防食概論:防食の基礎
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腐食試験と評価法
複合サイクル試験(促進腐食試験)
腐食試験として採用される連続試験と大気暴露試験(atmospheric corrosion test, atmospheric exposure test)との相関が低いことは周知の事実であるが,構造物設計や材料選定などの実務面で実環境での腐食挙動と相関性の高く,早期に結果が得られるい腐食試験が望まれ,実環境で観察される濡れ,乾燥,腐食促進因子などの環境因子が繰り返される複合サイクル試験(combined cyclic corrosion test)が複数考案されている。
複合サイクル試験方法は,JIS規格,ISO規格に定められる方法以外にも,想定する環境条件の違いに応じて,団体規格など多くの試験方法が提案されている。
【JIS規格の複合サイクル試験の例】
JISに規定される複合サイクル試験方法には,● 無機被覆鋼の耐食性評価試験法としてJIS G 0594「無機被覆鋼板のサイクル腐食促進試験方法」,
● めっき及びそれを施したものの耐食性試験法としてJIS H 8502 「めっきの耐食性試験方法」,
● 塗膜の耐久性評価試験法としてJIS K 5600-7-9 「塗料一般試験方法−第 7部:塗膜の長期耐久性−第 9節:サイクル腐食試験方法−塩水噴霧/乾燥/湿潤」
などがある。
次に,複合サイクル試験方法の理解に資するため,各JISに規定する中性塩水噴霧サイクル試験(cyclic neutral salt spray test),及びJIS H 8502 に規定する人工酸性雨サイクル試験(cyclic artificial acid rain test)の試験条件を紹介する。
中性塩水噴霧サイクル試験方法
JIS H 8502サイクル工程:塩水噴霧 2時間→(30分以内)→乾燥 4時間→(15分以内)→湿潤 2時間→(30分以内)→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:35±1℃,噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gの水溶液(pH 6.5)
乾燥:槽内温度:60±1℃,相対湿度 20~30%
湿潤:槽内温度:50±1℃,相対湿度 95%以上
JIS G 0594 (C法)
サイクル工程:塩水噴霧 1時間→(30分以内)→乾燥 4時間→(15分以内)→湿潤 3時間→(30分以内)→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:35±1℃,噴霧溶液組成:1リットルに対し塩化ナトリウム量 1±0.1gの水溶液(pH 6~7)
乾燥:槽内温度:50±1℃,相対湿度 30%以下
湿潤:槽内温度:40±1℃,相対湿度 90±5%
JIS K 5600-7-9 の 4種のサイクル試験条件(ISOと整合)
サイクル条件A
サイクル工程:塩水噴霧 2時間→(30分以内)→乾燥 4時間→(15分以内)→湿潤 2時間→(30分以内)→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:35±1℃,噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gの溶液(pH 6.5)
乾燥:槽内温度:60±1℃,相対湿度 20~30%
湿潤:槽内温度:50±1℃,相対湿度 95%以上
サイクル条件B
サイクル工程:塩水噴霧 24時間→湿潤 8時間→乾燥 16時間→湿潤 8時間→乾燥 16時間→湿潤 8時間→乾燥 16時間→湿潤 8時間→乾燥 16+48時間→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:35±2℃,噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gの水溶液(pH 6.5)
乾燥:槽内温度:23±2℃,相対湿度 50±20%
湿潤:槽内温度:40±2℃,相対湿度 100%
サイクル条件C
サイクル工程:塩水噴霧 210分→乾燥① 210分→湿潤① 1470分→乾燥② 102分→塩水噴霧 210分→湿潤② 378分→乾燥③ 180分→乾燥② の25℃120分→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:25±2℃又は 30±2℃,噴霧溶液組成:1リットル当たり,塩化ナトリウム 0.31±0.01g,硫酸アンモニウム 4.1±0.01g加えた水溶液
乾燥①:槽内温度:40±2℃,空気供給
乾燥②:槽内温度:25±2℃又は 30±2℃,空気供給
乾燥③:槽内温度:35±2℃,空気供給
湿潤①:槽内温度:40±2℃,相対湿度 75±15%
湿潤②:槽内温度:30±2℃,相対湿度 95%-100%(試験片に水の凝集)
サイクル条件D
サイクル工程:塩水噴霧 0.5時間→(10分以内)→湿潤 1.5時間→(15分以内)→乾燥① 2時間→(30分以内)→乾燥② 2時間→(瞬時)→塩水噴霧へもどる
塩水噴霧:槽内温度:30±2℃,噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gの水溶液(pH 6.5)
乾燥①:槽内温度:50±2℃,相対湿度規定なし
乾燥②:槽内温度:30±2℃,相対湿度規定なし
湿潤:槽内温度:30±2℃,相対湿度 95±3%
JIS H 8502 酸性塩水噴霧サイクル試験方法
人工酸性雨サイクル試験条件サイクル工程:人工酸性雨噴霧 2時間→(30分以内)→乾燥 4時間→(15分以内)→湿潤 2時間→(30分以内)→人工酸性雨噴霧へもどる
人工酸性雨噴霧:槽内温度:35±2℃,噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gの水溶液(pH 6.5)10リットルに対し,硝酸 12ミリリットル,硫酸 17.3ミリリットル加えた水溶液
乾燥:槽内温度:60±1℃,相対湿度 20~30%
湿潤:槽内温度:50±1℃,相対湿度 95%以上
酸性塩水噴霧サイクル試験条件(C法)
サイクル工程:酸性塩水噴霧 1時間→(30分以内)→乾燥 4時間→(15分以内)→湿潤 3時間→( 30分以内)→塩水噴霧へもどる
酸性塩水噴霧:槽内温度:35±1℃,噴霧溶液組成:人工海水*を 6倍に希釈した水溶液を酸溶液**でpH 2.5±0.1となるように調整した水溶液
*:人工海水とは,水 1リットルに対し,塩化ナトリウム 24.53g,塩化マグネシウム 5.20g,硫酸ナトリウム 4.09g,塩化カルシウム 1.16g,炭酸水素ナトリウム 0.201g,臭化カリウム 0.101g,ホウ酸 0.027g,塩化ストロンチウム 0.025g,ふっ化ナトリウム 0.003g加えた水溶液で,塩分濃度 36.0±3.6g/リットルの混合塩水をいう。
**:酸溶液とは,硝酸 16.2gと硫酸 42.5gを混合した酸溶液を水で希釈し 1リットルとしたもの。
乾燥:槽内温度:60±1℃,相対湿度 30%以下
湿潤:槽内温度:40±1℃,相対湿度 85±5%
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