化 学 (化学反応)

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 ここでは,酸・塩基反応に関連し,【緩衝液】【ブレンステッド酸・塩基】【緩衝溶液】【緩衝作用】【参考:緩衝液の例】に項目を分けて紹介する。

 【緩衝液】

 緩衝液( buffer solution )とは,緩衝作用のある溶液をいう。緩衝液の用途には,多少の濃度変化でも pH 変化を抑えられる pH 標準液,pH 変化で酵素機能の変化が影響する細胞や微生物の培養液,pH 変化の影響を受けやすいクロマトグラフィーや電気泳動の溶媒などがある。
 緩衝作用( buffer action )とは,ブレンステッド酸・塩基とその共役塩基・酸が,同濃度で存在している希薄溶液で,外から少量の強酸や強塩基 を加えても pH 変化に対抗する作用( ルシャトリエの原理)をいう。

 

 【ブレンステッド酸・塩基】

 ブレンステッド・ローリーの定義では,ブレンステッド酸は相手物質にプロトンを供与し,塩基はプロトンを受容するものをいう。プロトンを放出したブレンステッド酸は,その酸の共役塩基といい,逆にプロトンを受けたブレンステッド塩基を共役酸という。すなわち,ブレンステッド酸・塩基の反応は次の関係にある。
      酸 + 塩基 ⇆ 共役塩基 + 共役酸
 例えば,アンモニア( NH3 )は,水中で,
      NH3 + H2O ⇆ NH4+ + OH-
と,アンモニウムイオン( NH4+ )と水酸化物イオン( OH- )との化学平衡状態にある。
 この場合には,H2O がブレンステッド酸,NH3 がブレンステッド塩基になり,NH4+ が共役酸,OH- が共役塩基の関係にある。

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 【緩衝溶液】

 ここでは,酢酸緩衝溶液(酢酸: CH3COOH ,酢酸ナトリウム CH3COONa 混合水溶液)での機能を紹介する。
 酢酸は水中で解離し,次の電離平衡を取る。
      CH3COOH + H2O ⇆ CH3COO- + H3O+
      Ka = [ CH3COO- ] [ H3O+ ] /[CH3COOH ] = 1.75×10-5

 一方,塩の電離度は濃度が高くても 1 に近いので,溶解度未満の量の酢酸ナトリウムは,水中でほぼ完全に電離すると考えてよい。
      CH3COONa (aq) → CH3COO- + Na+
 
 酢酸水溶液と酢酸ナトリウム水溶液を混合すると,混合水溶液中で [ CH3COO- ] が大きく増加するので,その増加に抵抗する次の反応平衡が進む。
      CH3COO- + H2O ⇆ CH3COOH + OH-  K = [ CH3COOH ] [ OH- ] /[ CH3COO- ] = KW /Ka <10-9
 
 混合後の pH
 混合前の酢酸の物質量 A と酢酸ナトリウムの物質量 B から求まる混合溶液中の濃度を CA ,CB とすると Ka ,K とも非常に小さいので,
      [ CH3COOH ] ≒ CA ,[ CH3COO- ] ≒ [ CH3COONa ] = CB
と近似できるので,混合後の ヒドロニウムイオン量は,
      [ H3O+ ] = Ka× [ CH3COOH ] /[ CH3COO- ] ≒ Ka×CA /CB
      ここで,Ka = 1.75×10-5
      ∴ pH ≒ pKa + log10( CB /CA ) = 4.76 + log10( CB /CA )  
となる。この関係式はヘンダーソン‐ハッセルバルヒ式と呼ばれる。
 従って,混合溶液の pH は,酸解離定数Ka で決まる pKa を中心に酢酸と酢酸ナトリウムの濃度比で調整できることが分かる。ただし,近似できるのは, 酢酸と酢酸ナトリウムの濃度差が大きくない場合に限られる。
 一般的にいうと,緩衝液の pH は,弱酸の平衡定数と,酸濃度と共役塩基濃度との比の対数によって決定される。

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 【緩衝作用】

 環境溶液に強酸 HX を添加した場合を考える。この時の強酸(電離度 1 )の濃度を CX とする。
       HX + H2O → X- + H3O+
 これにより,ヒドロニウムイオン [ H3O+ ] が CX 分増加するが,ルシャトリエの原理によって,これに抗する反応が起きる。
 酢酸緩衝溶液の例では,ヒドロニウムイオンの増加に抗するように,酢酸の電離平衡が左側に進む。
      CH3COOH + H2O ⇆ CH3COO- + H3O+
 この時の pH 変化は,
      pH ≒ 4.76 + log10 ( ( CB – CX ) /( CA + CX ) )
となる。
 CB = CA = 0.05 mol /L の緩衝溶液 1 L に,1 mol /L の強酸を 10 ml 加えると,CX = 0.01 mol /L となる。
 水に強酸のみをを加えた場合には pH = 2 となるが,緩衝液では,pH = 4.76 – 0.176 = 4.58 とほとんど低下しない。
 一般には,( CH3COOH )と共役塩基( CH3COO-のモル濃度が高いほど,モル濃度比が 1 に近いほど緩衝作用は大きくなる。

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 【参考】

 ● ブレンステッド・ローリーの定義
 ブレンステッド酸 ( Brönsted acid,base):反応する相手に対しプロトンを与える物質。
 ブレンステッド塩基 ( Brönsted acid,base):反応する相手からプロトンを受け取る物質。
 ● 緩衝液の例

pH 緩衝液の組成と pH( 25 ℃)
緩衝液の種類  組成 pH
 しゅう酸塩 pH 標準液  0.05 mol /kg 二しゅう酸三水素カリウム水溶液 1.68
 フタル酸塩 pH 標準液  0.05 mol /kg フタル酸水素カリウム水溶液 4.01
 中性りん酸塩 pH 標準液  0.025 mol /kgりん酸二水素カリウム,0.025 mol /kg りん酸水素二ナトリウム水溶液 6.86
 ほう酸塩 pH 標準液  0.01 mol /L ホウ酸ナトリウム ( Na2B4O7 ・ 10H2O水溶液) 9.18
 炭酸塩 pH 標準液  0.025 mol /kg 炭酸水素ナトリウム,0.025 mol /kg 炭酸ナトリウム水溶液 10.02

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