化 学 (化学反応)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒
 
 ここでは,化学反応の速度に関連し,【反応開始とは】【活性化とは】【参考:メタン,引火点,燃焼点,発火点,マクスウェル分布】に項目を分けて紹介する。

 【反応開始とは】

 日常の生活に用いている都市ガス(天然ガス)は,メタン( CH4 )がその主成分( 90 %程度)である。メタンが空気中で燃焼する際の熱化学方程式は,
 CH4 (g) + 2O2 (g) → CO2 (g) + 2H2O (g) ⊿C H0 = - 890.71 kJ /mol
 又は
 CH4 (g) + 2O2 (g) = CO2 (g) + 2H2O (g) +890.71 kJ
と書ける。すなわち,燃焼によりメタン 1 mol当たり890.71 kJ のエネルギーを発熱する反応である。
 発熱反応は,【熱化学方程式】で紹介したように,自発的に起こる反応である。しかし,経験するように,室温で都市ガスを空気と混ざただけでは着火せず,ガスと空気を混合した状態に,火花などの火源を近づけることで着火する。
 このことは,室温でこの化学反応(発熱反応)を起こすためには,瞬間的に高温状態となる点火源などの引き金( trigger )が必要であることを意味する。
 この引き金の作用に関し,可燃物の引火点,燃焼点,発火点(着火点)の定義が参考になる。
 引火点( flash point )は,火源が無くなると反応が進まない温度をいう。
 燃焼点( fire point )は,引火点より数℃程度高い温度で,火源がなくなっても燃焼が継続できる最低温度である。
 発火点( ignition point )は,空気中で,火源がなくとも化学反応が開始する最低温度である。
 すなわち,火源はメタンと空気の混合物の一部を発火点以上の温度するための装置と考えられる。なお,発火点以下で燃焼点以上の温度では,一旦化学反応が開始すると,自らの発熱反応で周辺のガスの温度が上昇し,点火源を遠ざけても,発火点以上の温度を維持し燃焼が継続できる。しかし,燃焼点以下で引火点以上の温度では,発熱反応が起きても,火源を遠ざけると,放熱が勝り,ガスの温度が発火点以下になるため燃焼が止まると考えられる。

  ページの先頭へ

 【活性化とは】

 気体分子は,【気体分子の熱運動】で紹介したように,互いの衝突(完全弾性衝突)で運動エネルギーを交換しながら,与えられた温度(内部エネルギー)に応じた速度分布を持つ。
 発火点以下の温度では,分子が衝突しても完全弾性衝突となり,互いのエネルギーを交換するだけで分子構造に変化はない。
 気体の温度増加(内部エネルギーの増加)に比例して気体分子の持つ運動エネルギーが増加する。
 運動エネルギーがある値を超えるまで増加すると,分子間の斥力を超え互いに接近し,遷移状態( transition state )を経て化学反応が起きると考えられる。

分子衝突時のエネルギーと衝突後の挙動【模式図】

分子衝突時のエネルギーと衝突後の挙動【模式図】
簡単・分り易さのため3分子同時衝突の図にしたが,実際には時間差を持つ複雑な挙動である。

 気体の温度を上げてゆくと,【気体分子の熱運動】で紹介したように,与えられた温度での分子の速度分布が変わる。
 分子の持つ並進運動のエネルギーは,その速度の二乗に比例するので,下図には,マクスウェルの分布を参考に,温度を変えた時の分子の運動エネルギーと分子数の割合の関係を模式的に示した。
 温度の上昇と共に,高い運動エネルギーを持つ分子の数が増えることが分かる。遷移状態を形成できる最少の運動エネルギーが存在し,そのエネルギーを超える運動エネルギーを有する分子が反応継続に必要な数だけ出現する温度を発火点と考えることができる。

ある分子のエネルギー分布と衝突後の挙動【模式図】

ある分子のエネルギー分布と衝突後の挙動【模式図】


 遷移状態とは
 化学反応で反応物から生成物に変わる過程で通る最もエネルギーの高い状態を遷移状態という。遷移状態では,衝突した分子の力学的エネルギー(運動エネルギー)が分子内部のエネルギーに変換され,元の構造と異なるゆがんだ構造となる。この状態になった分子を活性錯体,活性複合体,活性錯合体などとも呼ぶ。
 遷移状態は,直接観察できる反応中間体とは異なり,新たな結合の形成過程で直接観測することができない状態と考えられている。

  ページの先頭へ

 【参考】

 ● メタン( CH4
 モル質量 16.042 g /mol ,融点 – 182.5 ℃,沸点 – 161.6 ℃,引火点 - 188 ℃(代表例),発火点 537 ℃(代表例),
 ● 引火点( flash point )
 空気と可燃性の混合物を作ることができる最低温度。この温度で燃焼開始するには,火源(裸火,火花など)が必要で,引火点と発火点の間の温度では,いったん引火しても火源がなくなれば消える。
 ● 燃焼点( fire point )
 引火点より数℃程度高い温度で,燃焼が継続するための最低温度。危険物の分類では,引火後に 5 秒間燃焼が継続する最低の温度をいう。
 ● 発火点( ignition point )
 空気中(又は酸素中)で加熱するとき,火源がなくとも発火する最低温度。温度が発火点まで達すると,その後は自らの発熱反応で温度が上昇し発火する。自然発火温度,着火温度ともいわれる。発火点は,加熱の時間,可燃物と酸化剤との混合比,混合物の量,器壁の状態,圧力などの影響を受ける。
 ● マクスウェル分布( Maxwell distribution )
 熱力学的平衡状態で気体分子の速度が従う分布関数(マクスウェル-ボルツマン分布:Maxwell - Boltzmann distribution ともいう)である。

  ページの先頭へ