防食概論:防食の基礎

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           【表面物性(粗さ・硬さ)評価】

 【腐食試験板の物性評価】
 腐食試験後の機械的特性変化の評価に,表面粗さ(surface roughness),硬さ(hardness),引張強さ(tensile strength),曲げ強さ(flexural strength, bending strength),衝撃強さ(impact strength)など,一般的な金属材料試験が用いられる。
 ここでは,表面粗さ硬さについて紹介する
 
 【表面粗さとは】
 加工された金属材料の表面には,多少なりともうねり凹凸がある。凹凸は,表面粗さや単に粗さといわれる。うねりは加工に用いた工作機械,振動に,表面粗さは加工に用いる工具,加工法の適否に影響を受ける。
 金属材料を用いた製品の品質では,表面のうねり表面粗さなどの表面性状が許容範囲内にあるか否かが問題となる。
 
 品質管理のため,表面性状を定量的に評価することが求められる。これを目的として,次の JIS規格などが制定されている。
  JIS B 0601 「製品の幾何特性仕様 (GPS) −表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」
 輪郭曲線方式による表面性状(粗さ曲線,うねり曲線及び断面曲線)を表すための用語の定義及びパラメータについて規定する。
  JIS B 0633 「製品の幾何特性仕様 (GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−表面性状評価の方式及び手順」
 表面性状パラメータの測定値と許容限界値との比較方式,JIS B 0651 の測定機で測定するためのカットオフ値λc の標準値を規定する。
  JIS B 0651 「製品の幾何特性仕様 (GPS) −表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」
 輪郭曲線にかかわる事項並びに表面粗さ及びうねりを測定するための触針式表面粗さ測定機の一般的な構造,輪郭曲線の評価に影響を及ぼす測定機の特性を規定し,触針式表面粗さ測定機(測定機及び記録機器)の仕様の基本事項を規定する。
 
 表面粗さは,表面性状輪郭曲線(profile)の一特性である。なお,輪郭曲線とは,測定断面曲線,断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線などの曲線の総称である。それぞれの曲線について, JIS B 0601 JIS B 0651で次のように定義している。
 測定断面曲線(total profile)
 縦軸及び横軸からなる座標系において,基準線を基にして得られたディジタル形式の測定曲線。
 断面曲線(primary profile)
 測定断面曲線にカットオフ値λs の低域フィルタを適用して得られる曲線。
 注記 1 断面曲線は,断面曲線パラメータの評価の基礎となるものである。注記 2 測定断面曲線は,縦軸及び横軸からなる座標系において,基準線を基にして得られたディジタル形式の測定曲線である。
 粗さ曲線(roughness profile)
 カットオフ値λc の高域フィルタによって,断面曲線から長波長成分を遮断して得た輪郭曲線。この輪郭曲線は,意図的に修正された曲線である。
 注記 1 粗さ曲線用の帯域通過フィルタは,カットオフ値λs 及びカットオフ値λc の輪郭曲線フィルタによって定義される。 注記 2 粗さ曲線は,粗さパラメータの評価の基礎となるものである。注記 3 λs 及びλc の標準的な関係は,JIS B 0651 の 4.4(粗さ曲線用カットオフ値λc,触針先端半径 rtip 及びカットオフ比 λc/λs の関係)による。
 うねり曲線(waviness profile)
 断面曲線にカットオフ値λf 及びλc の輪郭曲線フィルタを順次適用することによって得られる輪郭曲線。λf 輪郭曲線フィルタによって長波長成分を遮断し,λc 輪郭曲線フィルタによって短波長成分を遮断する。この輪郭曲線は,意図的に修正された曲線である。
 粗さパラメータ(R-parameter)
 粗さ曲線から求められたパラメータで,粗さ曲線の最大山高さ(Rp),粗さ曲線の最大谷深さ(Rv),最大高さ粗さ(Rz),十点平均粗さ(RZJIS; ISO 4287:1997 から削除された),粗さ曲線要素の平均高さ(Rc),粗さ曲線の最大断面高さ(Rt),算術平均粗さ(Ra),二乗平均平方根粗さ(Rq),・・・などがある。
 参考
 カットオフ:断面曲線から除去される所定の波長をいう。すなわち,断面曲線から長い波長の成分を除去して粗さ曲線を,逆に短い波長の成分を除去してうねり曲線を作る。
 基準長:粗さパラメータを求めるために,輪郭曲線から一定の長さを抜き取った部分を用いる。この抜き取る長さを基準長さといい,粗さ曲線,うねり曲線の基準長さは,それぞれの曲線のカットオフ値のλcやλfと同じ長さになる。
 
 【ブラスト処理鋼板の表面粗さ】
 JIS Z 0313「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,表面粗さの試験評価を次のように規定している。
 “ブラスト処理面の表面粗さを,対象物の形状,寸法などを考慮して,受渡当事者間で協定した比較板との比較方法,② 顕微鏡焦点移動方法,③ 断面顕微鏡観察方法,④ 触針式測定方法,⑤ テープ転写方法のいずれかの方法によって評価する。
 備考:粗さの測定は,粗さ測定方法固有の最大高さ(hy),若しくは JIS B 0601 に規定する最大高さ(Rz)又は十点平均粗さ(RZJIS 82)のいずれかで行う。その値は測定方法によって異なる。”
 
 比較板との比較方法
 比較板をブラスト処理面に当て,目視又は7倍以下の拡大鏡によって,相互の粗さを比較する。簡便であるが,粗さの概略の範囲を知ることしかできない。
 比較板には,粗さの実測による平均値及びばらつきが明示されたものを用いる。特に受渡当事者間の協定がない場合は,ISO 8503-1 に規定する比較板を用いる。
 顕微鏡焦点移動方法
 ブラスト処理面の多数の山谷に顕微鏡の焦点を合わせ,そのときの顕微鏡鏡胴の移動距離によって粗さを測定する。正確であるが,測定が面倒である。小形ピースを実験室で測定するのに適している。
 合焦点の位置を 1μm 以下の精度で読み取れる焦点移動法用顕微鏡( 反射式光学顕微鏡又は共焦点式自動顕微鏡)を用い,鏡胴を下ろしながら視野内で最も高い部分に焦点を合わせ,鏡胴の高さを読み取る。次に,視野内で最も低い部分が焦点から外れるまで一度鏡胴を下げ,引き続き鏡胴を上げながら視野内で最も低い部分に焦点を合わせ,鏡胴の高さを読み取る。両者の鏡胴の高さの差をμm 単位で算出し,測定値とする。
 異なる視野での 20 回以上の測定値の平均値を最大高さ(hy)とする。
 断面顕微鏡観察方法
 切断した断面の凹凸を顕微鏡で観察し,粗さを測定する。正確だが,測定が面倒である。極小ピースを実験室で測定することしかできない。
 小部分 2 個を,樹脂中に断面が処理面と直角になるよう埋め込み,断面を鏡面研磨する。倍率 50~400 倍で観察可能な反射式光学顕微鏡を用い,視野内の最高の山と最低の谷との,それぞれの処理面に平行な直線の間隔をμm 単位で測定する。
 この測定を,各小部分ごとの異なる 10 視野について繰り返し,全測定視野の測定値の平均値を最大高さ(hy)とする。
 触針式測定方法
 表面に微細な先端をもつ針を走らせ,その上下動から山谷の高さを測定する。ブラスト面のように複雑な形状には,針が追随しにくい。可搬式の装置は粗い面での誤差が大きい。
 JIS B 0651 に規定する触針式表面粗さ測定機を用いる。なお,針の先端は,半径 5±1μm のダイヤモンドを用いる。
 測定器の針の走査距離及び回数を,あらかじめ受渡当事者間で協定し,JIS B 0601:1982による十点平均粗さ(RZJIS 82を測定する。
 テープ転写方法
 可塑性の発泡体でできたレプリカテープを,ブラスト処理面に押しつける。テープの上から,硬質フィルムを介して発泡体をこすりつけて,素地の一番高い山の頂上が基板に達するまで,素地の山谷に発泡体を押し込む。その後で,テープを外して,テープの厚さをマイクロメータで測定する。全体の厚さから,既知の基板の厚さを引けば,素地の最大粗さを求めることができる。実際の素地の立体的な形状を転写して保存できる。しかし,発泡体の特性によっては,谷間の底まで発泡体が入り込まない場合もありうるので注意を要する。
 レプリカテープは,アメリカで市販されており,発泡体の厚さは,ブラスト処理面の粗さが 20~50μm 用の coarse ,33~85μm 用の paint 及び 40~115μm 用の X-coarse の 3 種類がある。また,基板には,厚さ 50±2μm のポリエステルフィルムを用いている。基板の反対側(外側)は,中央部約 10mm を除いて,紙が張られ,テープの仕様が記載されている。
 
 触針式表面粗さ試験機(contact-type surface roughness tester)
 表面上を触針が運動して表面の輪郭形状の偏差を測定し,パラメータを計算し,輪郭曲線を記録することができる測定機。【JIS B0651「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」】
 触針の先端が試料の表面に直接触れ,表面をなぞる時の触針の上下運動を記録するので,接触式表面粗さ計で測定される表面形状や粗さの精度は,触針の先端形状と接触圧に影響される。
 一般的に,触針にはサファイヤやダイヤモンドが使用され,その先端半径は通常約 10μm,5μm,2μmの物が用いられ,理想的な触針の形状は,球状先端をもつテーパ角度 60°又は 90°の円錐である。
 
 【鋼橋新設時の表面粗さの検査】
 鋼橋などの鋼構造物新設時の表面粗さは,鋼鉄道橋では 10点平均粗さ 70μm RZJIS 以下,鋼道路橋では 80μm RZJIS 以下と規定している。無機ジンクリッチペイントの鋼に対する付着性は,表面粗さが粗いほど向上する。しかし,鋼材の疲労き裂(表面粗さが金属疲労に与える影響)や第 2層目以後の塗膜仕上がりに与える影響などを考慮して,粗さの上限が定められている。
 表面粗さは,短時間での評価が求められるので,比較板JIS Z 0313)との対比や,携帯式の表面粗さ計(触針式 JIS B 0651,光波干渉式 JIS B 0652)を用いた検査が一般的である。
 
 粗さの表示について
 10点平均粗さは,日本独特の粗さ表記である。このため,JIS規格(JIS B 0601)の ISO規格との整合化を図った 2001年の改訂で,この表記が規格から削除された。しかし,日本では広く普及しているので,JIS規格の附属書 1(参考)として残されている。
 JISの 2001年改訂まで用いられていた10点平均粗さ記号“ Rz”には, JIS 改訂に伴い異なる意味(最大高さ粗さ)が与えられた。そこで,10点平均粗さの記号は RZJIS に変更された。また,それ以前の JIS規格(1982年版,1994年版)に従うことを厳密に表記したい場合は,例えば,RZJIS 82 や RZJIS 94 と年号を入れることが求められている。

 【硬さ】
 硬さ(hardness)の概念は,数値化して表現しようとする場合の試験方法の定義により様々な値を取る。硬さ試験では,金属,セラミックス,ゴムなどの材料特性により微小な変形を与える力に対する挙動がそれぞれ異なる。
 硬さは,概念の違いにより,押し込み硬さ(indentation hardness),反発硬さ(rebound hardness),引っ掻き硬さ(scratch hardness)に大別される。また,対象とする材質により,適用できる試験が限定される。
 広く用いられる硬さには,ブリネル硬さ(押し込み),ビッカース硬さ(押し込み),ヌ―プ硬さ(押し込み),ロックウェル硬さ(押し込み),バーコール硬さ(押し込み),モノトロン硬さ(押し込み),ショア硬さ(反発硬さ),鉛筆硬さ(引っかき),マンテルス硬さ(引っかき)などがある。
 主な測定方法には,次に示す方法がある。なお,硬さの値には,採用した測定法の呼称を付け,単位を付けないのが通例である。
 押込み硬さ試験(indentation hardness test)
 剛体とみなせる特定の圧子を試験面に押込み,そのときの押込み荷重及び試験片に生じた永久変形の大きさから,その試料の硬さを決める硬さ試験の総称で,ブリネル硬さ試験,ビッカース硬さ試験,ロックウェル硬さ試験などがある。
 JIS Z 2243 「ブリネル硬さ試験−試験方法」:超硬合金球(直径 D)の圧子を,試料の表面に押し込み,その試験力 (F) を解除した後,表面に残ったくぼみの直径 (d) を測定する。
 JIS Z 2244 「ビッカース硬さ試験−試験方法」:正四角すい(錐)のダイヤモンド圧子を,試料(試験片)の表面に押し込み,その試験力 (F) を解除した後,表面に残ったくぼみの対角線長さを測定する。
 JIS Z 2245 「ロックウェル硬さ試験−試験方法」:規定する寸法,形状及び材質の圧子[円すい(錐)形ダイヤモンド,鋼球又は超硬合金球]を試料の表面に,指定された条件に従い,2 段階で押し込む。追加試験力を除去した後の初試験力下における,永久くぼみ深さ( h )を測定する。
 反発硬さ試験(rebound hardness test)
 特定のハンマを一定のエネルギーで試料の試験面に衝突させ,ハンマが試験面から反発される際のエネルギーからその試料の硬さを決める硬さ試験で, 代表的なもの JIS Z 2246 「ショア硬さ試験—試験方法」がある。
 微小硬さ試験(microhardness test)
 押込み硬さ試験のうち,ごく小さい試験荷重で行う硬さ試験で,JIS規格には,微小硬さ試験として,9.8N{1kgf}以下の試験荷重で行うビッカース硬さ試験及びヌープ硬さ試験( JIS Z 2251「ヌープ硬さ試験−試験方法」 )がある。
 ヌープ硬さ試験は,二つの対りょう角が172°30'と130°の四角すいダイヤモンド圧子を一定の試験荷重で材料の試験面に押込み,生じた菱形の永久くぼみの大きさから試料の硬さを測定する試験で,自動化した試験器を用いることで,表面層のみの硬さを計測できる。
 
 【参考】
 塗膜の硬さ(硬度)(hardness)
 塗膜の厚みが 1mm 以下と薄いため,金属,プラスチックやゴムで採用されている押し込み法では,塗膜の変形以外に素地の影響が大きく,塗膜の硬さを適切に計測できない。このため,塗膜の硬さは,引っかき法を用いて評価されるのが一般的である。
 塗膜の引っ掻き硬さ測定法は,JIS K 5600-5-4「塗料一般試験方法-第 5部:塗膜の機械的性質-第 4節:引っかき硬度(鉛筆法)」,JIS K 5600-5-5「塗料一般試験方法-第 5部:塗膜の機械的性質-第 5節:引っかき硬度(荷重針法)」に規定されている。

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