防食概論防食の基礎

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 環境遮断(ライニング被覆)

 セラミックライニング

 ここでは,金属被覆を除く無機被覆の概要を紹介する。無機被覆は,一般に下図に示すように,セメント(cement)を原料とするモルタルライニング(cement mortar lining)セラミックを原料とする被覆系に分けられる。
 セラミック系では,さらにガラス質の原料を用いるグラスライニング(glasslining)と陶磁器系のセラミック被覆(ceramic coating)に分けられる。

無機被覆の分類

無機被覆の分類

 セラミック被覆(ceramic coating)

 広義のセラミック被覆は,狭義のセラミックコーティングの他に,タイルやレンガによる被覆も含まれる。
 タイルやレンガの被覆(ライニング)は,陶器や磁器を金属表面に張り付け,耐熱性,耐摩耗性,耐薬品を要求される炉などの大型の設備に用いられる。
 なお,タイルとレンガの違いは,板の厚みの違いである。
 狭義には,セラミックライニング(ceramic lining)ともいい,金属などの保護を目的に,耐熱性,耐摩耗性,耐酸化性,耐薬品性に優れるセラミックスで被覆することをいう。 
 セラミックライニングの被覆方法には,ガラス質のセラミックスを表面に融着させる琺瑯(ほうろう)掛けによる方法,気化しやすい塩化物などを熱解離によって反応させる化学蒸着法,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,けい酸ジルコニウム,酸化クロムなどを酸素アセチレン炎やプラズマジェット加工などで溶融噴射(溶射)法などがある。
 セラミックライニングは,ふっ酸を除く酸や有機溶剤に良く耐えるので,これらの化学薬品を扱うポンプやバルブ内面の耐食材として用いられている。

レンガライニング,セラミックコーティング例

レンガライニング,セラミックコーティング例
出典:日本ガイシ(株)HP(http://www.ngk.co.jp/index.html)

 グラスライニング(glasslining)

 金属材料の表面に,高温でガラス質の被覆を付け,化学的な耐久性を増大させたものである。耐薬品性に著しく優れるが,高温での施工となり,耐衝撃性に劣るため,用途が限られている。
 グラスライニングは,家庭用品などの一般用琺瑯(ホウロウ;enamel)容器や,化学工業の反応容器などに使用される。産業用のグラスライニングは,化学的耐久性を高めたもので,耐酸ほうろう,グラスライニングなどともいわれる。
 一般的な被覆方法は,フリットと呼ばれるガラス粉末(珪石,長石など)と粘土やある種の有機物などの添加物との混合物に水を加えて,ボールミルで微粉砕した釉(うわぐすり)を,金属板の表面に吹き付けるなどの手法で付着させ,乾燥後 800~900℃の温度で熱処理をしてガラス粉末を融解させ,均一な薄膜にしたものである。
 具体的な用途としては,食器,調理器具,浴槽などの家庭用品,屋外広告看板,道路標識,鉄道設備用品,ホワイトボード,化学反応容器などに用いられる。
 上述の処理法の他に,加熱した状態のガラスの型に成形加工し金属製品を被せ,冷却することで熱膨張係数の違いを利用してガラスを内側に密着させる焼ばめ式がある。
 参考:琺瑯(ホウロウ)は,金属表面に,二酸化けい素(SiO2)を主成分とするガラス質の釉薬(ゆうやく;glaze)を高温で焼き付けたもので,防食性に優れるため,古くから七宝焼き(enamel)などの工芸品,食器,調理器具,浴槽,化学反応容器などに用いられてきた。

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