防食概論防食の基礎

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 腐食試験と評価法

 試験片の準備

 材料物性,腐食特性,防食性,その他性能を評価するために実施される腐食試験(corrosion test)などに用いる試験片作製で配慮すべき項目を紹介する。

 試験片の寸法・形状・数

 通常は,採用した試験規格や製品規格に定める「試験片」の項目に従い試験片を準備するが,これに従わない場合も少なからずある。
製品や加工品を試験体に用いる場合
 この場合は,計画的なサンプリング(sampling)に努めなければならない。材料試験の試験片は,試験体から採取することになるが,寸法・形状を試験規格の規定となるよう作製しなければならない。
試験規格に定めのない試験片をあえて用いる場合
 試験結果の評価や他の試験結果との比較を行う場合に,十分な注意が必要である。特に熱容量(heat capacity),熱伝導(heat conduction)や応力(stress)による歪程度が影響する試験では,異なる寸法・形状の試験結果を安易に比較してはならない。
 そこで,試験結果には,規定の寸法・形状を用いなかった理由と同時に,使用した試験片の形状と寸法を明示しておくのが望ましい。
 試験片の数
 は,同一試験当たり最低 3枚準備するのが望ましい。試験片 2枚では,異常値が出た場合に廃棄できるデータを決めることができないためである。
 なお,統計処理を行う場合は,同一条件の試験片を 4枚以上準備するのが望ましい。

 試験片の前処理法

 試験片表面は,試験結果に大きく影響するため,規定される表面処理(surface preparation)に従う。
 試験目的に適した条件で処理されないと試験結果のばらつきの原因になる。特に腐食試験では,研磨(polishing, sanding, rubbing)方法と程度,洗浄(cleaning)(脱脂,汚染物除去など)方法,試験までの保管方法の影響が大きい。
 
 試験片作製から試験開始までの養生(conditioning , curing)方法と期間も重要な要因となる。特に,塗膜,コンクリートなどの試験片作製後の経過時間で物性が大きく変化し,安定するまで多くに時間を要する材料では重要な要因になる。試験条件や試験目的に応じた適切な養生条件を設定・記録し,試験結果に添付するのが望ましい。

 試験片の後処理法

 試験を終えた後に,各種評価項目に応じた後処理(post treatment)が必要になる。例えば,金属の腐食度(corrosion rate)を評価(質量測定,表面形状観察など)する場合には,試験片表面に付着する腐食生成物やその他の汚れを適切に除去しなければならない。
 
 腐食度評価を目的とする腐食生成物の除去に関しては,JIS Z 2371 「塩水噴霧試験方法」の“参考表 1) 化学的腐食生成物除去方法”及び“参考表 2) 電解による腐食生成物除去方法”,JIS Z 2383 「大気環境の腐食性を評価するための標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」の附属書A(参考)“腐食生成物を除去する化学的方法”が参考になる。
 JIS Z 2371 の参考表には,同一素材に対して複数の方法が提案されている。それぞれの方法は,腐食生成物の除去能力,素地金属のダメージ程度が異なるので,予備試験(空試験,ブランクテストなどともいう)を行い,試験目的に適した方法を選択するのが望ましい。

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