防食概論:防食の基礎

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    【腐食程度評価:全面腐食での腐食度と腐食速度】

 腐食程度の評価では,腐食状態の違い,すなわち比較的均一な全面腐食と,不均一な局部腐食(凹凸の激しい腐食,孔食など)を分けて扱う必要がある。
 鉄鋼は,一般的な大気環境で全面腐食に至る場合が多い。全面腐食の場合には,鋼板の厚みの減少量が維持管理の上で有用な情報を与える。
 しかし,全面腐食(均一腐食)とはいえ,腐食した鋼の表面には,多少とも凹凸がある。このため,直接的な板厚み計測で厚み減少量を求めることは困難である。
 そこで,腐食による試験片の質量減少量を求め,試験片の面積,及び金属の密度から計算で求めるのが一般的な方法である。

 腐食量,腐食度,侵食度とは
 腐食量とは,試験片の腐食試験後の質量減少量( g )をいう。
 腐食度とは,試験片の単位面積単位年当たりの質量減少量( g・m-2・a-1 )である。
 侵食度とは,試験片の単位年当たりの板厚み減少量( m・a-1 )である。
 注記:最近に,侵食度を腐食度と表記する例が増えている。JIS規格の中にもこのような扱いが見られるが,混乱を避けるため,侵食度と腐食度を使い分けるのが望ましい。

 腐食量・腐食度の求め方
 腐食量を求めるためには,試験片の初期質量として,前処理終了後で試験開始直前に質量を試験片の表面積 100cm2当たり 0.1mgまで正確に秤量する。
 腐食試験後に,適切な後処理を施し,十分に乾燥した状態で試験片の質量を試験片の表面積 100cm2当たり 0.1mgまで正確に秤量する。この質量差が,試験期間中の腐食量となる。
 腐食度は,測定した腐食量( g )を試験片の表面積( m2 ),及び試験期間(a)で除して求める。すなわち,腐食度の単位は g・m-2・a-1 となる。
 単位のみを見ると,腐食速度と同じであるため,腐食速度と安直に表現しがちである。しかし,厳密には,次で解説するように値の意味が全く異なる。従って,用語として,腐食度腐食速度は明確に使い分けなければならない。

 腐食速度と腐食度の違い
 大気中の鋼腐食は,一般的に下図に示す腐食曲線で表わされる。腐食速度は,腐食曲線のある時点での接線を意味する。現実には大気暴露試験片の腐食速度を実験的に求めるのは非常に困難である。
 ある時点(例えば図の T1 )の腐食量を求め,計算される腐食度は,図中の青色点線の傾きとなる。一方,時点 T1 腐食速度は,図中の青色実線の傾きであるため,腐食速度と腐食度が大きく異なることが分かる。
 また,図から分かるように,いつの時点で腐食度を計測するか,すなわち暴露期間の長短により,求められる腐食度は,青色の点線と緑色の点線のように著しく異なる。従って,腐食度を記述する場合は,暴露期間の情報を同時に記述しないと誤解を生むので注意が必要である。例えば,JIS,ISOなどでは,“暴露1年目の腐食度”などと暴露期間を含めた表現が採用される。

鋼腐食量と時間の関係

鋼腐食量と時間の関係

侵食度の求め方
 侵食度とは,腐食度を厚み減少量に換算したもので,質量減少量に比較して,実用上の利用価値が高い値である。
 質量を厚みに変換するためには,試験片の表面積と金属の密度が必要である。純金属については,正確な密度が求められているが,合金については,その成分で密度が異なる。
 純金属の密度(室温付近,g・cm-3):鉄(7.874),亜鉛(7.14),アルミニウム(2.70),銅(8.94)

 JIS Z 2383 「大気環境の腐食性を評価するための標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」では,質量を厚みに換算するため,合金鋼の密度を
   炭素鋼(SS400),耐候性鋼(SMA490BW):7.86 g・cm-3
   ステンレス鋼(SUS304):7.93 g・cm-3
としている。

【参考規格例】
 JIS Z 2383「大気環境の腐食性を評価するための標準金属試験片及びその腐食度の測定方法」
 ISO 8407「 Corrosion of metals and alloys−Removal of corrosion products from corrosion test specimens」

参考
 過去の文献には,腐食度の単位としてmdd(mg・dm-2・day-1:100cm2当たりの1日の減量),g・m-2・yer-1(1m2当たりの1年間の減量)などの表記が使われている。暦年を示す単位(yer)は,閏年があるなど明確に定義されていない時間の単位である。このため,現在のJIS規格やIOS規格では,天文学等で用いる回帰年(平均太陽年)を表す記号( a )を用いたg・m-2・a-1での表記が標準となっている。

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