物 理 (物理学のあゆみ)

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 ここでは,物理学のはじまりと主な分野の変遷を, 【物理学のはじまり】【古典力学】【電磁気学】【相対性理論】【量子力学】【流体力学】【熱力学】に項目を分けて紹介する。

【物理学のはじまり】

 物理学をはじめ,化学,生物学,地学などいわゆる理学の基礎となる自然の論理的な理解への探求は,紀元前400年~300年頃に,師弟関係のソクラテス・プラトン・アリストテレス(万学の祖)らの哲学(philosophy)が学問(自然哲学;philosophy of nature)として大きく発展したが,その基礎となる自然哲学は,紀元前650年頃から480年頃のソクラテス以前の哲学者(タレス,ピタゴラス,レウキッポス,デモクリトスなど)によって始められている。
 
 プラトンの弟子のアリストテレスは,物理現象の観察が自然法則の発見につながるという考えで『自然学』を著した。その後の自然哲学の学問分野としての発展に寄与したため,アリストテレスは万学の粗といわれるようになった。紀元前250年頃には,アルキメデスが流体静力学,静力学の基礎を作った。
 その後のヨーロッパでは,自然学や神学などを統合したスコラ哲学(scholasticism)により,宗教と矛盾しない限りにおいて,物理現象を説明する際の基礎として古来の自然学を用いていたため,自然科学の研究に正当な意味を見いだせず,発展が遅々として進まない時代が続いた。
 
 17世紀には,ニコラウス・コペルニクスは,太陽,地球,月,惑星の相対運動を数学的に分析し,当時主流だった地球中心説(天動説を覆し,天文学史上最も重要な発見とされる太陽中心説(地動説を唱えた。このように,それまで軽視されていた数学的記述に関し,ガリレオ・ガリレイが中心になり,物理学や天文学に数学的な記述を適用し,運動の特徴を正確に,一般化して表現する活動が広まった。なお,ガリレオ・ガリレイは,数学的記述の他に,実験に基づいた新しい自然哲学の伝統をも樹立した。
 同時期に,フランスの哲学者ルネ・デカルトは実験哲学に多くの影響を受け,これまでのスコラ哲学における感覚を通しての解釈を疑問視し,知覚される現象を「微粒子」の見えない運動に帰着させようと試みた。デカルトによる運動の数学的な記述は,ホイヘンスライプニッツに引き継がれた。
 しかし,1687年に,アイザック・ニュートンは,宇宙のすべての運動に対し,「自然哲学の数学的諸原理」(宇宙の全ての運動を一連の基本的な数学的原理で説明する方法)を出版し,基本原理を運動の3法則万有引力として紹介した。

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 【古典力学】

 古典力学(classical mechanics)とは,相対論的力学や量子力学が出現する以前のニュートンの運動の法則を基本原理とするニュートン力学,解析力学(数理解析)の総称である。
 光の速度に比べて遅い速度で動く巨視的な物体の運動を論じるのに有効な力学である。
 
 ニュートン力学( Newtonian mechanics )
 アイザック・ニュートンが構築した力学の体系である。なお,ニュートン力学は,アインシュタインの相対性理論や量子力学などと対比するために命名されたものである。
 静止物体に働く力の釣り合いを扱う静力学は,ギリシア時代から知識が蓄積されていたが,ニュートン力学(運動の法則)により,物体の運動について調べる動力学の確立に寄与した。
 ニュートンの力学は,ベルヌーイ,オイラー,モーペルテュイ,ダランベール,ラグランジュ,ラプラス,コリオリ,ハミルトンなど数多くの数学者や物理学者により今日の古典力学体系にまとめられてきた。
 
 解析力学(analytical mechanics)
 物理学の一分野で,ニュートンの運動の法則に基づく力学を,個々の実例を離れ,より一般的な形式にまとめたもので,18世紀後半から19世紀にかけてラグランジュ,ハミルトン,ヤコビらによって展開された。

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 【電磁気学】

 電磁気学(electromagnetism)とは,電気および磁気に関する現象を扱う物理学の一分野であるが,力学と共に古典物理学の中心的位置を占める。
 
 18世紀までは,電気学と磁気学は別の学問であった。エルステッドが1820年に電流の磁気作用の発見し,1831年にファラデー電磁誘導(electromagnetic induction)を発見し,マクスウェルがファラデーの電磁場理論をもとに,1864年にマクスウェルの方程式を導いて電気学と磁気学を統合した古典電磁気学を確立した。

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 【相対性理論】

 相対性理論(relativity theory)とは,相対論とも呼ばれ,量子力学と並んで現代物理学の基礎となるアインシュタインによって確立された理論で,相対性原理の要請を満たす物理理論をいう。
 相対性原理(principle of relativity)とは,ある範囲の座標系がすべて物理的に同等であって,これらのどの座標系でも物理法則はまったく同形でなければならないという要請をいう。
 
 電磁気学が19世紀に発展し,電磁気学とガリレイの相対性原理に従うニュートン力学とが互いに矛盾することが問題となった。
 その後,20 世紀初頭までに,ヘルツ,フィッツジェラルド,ローレンツ,アインシュタインらの成果から,マクスウェルの理論の正当性が検証された。
 これを受けて,ニュートン力学は,ガリレイの相対性原理ではなくアインシュタインの相対性原理を基礎とする新しい力学(特殊相対性理論に修正された。
 
 ガリレイの相対性原理(Galilean principle of relativity)とは,二つの慣性座標系間で,時間と座標がガリレイ変換で関係づけられ,物理法則がガリレイ変換で変化しないという要請をいう。
 ニュートン力学の諸法則(方程式)はガリレイの相対性原理の要請を満足している。
 ガリレイ変換(Galilean transformation)とは,一つの慣性系で記述された速度・加速度などの物理量や物理法則を他の等速相対運動する慣性系の記述に移すことをいう。
 特殊相対性理論(special relativity)とは,アインシュタインが 1905年に発表した基礎理論で,光速度がすべての観測者に対して不変であることと相対性原理に基づき,互いに等速度運動する慣性系に対して,電磁気学を含むすべての物理法則が同じ形で成立することを定式化したもの。

 特殊相対性理論の後の 1915年に一般相対性理論が発表された。一般相対性理論までに完成された力学は古典力学と呼ばれ,1920年代に成立した量子力学と区別される。
 一般相対性理論(general theory of relativity)とは,等価原理と相対性原理に基づいて,互いに加速度運動する加速系を含む全座標系に対し,すべての物理法則が同じ形で成立することを定式化したもので,万有引力の現象の説明が可能になった。

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 【量子力学】

 量子力学(Quantum mechanics)とは,分子,原子,原子核,素粒子などの微視的な系の物理現象を扱う力学(理論体系)である。
 
 量子力学は,1900年に,マックス・プランクによって導入された量子説(放射公式)に始まるといわれている。量子説では,ニュートン力学,マクスウェルの電磁理論を用い,光電効果,コンプトン効果,原子構造,スペクトルなどを解明しているが,多くの矛盾を含んでいた。
 アインシュタインが放射公式を分析し,光に波動性と粒子性の二つを同時に付与したことになっていることを示すとともに,光のエネルギー量子(光量子仮説を提唱した。
 
 ボーアは,古典力学から得られる水素原子の電子軌道のうち,現実の軌道として可能なものを選択する条件(量子条件,光放出のメカニズム)を導入した。
 1923年に,ド・ブローイは電子もまた波動性をもつべきことを予見した。
 1925年に,ハイゼンベルクが,1913年のボーアの理論をもとに,新しい力学に作り変えたのが量子力学の誕生と考えられている。
 1926年には,シュレーディンガーの提案した波動力学(wave mechanics)により,矛盾のない量子理論を展開し,量子力学の基礎が確立した。

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 【流体力学】

 流体力学(hydrodynamics)とは,気体や液体のように,少しの力を加えると容易に変形する流体(fluid)の静止・運動状態,他の物体へ及ぼす力などを論じる物理学の一部門で,静止状態を取扱う流体静力学と,運動を扱う流体動力学がある。
 
 流体静力学(hydrostatics)は,古代ギリシャのアルキメデスの「アルキメデスの原理」の発見,1653年のパスカルによる「パスカルの原理」の発見,ボイルらによる「ボイルの法則(ボイル・マリオットの法則)」提唱で完成の域に達した。
 
 流体動力学(hydrokinetics)は,流体静力学より後に登場し,ニュートン力学の流体への適用により進展した。18世紀の段階ではベルヌーイ,オイラー,ラグランジュらにより完全流体(粘性の無い流体)が研究され,次いで,19世紀にナビエ,ストークスらにより粘性流体の研究,19世紀末にはレイノルズによって乱流が研究された。
 20世紀の初めには,プラントルの境界層理論により現代流体力学の基礎が確立された。

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 【熱力学】

 熱力学(thermodynamics)とは,熱や物質の輸送現象やそれに伴う力学的な仕事について,エネルギー,温度,エントロピー,圧力,体積,物質量(分子数),化学ポテンシャルなどの巨視的な物理量を用いて記述する学問で,平衡系の熱力学(equilibrium thermodynamics)非平衡系の熱力学(non-equilibrium thermodynamics)とに大別される
 
 18世紀後半から19世紀に,気体の性質について研究され,19世紀初めにボイル=シャルルの法則(理想気体の性質)としてまとめられた。なお,1662年にロバート・ボイルによって発表されたボイルの法則ジャック・シャルルにより 1787年頃に発見されていたが未発表のシャルルの法則を 1802年にゲイ=リュサックが発表することでまとめることができた。
 1820年代には,カルノーが熱機関の科学的研究を目的としてカルノーサイクルによる研究を行うことで,本格的な熱力学の研究が始まった。
 
 マイヤー,ヘルムホルツ,ジュールにより,熱もエネルギーの一種であることが発見され,熱力学の第一歩が踏み出された。
 熱をエネルギーの一形態と捉えた熱力学の第一法則(エネルギー保存則)をはじめて提唱したのはマイヤーである。彼の論文は1842年に発表されたが全く注目されなかった。しかしほぼ同時期にジュールが行った同様の研究はトムソン(ケルビン卿の知るところとなり、彼らの共同研究から第一法則が明らかにされた。
 さらにトムソンカルノーの研究を知り,絶対温度熱力学(的)温度の概念および熱力学第二法則に到達した。クラウジウスも独立に第一および第二法則に到達し,カルノーサイクルの数学的解析からエントロピーの概念の重要性を明らかにし,1850年代には両法則が確立された。
 
 19世紀後半には,ヘルムホルツにより自由エネルギーギブズにより化学ポテンシャルが導入され,化学平衡などを含む広い範囲の現象を熱力学で論じることが可能になった。
 一方,ボルツマン,マクスウェル,ギブズにより,分子論の立場から熱力学的なマクロの現象を説明する理論(統計力学が創始された。

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