防食概論防食の基礎

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 ここでは,溶融めっき鋼として, 【溶融亜鉛めっき鋼】, 【溶融アルミニウムめっき鋼】 を紹介する。

 環境遮断(金属被覆)

 溶融亜鉛めっき鋼

 溶融亜鉛めっき(hot dipping , hot dip metal coating)は,純度 97.5%以上の亜鉛(融点419.53℃)の溶融浴に鋼材を浸漬して,亜鉛皮膜(亜鉛・鉄の合金層,結晶構造の異なる亜鉛の複数層を形成)を得る方法である。
 亜鉛皮膜そのものの耐食性,被膜と鋼との密着性,被膜の犠牲陽極(sacrificial anode)作用などは,使用した溶融亜鉛浴に含まれる不純物浴温度,及び浸漬時間などの影響を受ける。なお,これらの概要については,【金属概論】の【亜鉛めっき鋼】で紹介する。

 めっき作業は,400℃以上の溶融亜鉛浴に素材を浸漬する作業となるため,浸漬できる素材の材質や形状に制約がある。特に,素材の成分にけい素(Si),りん(P)が多い場合には,溶融めっき膜の品質に大きく影響するので,特別な配慮が必要になる。
 JIS H 8641 「溶融亜鉛めっき」では,素材の形状,材質などによる分類や,めっきに適さない素材についての指針を示している。  
 素材の分類
  a) 管類 : 水配管用鋼管,電線管,配管用鋼管,構造用鋼管,鋼管足場など。
  b) 圧延鋼材類 : 鋼板,形鋼,平鋼,棒鋼など。
  c) 加工品類 : 鉄塔部材,橋りょう(梁)部材,鉄骨部材,造船金物,架線金物,タンクなど。
  d) ボルト・ナット類 : 各種ボルト,ナット,座金など。
  e) 鋳鍛造品類 : 鋳鉄品,鋳鋼品,鍛造品,管継手など。

 めっきに適さない素材
  次に示す表面状態又は構造の場合,そのままめっきすると,不めっき,その他使用上で支障のある欠陥を生じる。このような場合は,事前に何らかの対策が必要となる。
 1)表面状態
  a) 2枚板。深いロールきずなどの材料きずのあるもの。なし肌状の表面。孔食状などの甚だしい腐食があるもの。
  b) 素材表面にさび,汚れ,付着物(油,塗料)などがあり,前処理工程の脱脂,酸化物の除去処理を行っても除去できないもの。
  c) 極端な赤さび,異常酸化層などによって地肌が平滑でないもの。
  d) レーザー切断,高周波曲げなどによって,平滑であるが異常酸化層の激しいもの。
 2)構造
  a) 鋳物の砂かみ,巣,溶接部のピットなどのあるもの。
  b) 作業中破損又は変形のおそれのある構造のもの。
  c) ブラスト処理をするときに,死角をもつ構造のもの。
  d) 空気を密閉した中空体の構造のもの。
  e) 亜鉛が容易に流入,流出できない構造のもの。
  f) 亜鉛浴中に浸せきしても空気の一部が逃げない構造のもの。
 

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 溶融アルミニウムめっき鋼

 溶融アルミニウムめっきは,700℃以上の浴温度で処理されるため,高張力鋼などを用いた鋼構造物に適用するのは困難である。しかし,その耐久性,耐熱性(900℃)から,下表の用途に実用されている。


溶融アルミニウムめっきの種別と用途
出典: JIS H 8642 「溶融アルミニウムめっき」
  種別(記号)    めっき厚さ
μm  
  付着量
 g・m2 
  目的     主な用途  
  1種(HD A1)    60以上    110以上    耐候性    配管,熱交換管,グレーチング,
桟橋部品等 
  2種(HD A2)    70以上    120以上    耐食性 
  3種(HD A3)    合金層50以上    -    耐熱性    焼却炉,煙突,乾燥釜,
配管,ボイラー等 
  3種(HD A3-D)    合金層70以上    - 

  【参考】
 高張力鋼(high tensile strength steels)
 建築,橋,船舶,車両,自動車その他の構造物用及び圧力容器用として,通常,引張強さ 490 N/mm2以上で溶接性,切欠きじん性及び加工性も重視して製造された鋼材。冷延鋼板では引張強さ 340 N/mm2以上を高張力鋼という。【JIS G 0203「鉄鋼用語(製品及び品質)」】
 犠牲アノード(犠牲陽極)(sacrificial anode)
 流電陽極(galvanic anode)ともいい,外部電源を用いない陰極防食(カソード防食)の流電陽極方式で用いられる防食対象の金属より電位が卑な金属をいう。
 鋼などの母材を,使用環境で母材より腐食電位が卑な金属で被覆したもの。この場合には,ピンホールや傷つきなどの素地に達する損傷があっても,露出した素地金属がカソードとなり,被覆金属が広いアノード(陽極)として作用するため,被覆金属が犠牲的に腐食し,素地金属の腐食を抑制できる。これを犠牲陽極作用,犠牲的保護作用や犠牲防食作用などともいう。

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