防食概論防食の基礎

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 防食設計と分類

 防食設計とは

 鋼橋などの構造物,設備機器などでは,金属腐食により安全性(safety),信頼性(reliability)の低下のみならず,大きな経済損失(economic loss , financial loss)に至る。このため,金属の腐食対策(corrosion protection)が必要となるが,やみくもな対策は,過剰な投資になりかねない。
 そこで,構造物や機器等の使用目的,期待耐久年に応じた適切な防食設計が求められる。しかし,防食対策に必要な技術分野は,土木,機械,電気,化学と横断的であり,広い知識が必要になる。そこで,【防食設計】の章では,設計段階で考慮すべき要点などを網羅的に解説する。

 【金属腐食の影響】
 不適切な防食対策の場合には,想定外の腐食による事故,災害など大きな経済的・人的損失を被る場合がある。腐食の程度により,下図に示すように,安全性,信頼性の低下,環境破壊などの種々の影響をもたらす。

金属腐食の影響

金属腐食の影響

 経済に与える影響(腐食コストに関し,1971年にイギリスで実施された調査(参考資料 1) )によると,腐食損傷(事故)の 1/4は,既知の知識の活用で防ぐことができたとある。
 このことは,腐食・防食技術の多くは,過去の経験が大きな比率を占め,未だに防食技術の合理的な設計ができる状況には至っていないこと,過去の事例を学ぶことの重要性を説いている。
 日本においても,腐食コスト(corrosion cost)の推定を1974年と1997年に実施している。これらによると,日本における直接的腐食コストの推定値(例えば参考資料 2) )は,対 GDP(国内総生産)で約 1%(4~5兆円)と見積もられている。間接的コストも含めると 15兆円規模に及ぶ巨額になると考えられている。
 
【参考資料】
 1) Department of Trade and Industry, (T. P. Hoar)“Report of the Committee on Corrosion and Protection”, Her Magesty’s Stationary Office (1971)
 2) 腐食コスト調査委員会“我が国の腐食コスト”,材料と環境, Vol. 5 0, No. 11, pp.490-512 (2001)
 【参考】
 安全性(safety)
 一般には,健康・生命・財産・自然環境などに対し,事故・災害・犯罪などの危害がおよぼし難いことをいう。
 工学的には,人間の死傷又は資材に損失若しくは損傷を与えるような状態のないこと。【旧 JIS Z 8115「信頼性用語」】
 構造物が仕様者や周辺の人々の生命を脅かさないために保有するべき性能。【鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)】
 信頼性(reliability)
 工学分野では,“アイテムが与えられた条件の下で,与えられた期間,要求機能を遂行できる能力。”と定義している。【JIS Z8115 「デイペンダビリティ(信頼性)用語 ;Glossary of terms used in dependability」】
 なお,同 JIS では,タイトルのディペンダビリティ(dependability)を“アベイラビリティ性能及びこれに影響を与える要因,すなわち信頼性性能,保全性性能及び保全支援能力を記述するために用いられる包括的な用語。”,アベイラビリティ(availability)を“要求された外部資源が用意されたと仮定したとき,アイテムが与えられた条件で,与えられた時点,又は期間中,要求機能を実行できる状態にある能力。”と定義している。
 信頼度(reliability)
 工学分野では,“アイテムが与えられた条件の下で,与えられた時間間隔に対して,要求機能を実行できる確率。”と定義している。【JIS Z8115 「デイペンダビリティ(信頼性)用語 ;Glossary of terms used in dependability」】
 すなわち,信頼性(reliability)を確率で表現したものを信頼度という。
 環境影響(environmental impact)
 JIS Q14001「環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引」では,“有害か有益かを問わず,全体的にまたは部分的に組織の環境側面から生じる,環境に対するあらゆる変化。”と定義している。なお,組織(organization)とは,“自らの目的を達成するため,責任,権限及び相互関係を伴う独自の機能をもつ,個人又は人々の集まり。”,環境(environment)は“大気,水,土地,天然資源,植物,動物,人及びそれらの相互関係を含む,組織の活動をとりまくもの。”,環境側面(environmental aspect)は“環境と相互に作用する,又は相互に作用する可能性のある,組織の活動又は製品又はサービスの要素。”と定義されている。
 大規模開発事業等による環境への影響を事前に調査し,影響を予測・評価する手続きを環境影響評価(境影響アセスメント,環境アセス,environmental impact assessment)といい,平成9年6月に,日本における環境影響評価(環境アセスメント)の手続き等について定めた法律(法律第81号,平成26年6月改正 法律第51号) が制定されている。

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