防食概論防食の基礎

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 環境遮断(ライニング被覆)

 モルタルライニング

 ここでは,金属被覆を除く無機被覆の概要を紹介する。無機被覆は,一般に下図に示すように,セメントを原料とするモルタルライニング(cement mortar lining)とセラミックを原料とする被覆系に分けられる。

無機被覆の分類

無機被覆の分類

 モルタルライニングの規格

 モルタルライニングは,金属表面にセメント(cement)と細骨材からなるモルタル(mortar)を被覆し,金属の耐食性耐摩耗性を付与する技術で,鋼管や鉄管内部の被覆に用いられることが多い。公的な規格として,日本工業規格の JIS A 5314 「ダクタイル鋳鉄管モルタルライニング」,日本水道協会規格の JWWA 109 「水道用鋼管モルタルライニング」, JWWA 113 「水道用ダクタイル鋳鉄管モルタルライニング」。日本水道鋼管協会の WSP 001-2008 「水道用鋼管現地モルタルライニング」などがある。
 例として,JIS A 5314 の規格内容を抜粋して次に示す。

ライニングの厚さ(単位 mm)
  管の呼び径    ライニングの厚さ    平均最小厚さ    一点最小厚さ 
  75~250    4    3.5    3.0 
  300~600    6    5.5    5.0 
  700~900    8    7.0    6.0 
  1000~1200    10    8.5    7.0 
  1350~1500    12    10.0    8.0 
  1600~2600    15    13.0    11.0 

 モルタルライニングの成形方法

 配合
 セメントと細骨材との質量配合比は,1 : 1.5~1 : 3.5 とする。なお,モルタルの品質確保のため,水はできるだけ少量にする。
 成形
 a)異物,浮きさびその他の金属とライニングとの密着に有害な影響を与える物質は,管内面から取り除く。
 b)ライニングの成形は,遠心力方法による。ただし,受渡当事者間の協定によって遠心投射方法とすることができる。
 c)管の受口を除いた輸送水と接する管の内面は,すべてモルタルで覆わなくてはならない。ただし,管の受口内面に付着したモルタルは,すべて除去しなければならない。
 補修
 軽微な欠陥は,補修してもよい。補修は,欠陥部からライニングを取り除き,モルタル,合成樹脂エマルジョンモルタル,樹脂充てん材などを用いて,同一な厚さで連続したライニングになるように遠心力方法,遠心投射方法,手塗り方法などによって行う。
 なお,補修用の材料は,適切な流動性をもっていなければならない。また,モルタルの健全部と補修部及び鉄部との接着をよくするために接着剤を使用してもよい。
 下図に,現地でのモルタルライニング(吹き付け工法)の例を示す。

現地モルタルライニング(吹き付け工法)の例

現地モルタルライニング(吹き付け工法)の例
出典:旭興産(株)HP(http://www.asahi-kohsan.co.jp/division/pipelining/cement/cement.html)


 【参考】
 セメント(cement)
 広義には水和や重合し硬化する粉体や接着剤全体を指すが,単にセメントという場合は,狭義のポルトランドセメント(Portland cement)を指すことが多い。ポルトランドセメントはコンクリートの原料として最も一般的な材料である。
 ポルトランドセメントは,石灰石,粘土,珪石,鉄を原料とし,焼成することで得られた水硬性のクリンカー鉱物と石膏を混ぜて粉砕して得られる。
 モルタル(mortar)
 砂(細骨材),砂利(粗骨材),水などをセメントで凝固させた硬化物をコンクリート(concrete)といい,砂利(粗骨材)を除き,細骨材と水とセメントを練混ぜて作った材料をモルタルという。

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