防食概論:防食の基礎

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          【有機高分子材料の基礎】

 有機ライニングや塗装は,有機高分子材料充填物で構成されている。被膜の基本性能は,母材の有機高分子材料の特性に大きく影響を受ける。
 有機高分子材料の一般的な特徴は,電気を通さない(絶縁性),水や薬品などに強く腐食しにくい(耐薬品性),加工の自由度が高い(成形性),燃えやすい(耐燃性),紫外線に弱い(耐紫外線性)等が挙げられる。それらの特性に応じた材料選定が必要になる。
 ここでは,有機高分子材料の基礎として,一般的な分類とその概要を紹介する。有機高分子材料の分類では,原材料による分類と特性による分類がある。
 原材料による分類では,自然界に存在する天然樹脂天然油脂,石油等の化石原料から人為的に合成された合成樹脂に分けられる。
 特性の違いによる分類には,注目する特性の違いで数多くの分類が可能である。一般的には,熱特性による熱可塑性樹脂熱硬化性樹脂の区分,粘弾性の違いによるプラスティックエラストマーの区分がある。
*:プラスティック(plastic)”は,厳密な意味では「可塑性物質」を意味するが,一般的には,合成樹脂と同義で用いる場合や,合成樹脂の分類でエラストマーと対比する場合,合成樹脂を原料として作製した完成品を呼ぶ場合など,場面に応じて使い分けられられている。
 
 【天然樹脂】
 天然樹脂には,植物由来の漆,ロジン(松脂),琥珀(コハク)や天然ゴム等が,動物由来のセラック,ゼラチン,カゼインやべっ甲などが,天然鉱物由来のアスファルトなどがある。
 漆,ロジン,セラック及びアスファルトは塗料の原料として用いられている。
 【天然油脂】
 油脂とは,いわゆる油で,脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物である。油脂は,空気中の酸素で酸化重合され,三次元網目構造の樹脂になる。酸化され易さで,乾性油,半乾性油,不乾油に分けられる。
 乾性油のあまに油,えごま油,きり油,ひまし油やサフラワー油などが塗料の原料(ボイル油,油ワニス,アルキド樹脂の油変性剤)として用いられていた。近年では,合成樹脂が主流となり,用途が限られてきている。
 【合成樹脂】
 合成樹脂は,人為的に製造された高分子化合物をいう。合成樹脂には,有機ライニングに用いられるナイロン,ポリエチレン,塗料や有機ライニングに用いられるポリウレタン,エポキシ樹脂,塗料に用いられるアルキド樹脂,アミノ樹脂,ポリエステル樹脂,フェノール樹脂など機能・特性の異なる様々なものが開発され,その数は年々増加している。
 【熱可塑性樹脂】
 熱可塑性樹脂 (Thermoplastic resin) は,ある温度まで加熱することで軟らかくなり,成形が容易になる樹脂のことである。軟らかくなる温度は,材料によるが,ガラス転移温度や融点と呼ばれる。
 熱可塑性樹脂は,構成するモノマー(高分子の基本単位で,単量体ともいう)の種類で命名される。一般的な樹脂とその記号には次のようなものがある。
 ポリエチレン(PE),高密度ポリエチレン(HDPE),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ポリテトラフルオロエチレン(ふっ素樹脂,PTFE),ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂),AS樹脂,アクリル樹脂(PMMA)などがある。
 強度が高く特殊用途などに用いられ「エンジニアリングプラスチック」と称されるものには次のものがある。
 ポリアミド(PA,ナイロン),ポリアセタール(POM),ポリカーボネート(PC),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンテレフタレート(PET)などがある。
 【熱硬化性樹脂】
 熱硬化性樹脂 (Thermosetting resin) は,加熱で重合し,高分子の網目構造を形成するため,硬化して元に戻らなくなる樹脂と定義される。実用面では,加熱による硬化反応の他に,塗料,接着剤やパテなどのようにA液(基剤)とB液(硬化剤)を混ぜて硬化するタイプのものも熱硬化性樹脂と称している。熱硬化性樹脂には,硬く,熱や溶剤に強い特徴がある。
 主なものには,フェノール樹脂(PF),エポキシ樹脂(EP),メラミン樹脂(MF),尿素樹脂(ユリア樹脂,UF),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ポリウレタン樹脂(PUR),熱硬化性ポリイミド樹脂(PI)などがある。
 【エラストマー,ゴム】
 エラストマー(elastomer)とは,ゴム状の弾力性のある工業用材料の総称であり,弾性のある(elastic)重合体(polymer)を組み合わせた造語である。エラストマーは,ポリマーと同様に熱可塑性と熱硬化性に分けられる。
 弾性は変形しにくさの目安で,高弾性と言った場合は変形しにくい性質をいう。エラストマーは,一般に低弾性で,高じん性(粘り強さ),及び高可とう性(弾性変形のし易さ)の材料である。
 ゴム弾性とは,元に戻る応力が大きく,変形しにくいといった性質を指し,ゴムのように弾む性質ではない。ゴムの弾性は,不規則な分子配列が,外部からの力で規則的になるため,不規則な配列に戻ろうとするときの力によるものである。
 分子間を共有結合で結合し,三次元網目構造を形成する高分子(熱硬化性樹脂)は,ガラス転移温度 Tg 以上で「ゴム弾性」という特殊な性質を示す。
 熱可塑性エラストマー(Thermoplastic elastomers)は,熱を加えると軟化して流動性を示し,冷却すればゴム状弾性体に戻る性質を持つ。射出成形で成型加工が可能な利点はあるが,熱で変形し耐熱性を要する用途には適さない。
 熱硬化性エラストマー(Thermosetting elastomers)は,製品に熱を加えても軟化せず,比較的耐熱性が高いエラストマーで,一般いう「ゴム」はこのタイプの材料である。
 ゴムは,原材料により天然ゴムと合成ゴムに分けられる。天然ゴム(NR)は,cis-ポリイソプレン [(C5H8)n] を主成分とするゴムの木の樹液を集めて精製し,凝固乾燥させた生ゴム(熱可塑性)を加硫(硫黄を混ぜ,三次元網目構造に架橋)した弾性材料(熱硬化性)である。
 合成ゴムは,石油を原料とする樹脂を用いた熱硬化性エラストマーで,付加重合,共重合や加硫により製造され,樹脂種により,ポリブタジエン系,ニトリル系,クロロプレン系などに分けられる。
 主な合成ゴムには,アクリルゴム(ACM),ニトリルゴム(NBR),イソプレンゴム(IR),ウレタンゴム(U),クロロプレンゴム(CR),シリコーンゴム(Q),スチレン・ブタジエンゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),ふっ素ゴム(FKM),ポリイソブチレン(ブチルゴム IIR)などがある。

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