防食概論:防食の基礎

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          【素地調整とは】

 素地調整(surface preparation)とは,JIS Z 0103「防せい防食用語」で“塗料の付着性及び防せい効果をよくするために,機械的又は化学的に被塗装物体表面を処理し,塗装に適するような状態にすること。”と定義されている。素地調整とほぼ同義の用語に,下地処理,前処理,生地ごしらえ,ケレンなどの用語が用いられる。
 機械的素地調整(mechanical surface preparation)とは,物理力で表面を研削する方法をいう。一般的には,作業効率,得られる除錆(じょせい)度(preparation grade),作業制約などで,工具(手工具,動力工具)による方法,ブラスト処理(abrasive blast-cleaning , blasting)による方法に分けられる。
 化学的素地調整(chemical surface preparation)とは,溶剤の溶解力を活用した脱脂(degreasing),酸やアルカリなどの溶解力を用いた除錆(せい),金属表面に化成皮膜を形成する化成処理(conversion treatment, chemical conversion, chemical pretreatment)などの処理をいう。
 機械的素地調整では,金属表面の油汚れの除去は極めて困難である。このため,脱脂作業は,塗装に先立ち実施される重要な前処理になる。簡便な脱脂で済む場合は,溶剤を含んだ布による拭き取り方法が適用される。
 
 【鋼橋の素地調整】
 ここでは,鋼橋製作を例に,塗装で用いられる機械的素地調整について概要を紹介する。鋼橋新設時の素地調整には,【構造物塗装】で示したように,鋼板製作時の一次素地調整(temporary surface preparation , temporary cleaning ;原板ブラストともいう),橋梁製作後の塗装直前に実施される二次素地調整(secondary surface preparation ;製品プラストともいう),鋼橋架設後の現場での素地調整(手工具,動力工具)がある。
 鋼橋が実用に供され,複数年経過した後の塗膜の防食性能の低下時に,防食性能回復のために実施される塗替え塗装時の素地調整がある。塗替え塗装時の素地調整は,鋼橋架設現場での作業となるため,多くの制約を受ける。このため,架設現場の状況に応じて,全面ブラスト工法,部分ブラスト工法,手工具,動力工具のみの工法などから最適の方法を選択しなければならない。
 
 塗膜の性能を十分に発揮するためには,塗膜性能に見合う適切な素地調整の選択が必要不可欠である。
 一般的には,鋼橋新設時の一次素地調整,二次素地調整では,ショットブラスト(shot blasting, shot blast-cleaning)の採用が主流である。補修塗装,新設時現場塗装,及び塗替え塗装では,粉じん対策や騒音対策が必要になるため,動力工具や手工具を併用した素地調整が主流である。十分な粉じん対策が可能で塗膜品質の向上を目的とする場合は,適切なブラスト処理の採用が推奨される。
 
 【参考】
 清浄度(cleanliness , preparation grade)
 ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類(JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」,ISO 8501/1参照)。【JIS K5500「塗料用語」】
 除せい(錆)度(preparation grade)
 清浄度の中で,ミルスケール及びさびの除去程度。【 JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」】 br /> ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類。
 JIS Z 0313-1998「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,除せい度とそれに対する鋼材表面の状態を次のように定義している。
 Sa1  拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。
 Sa2  拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。残存する汚れのすべては,固着している。
 Sa2 1/2  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは,そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
 Sa3  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している。ブラストに先立って,厚いさび層,油,グリースや泥土は除去する。
 この規格は,ISO8501-1(Preparation of steel substrates before application of paints and related products -Visual assessment of surface cleanliness - Part 1 ; Rust grades and preparation grades of uncoated steel substrates and of steel substrates after overall removal of previous coatings. )に整合しており,判定はISO規格の写真集と比較して行うことになっている。
 一方,比較的使用例の多い米国の規格,SSPC (Steel Structures Painting Council): 「米国鋼構造物塗装協会で規格するブラスト仕上げ等級」では,除せい度の等級は,次のように規定している。
 White Metal Blast Cleaning(完全ブラスト処理:SP5)  全ての錆・ミルスケール・ 塗料その他異物を除去する。  ISO規格のSa3相当
 Near-White Blast Cleaning(準完全ブラスト処理:SP10)  全ての異物を完全に除去。極めて軽微なくもり・条痕,錆の染み・ミルスケール・酸化物等の軽微な残滓は容認。1平方インチ当たり95%以上は残滓がないこと。ISO規格のSa2 1/2相当
 Commercial Blast Cleaning(経済的ブラスト処理:SP6)  少なくとも1平方インチ当たり2/3は錆・ミルスケールの残滓がないこと。ISO規格のSa2相当
 Brush-off Blast Cleaning(スイープブラスト処理:SP7)  固く付着したミルスケール,錆及び塗膜の残滓を除き全ての異物を除去する。ISO規格のSa1相当。
 ブラスト処理(abrasive blast-cleaning , blasting)
 金属製品に防せい防食を目的として塗料などを被覆する場合に,素地調整のために行われる。研削材に大きな運動エネルギーを与えて金属表面に衝突させ,金属表面を細かく切削及び打撃することによってさび,スケールなどの付着物を除去して金属表面を清浄化又は粗面化させる方法。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 圧縮空気流,遠心力などを用いてブラスト材を基材の表面に吹き付けて黒皮,酸化物などを除去して清浄化すると同時に粗面化する操作(JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」参照)。【JIS H8200「溶射用語」】
 処理される表面に高運動量のブラスト研削材を衝突させる方法。金属製品の防せい防食を目的として塗料などを被覆する場合に,素地調整のために行われる。研削材に大きな運動エネルギーを与えて金属表面に衝突させ,金属表面を細かく切削及び打撃することによってさび,スケールなどを除去して金属表面を清浄化又は粗面化させる方法(JIS Z 0311「ブラスト処理用金属系研削材」参照)。【JIS K5500「塗料用語」】
 アルミナ,ショット,グリッド,ガラスビーズなどを用いて,空気の流れによって吹き付ける表面処理。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 加工面に固体金属,鉱物性又は植物性の研磨材を高速度で吹き付け,表面を清浄化,磨耗若しくは硬化させる方法。参考:対応国際規格では,使用する研磨材などの種類によって,アブレシブブラスト(abrasive blasting),ビードブラスト(bead blasting),ガラスビードブラスト(glass bead blasting),カットワイヤブラスト(cut wire blasting),グリットブラスト(grit blasting),サンドブラスト(sand blasting),ショットブラスト(shot blasting),ウエットブラスト(wet blasting)の用語を規定している。【JIS H 0400「電気めっき及び関連処理用語」】
 ショットブラスト(shot blasting, shot blast-cleaning)
 鋳鉄ショット,鋳鋼ショットなどの鋼球を遠心力又はその他の方法で吹き付けて基材表面のスケール,さび,塗膜などを除去し,清浄にするブラスト処理。【JIS H8200「溶射用語」】
 金属製品の表面に鋼粒ショットを吹き付けて,清浄にする工程。ブラスト処理の項参照。【JIS K5500「塗料用語」】
 圧縮空気又は遠心力などで,ショット,カットワイヤなどを品物に吹き付けて行う表面処理。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】

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