防食概論防食の基礎

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 構造対策

 水分除去

 【腐食概論】の【大気汚染物質の影響】で解説したように,大気中の鋼は,下図に示すように,鋼の置かれた状況で決まる臨界湿度(critical humidity ;一般に 50~70RH%)を超えると腐食が開始する。
 このことは,空間の相対湿度 RH を常に臨界湿度(例えば RH50%)以下に保てば,腐食の進行を抑制できることを示す。
 臨界湿度は,鋼表面に付着する汚染物質の種類とその量に依存した鋼表面の濡れで決まるが,少なくとも塩化ナトリウムの潮解(deliquescence)が始まる相対湿度 75%以下にできれば,海塩環境でも激しい腐食に至らずに済むと考えられる。

鋼腐食度に与える相対湿度の影響

鋼腐食度に与える相対湿度の影響

 構造物に適用できる実用的な除湿(dehumidification)方法には,除湿剤,除湿装置,乾燥空気の導入などが考えられる。 採用する方法の選択は,構造物の規模,維持管理のし易さ,運転経費などを総合的に比較して行われる。
 実際に,明石海峡大橋(神戸淡路鳴門自動車道)のケーブル内部は乾燥空気の連続送風で防食されている。 また,新尾道大橋(西瀬戸自動車道)では箱桁内部に除湿装置を設置し防食している。
 【参考】
 潮解(deliquescence)
 対象とする物質(固体)の飽和水溶液の水蒸気圧と問題とする環境の水蒸気の分圧(湿度)を比較し,環境の水蒸気の分圧が大きい場合に,物質が環境中の水分子を吸収し,物質を含む水溶液を形成する現象をいう。
 固体が残存している場合は,飽和水溶液を形成する。固体がすべて水溶液になった後は,水溶液の水蒸気圧が環境の水蒸気分圧に一致する濃度まで希釈される。この現象を起こす物質には,塩化マグネシウム(MgCl2), 水酸化ナトリウム(NaOH),塩化カルシウム(CaCl2) ,クエン酸(C6H8O7)などがある。
 相対湿度(relative humidity)
 相対湿度(RH)とは,ある温度(T)で計測された水蒸気圧(E)と,その温度での飽和水蒸気圧( Es (T))(saturated water vapor pressure) に対するの百分率と定義されている。
    RH(%)=100×E/Es (T)
 絶対湿度(absolute humidity)
 水蒸気量を直接示すために用いられる。一般的には,大気の一定体積(1m3)当たりの水蒸気の量(g)で表わす容量絶対湿度 VH(volumetric humidity ; g/m3)で表される。
 すなわち,容積 Va(m3)に含まれる水蒸気の質量を Mw(g)とすると,容量絶対湿度  VH=Mw/Va  で定義される。
 相対湿度 RH との関係は,T:温度(℃),E:水蒸気圧,Es(T):飽和水蒸気圧,とした場合に次式で与えられる。
    VH= (RH/100)・Es(T)・216.7/(T+273.15)
 飽和水蒸気圧(saturated water vapor pressure , saturated steam pressure)
 気象学において,水蒸気が気液平衡にある場合の蒸気圧をいい,一般的には平衡蒸気圧(へいこうじょうきあつ)という。
 なお,地表付近(一気圧),温度 T(℃)の飽和水蒸気圧は,Es(T) ≒ 6.1078・exp{ 17.27・T/(T+237.3)} で近似できる。

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