al ),亜鉛( Zn ),スズ( Sn ),鉛( Pb )の酸化物
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