物 理 電磁気学(電気・電荷・磁気とは)

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 ここでは,電磁気の基本に関し, 【電磁気学とは】【電気・電荷とは】【電気素量】【電荷保存則】【磁気(磁性)とは】【磁気関連の用語】 に項目を分けて紹介する。

【電磁気学とは】

 電磁気学(electromagnetism)は,電気と磁気に関する現象全般を研究する物理学の基礎部門である。
 下記の歴史概要に示すように,18世紀までは,電気学と磁気学は別の学問であった。1820年にエルステッドが電流の磁気作用の発見し,1831年にファラデー電磁誘導(electromagnetic induction)を発見し,マクスウェルがファラデーの電磁場理論をもとに,1864年にマクスウェルの方程式(Maxwell's equations)を導いて電気学と磁気学を統合した古典電磁気学が確立された。
 
 初期の電磁気学で対象とした電磁的現象は,磁石が磁性体を引き寄せる現象,琥珀などの樹脂(ブラスチック)などの摩擦で軽い物体を引き寄せる現象,雷や稲妻の現象などであった。
 現在では身の周りの殆ど全ての現象が電磁的現象として捉えられ,電荷と電磁場の相互作用として説明する理論体系が電磁気学である。従って,光学も電磁気学の一部門になっている。
 
 電磁気学の歴史概要
 古代ギリシア人は,琥珀をこすると静電気が発生する事を発見していた。
 16 世紀
 イタリアの数学者カルダーノが電気現象と磁気現象を始めて区別したといわれている。
 17 世紀
 イギリスの科学者ウィリアム・ギルバートが琥珀を帯電させて静電気の研究を行い,琥珀を意味するギリシャ語から静電気力を“ electric force ”と呼んだ。また,ギルバートは世界初の電気計測機器(検電器)を発明したといわれている。
 18 世紀
 電気伝導の発見者といわれるイギリスの科学者スティーヴン・グレイが物体を導体と不導体に分類できるこを発見した。
 18 世紀中ごろには,オランダのライデン大学でミュッセンブルークにより,大量の電気エネルギーを蓄えられるライデン瓶が発明され,これを用いてイギリスの物理学者ワトソンが,ベンジャミン・フランクリンとは別に静電気の正電荷と負電荷の間の放電が電流に等しいことを発見した。アメリカ合衆国の物理学者ベンジャミン・フランクリンは,ライデン瓶と凧を用いた実験で,雷が電気であること,雷の電気はプラスとマイナスの両方の極性があることなどを発見したといわれている。
 18 世紀後半では,イギリスの物理学者キャヴェンディッシュは荷電粒子間に働く力の研究を行い,独自に後のクーロンの法則,オームの法則に匹敵する発見をしているが,未公表のため発見者としての栄誉は受けていない。フランスの物理学者シャルル・ド・クーロンは,帯電した物体間に働く力の測定からクーロンの法則( Coulomb’s Low )として定式化した。イタリアの物理学者ボルタは,静電発電機(摩擦起電機)より安定的に動作する電源として,亜鉛と銅を交互に重ねたボルタ電堆,ボルタ電池を発明した。
 19 世紀
 次に例示するように,電磁気学の基礎となる発見や発明が多くなされた。
 デンマークの物理学者,化学者のエルステッドによる電流の磁気作用の発見
 フランスの物理学者アンペールによる電流の磁気作用の定式化(アンペールの法則
 フランスの物理学者ビオとサバールによる電流とその周囲に形成される磁場の関係の定式化(ビオ・サバールの法則
 イギリスの化学者,物理学者ファラデーによる電動機の発明,電磁誘導現象の発見,
 イギリスの理論物理学者マクスウェルによる電磁波の存在の予測,電気と磁気(と光)の関係の定式化(マクスウェルの方程式)による古典電磁気学の確立
 ドイツの物理学者ゲオルク・オームによる電気回路の数学的解析(オームの法則など)
 ドイツの物理学者グスタフ・キルヒホフによる電気回路や放射エネルギーに関するキルヒホッフの法則の発見
 オーストリア(⇒アメリカ合衆国)の発明家ニコラ・テスラによる交流を応用した電気機器(誘導モータ,テスラコイルほか)の発明

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 【電気・電荷とは】

 電気(electricity)
 電荷の移動相互作用によって発生するさまざまな物理現象の総称である。
 Electricity の語源は,古代ギリシア人が,琥珀をこすると発生するもの(静電気)を,古典ラテン語で「琥珀のような」と命名したことが起源といわれている。
 電気の語源は,アメリカ合衆国の政治家,物理学者ベンジャミン・フランクリン(1705 ~ 1790 年)の雷の研究成果に因んで,Electricityを中国語で「雷電之気」と翻訳し,この略語「電気」が起源といわれている。
 なお,日本では江戸時代中期以降しばらくの間は,平賀源内(1728 ~ 1780年)が復元した摩擦起電器に因んで「エレキテル」と呼ばれていた。
 
 電荷(electric charge)
 素粒子(elementary particle)の持つ性質の一つである。電荷の量電気量(quantity of electricity)電荷量(quantity of electric charge , charge quantity)という。
 なお,電気量や,電荷を持つ粒子そのものを電荷と称する文献,参考書,解説なども少なくなくない。
 電荷を持つ粒子(電子や陽子など)を荷電粒子(charged particle),大きさを無視できる理想化された荷電粒子を点電荷(point charge)という。
 
 電流(electric current)
 単位時間当たりにある面を通過する電荷の量(電気量と定義される。電流の国際単位系の単位( SI 単位)としてアンペア(A)が用いられる。アンペアは SI 基本単位で,電流の定義から,電荷の量は,電流(A)を時間(s)で積分したものなので,電荷の単位クーロン(C)は, SI 組み立て単位 C = A・s となる。
 
 電気量は原子的な最小の単位量をもち,この単位量を電気素量(elementary charge)あるいは素電荷(elementary charge)と呼ばれ,記号 e で表わす。例えば,電子の電荷は -e ,陽子の電荷は +e である。

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 【電気素量】

 電気素量(elementary charge)は,素電荷,電荷素量とも呼ばれ,電気量の単位となる物理定数である。陽子又は陽電子 1 個の電荷に等しい。これは,電子の電荷の符号を変えた量でもある。
 一般的には,記号 e で表され,CODATA(科学技術データ委員会: Committee on Data for Science and Technology)の2014年の推奨値は e = 1.6021766208(98)×10−19 C(クーロン)で与えられる。
 
 電気素量の計測
 電気素量を求める試みは,19世紀末にジョン・タウンゼントの実験(電気分解で生じた気体イオンの測定),J.J.トムソンの実験(イオン化した水蒸気を用いた測定),20世紀初頭のミリカンの実験(油滴を使ったミリカンの油滴実験)が知られる。
 ミリカンの油滴実験とは,ミリカンとフレッチャーらが,電子の電荷(電気素量)を測定するため,二枚の金属電極間で帯電させた油滴が静止する重力と釣り合う電極間の電場の強さを測定する実験である。
 この実験で,測定値がある特定値(電子 1 この持つ電荷)の整数倍になることが見出され,ミリカンはこの電荷を 1.592×10−19 C と見積もった。
 この実験値は,空気の粘度による誤差を含むため,推奨値 1.6021766208×10−19 C よりわずかに低い値である。
 
 素粒子と電荷
 電荷は,基本粒子(fundamental particle)ともいわれる素粒子(elementary particle)の持つ性質の一つである。
 素粒子は,物質を構成する最も基本的,かつ要素的な粒子をいい,フェルミ統計に従うフェルミ粒子(fermion;フェルミオン,ボース統計に従うボース粒子(boson;ボゾンに大別される。
 フェミオン(fermion)は,強い相互作用で陽子や中性子などのハドロン(hadron;強い相互作用で結びついた複合粒子のグループ)の構成要素であるクォーク,強い相互作用をしないレプトンに分けられる。
 クォーク(quark)には,電荷+2/3 e を持つ 3 種の上系列クォーク(アップ〈u〉,チャーム〈c〉,トップ〈t〉),電荷‐1/3 e を持つ 3 種の下系列クォーク(ダウン〈d〉,ストレンジ〈s〉,ボトム〈b〉)がある。
 レプトン(lepton)には,電荷‐e を持つ 3 種の荷電レプトン(電子,μ粒子,τ粒子),電荷を持たない 3 種のニュートリノ(電子ニュートリノ,μニュートリノ,τニュートリノ)がある。
 ボゾン(boson)には,素粒子間の相互作用(力)を媒介するゲージボソン(gauge boson),素粒子に質量を与えるヒッグスボゾン(Higgs boson)がある。ゲージボゾンには,電磁相互作用を媒介する光子,強い相互作用を媒介するグルーオン,弱い相互作用を媒介するウィークボソン,重力を媒介する重力子がある。
 
 電子,陽子,中性子の電荷
 電子(electron)は,荷電レプトンのため,電荷‐e を持つ。
 原子核を構成する陽子(proton)ハドロンは,電荷を持つ 2 つのアップクォークと 1 つのダウンクォークで構成(uud)されるので,電荷は,+e(= 2/3e + 2/3e – 1/3e )となる。
 中性子(neutron)ハドロンは,電荷を持つ 1 つのアップクォークと 2 つのダウンクォークで構成(udd)されるので,電荷は,0 e(= 2/3e - 1/3e – 1/3e )となる。

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 【電荷保存則】

 電荷を正,負の2種に分類し,それぞれ正電荷(positive charge)負電荷(negative charge)などといい。等量の正電荷と負電荷により全体として電荷のない状態を電気的に中性であるという。
 電気的に中性の状態の物質から摩擦により正電荷又は負電荷の一方が除かれると,当量の反対電荷が残り,物質に電荷が発生した状態になる。
 
 一般に,閉じた系においては電荷の代数和は一定であるという電荷保存則(principle of conservation of charge)が成り立つ。
 電荷保存則は,電気量保存の法則ともいい,確認できる全ての反応(化学反応,原子核反応,粒子の崩壊・対生成・対消滅など)で電荷が保存されない事例が発見されていないという経験的事実から導き出された“電荷の総量は永遠に変わらない → 閉じた系の正・負の電荷の代数和は常に一定”という法則である。

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 【磁気(磁性)とは】

 磁気(magnetism)は,磁性(magnetism)ともいい,磁石に特有な他の物質に対して引力や斥力を及ぼす物理的性質である。なお,物理学では,磁気より磁性が広く用いられる用語である。
 Magnetism の語源は,古代ギリシアのマグネシア地方に産する鉱石が鉄片をひきつけるという奇妙な性質をもっていたので,これがマグネット(magnet :磁石)と呼ばれ,その性質について命名されたといわれている。
 磁石は,中国で磁鉄鉱が釘を吸着する様子から,慈しんで抱く石から慈石と呼ばれ,後に,磁石になったといわれている。
 
 磁性は,電流の中の電子の運動(電磁気や量子力学的な電子の軌道運動やスピンで生じる。磁性の強さは,原子を構成する電子,原子核の磁気モーメント(magnetic moment)によって特徴づけられるが,電気の電荷に相当する磁荷は未だに発見されていない。
 
 磁性の一般的な分類には,物質自身が容易に磁石となりうる鉄鋼,磁鉄鉱などの性質を強磁性(ferromagnetism)といい,銅,アルミニウム,一般的な気体,合成樹脂などの磁場の影響が無視できる物質の性質を非磁性体(nonmagnetism)という。
 磁石を近づけたとき,磁気力の方向と平行な磁化を生じる性質を常磁性(paramagnetism),反対方向に磁化する性質を反磁性(diamagnetism)という。

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 【磁気関連の用語】

 電磁気(electromagnetism)
 電流によって起きる磁気をいう。電気と磁気に関する現象を扱う物理学を電磁気学といい,マクスウェルの方程式(Maxwell's equations)で記述される。
 マクスウェルの方程式は,電磁方程式ともいわれ,イギリスの物理学者マクスウェルが見出した電磁場の時間的・空間的変化を記述する古典電磁気学の基礎方程式である。
 マクスウェルの方程式は,磁場に関するガウスの法則磁束保存の式),ファラデーの電磁誘導の法則ファラデー・マクスウェルの式),電流の磁気作用についてのアンペールの法則アンペール・マクスウェルの式)および電場に関するガウスの法則マクスウェル・ガウスの式)の四つの微分方程式からなる。
 
 磁場(magnetic field)
 電気的現象・磁気的現象を記述するための物理的概念で,工学分野では磁界ともいう。磁場は,磁気力の作用する空間で大きさと方向を持つベクトル場である。一般的には,磁石または電流によって作られる。
 
 磁気力(magnetic force)
 磁力ともいわれ,電荷の運動によって引き起こされる基本的な力で,同種の磁極では退け合い,異種の磁極では引き合う力が働く。
 
 磁気モーメント(magnetic moment)
 磁気能率ともいわれ,磁石の強さ(磁気力の大きさ)とその向きを表すベクトル量である。
 
 磁極(magnetic pole)
 磁石の強磁性体を引き付ける性能の最も強い点をいう。磁石は必ず1対の磁極をもち,それぞれ正極・負極という。
 地球磁場では,北に引かれるほうを正極(N極,北極),南に引かれるほうを負極(S極,南極)とする。
 
 磁石(magnet)
 一般にはマグネットともいい,二つの極(磁極を持ち,双極性の磁場を発生させる物体をいう。
 必ず二つの極が対になって磁石を構成するため,永久磁石を半分に切っても一方の極のみを持つ磁石を得ることはできず,二つの極を持つ二つの小さな磁石になる。
 しかし,一つの磁石の磁極が一組の場合とは限らず,多数の磁極を持つ磁石(多極磁石)もある。 外部から磁場や電流の供給を受けることなく、磁石としての性質を比較的長期にわたって保持し続ける物体を永久磁石(permanent magnet)といい,コイルに通電することで磁力を発生させる磁石を電磁石(electromagnet)という。
 
 通常の電磁石は,磁性材料を芯として,そのまわりにコイルを巻いたものが多い。電磁石のメリットには,永久磁石より強い磁力が得られること,磁力の制御(磁極の反転など)が容易な点が挙げられる。ディメリットとしては,通電と電力維持のための装置を必要とすることが挙げられる。
 
 実用の永久磁石には,アルニコ磁石(アルミニウム,ニッケル,コバルトなどを原料とする磁石),フェライト磁石(酸化鉄を主原料にした酸化物磁石),サマリウムコバルト磁石(原子番号 62 サマリウムとコバルトを原料とする磁石),セリウムコバルト磁石(原子番号 58 セリウムとコバルトを原料とする磁石),ネオジム磁石(原子番号 60 ネオジム,鉄,ホウ素を主成分とする希土類磁石),プラセオジム磁石(原子番号 59 プラセオジムを主成分とする希土類磁石),ネオジウム・鉄・ボロン磁石,サマリウム窒素鉄磁石,強磁性窒化鉄,白金磁石(白金を主成分とし,鉄,ニオブ,コバルトなどを加えた化学的に安定で人体への影響の少ない磁石)などがある。
 なお,工業的に重要な硬質磁性材料(永久磁石)の基本的磁気特性の最小値及び公称値並びに寸法公差などは,JIS C2502「永久磁石材料:Materials for permanent magnet 」に規定されている。

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