物 理 波(光学とは)

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 ここでは,最も身近な光(電磁波)の基本特性に関し, 【光学とは】【光関連の基礎用語】【幾何光学関連の基礎用語】【物理光学関連の基礎用語】に項目を分けて紹介する。

【光学とは】

 (light)は,一般的には,人間の眼を刺激し,視覚(vision)を与えるものをいうが,物理では,電磁波(electromagnetic wave)としての性質をもつことから,紫外線(ultraviolet rays)や赤外線(infrared rays)のように眼に見えない波長の電磁波まで含めて光ということが多く,場合によっては,短波長の X 線やγ線などを含めて光と呼ぶこともある。
 光の本性,すなわち電磁波の特徴などの詳細については,別途【電磁波とは】で紹介する。
 ここでは,光を代表とする電磁波の波としての特性である屈折,反射,干渉,回折などの光学について紹介する。
 
 光学とは
 光学(optics)は,伝統的な物理教育の体系の一つで,光に関する現象を扱う物理学である。
 光学には,光の伝播を光線という概念でとらえ,光線の反射,屈折,結像などを論じる幾何光学と,光を波動ととらえ,波動の干渉,回折,偏光,分散などを論じる物理光学とに大別される。
 さらに,光学現象を電磁波の基本方程式であるマクスウェル方程式を用いて研究する電磁光学(electromagnetic theory of light),波動光学(wave optics),結晶による光の複屈折や旋光などを扱う結晶光学(crystal optics),光の放射や吸収のメカニズムを扱う分光学(spectroscopy),原子と光の相互作用を扱う量子光学(quantum optics),視覚に及ぼす効果を扱う色彩学(color science)や生理光学(physiological optics)などの分類もある。
 
 幾何光学とは
 幾何光学(geometrical optics)は,光伝播を光線という概念で捕え,直進性,反射,屈折など光線の経路を幾何学的に論じる分野である。すなわち,干渉や回折などの波動的現象を考えず,光線は一様で,媒質内では直線をなして進むと考える。
 鏡やレンズなどで構成される光学系(optical system),光学器械の設計に応用される。
 
 物理(波動)光学とは
 物理光学(physical optics)は,波動光学ともいい,光を波動性に着目した光波という概念で捕え,光波の伝搬,干渉,回折,分散,散乱,放射,吸収など光と物質との相互作用などを論じる分野である。
 光を光線とみなせる現象では幾何光学で論じるのが簡便であるが,結晶光学,電磁光学,光物性学などは波動性に注目した分野である。
 光学器械の性能向上,光ファイバー,フォトニック結晶,レーザー光の伝播,光の量子性を利用したデバイスや情報伝達手段などの開発に活用される。

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 【光関連の基礎用語】

 波長(周波数)の領域別に光の名称が分類されている。
 例えば,波長 380 ~750 nm の光は可視光と呼ばれ,紫外線と呼ばれる光の波長は 10 ~380 nm ,赤外線は波長 380 nm ~15 μm 程度の光をいう。
 
 JIS Z 8120 「光学用語: Glossary of optical terms 」とJIS Z 8105 「色に関する用語: Glossary of colour terms 」における主な用語の定義を次に紹介する。
 ( light )JIS Z 8120,JIS Z 8105
 1. 知覚(的)光( (perceived) light ):視覚系に特有な知覚及び感覚の普遍的で本質的な属性。
 2. 可視放射( visible radiation ):人の目に入って,直接に,視感覚を起こすことができる光学放射。
 光波(light wave)JIS Z 8120
 光という用語を用いる場合に,特に波動性を強調する必要があるときに用いる用語。
 光学系(optical system)JIS Z 8120
 物体の結像などを行うため,反射面,屈折面などを,光軸を基準として配列したもの。
 光子,光量子( photon )JIS Z 8120
 放射エネルギーの素量(量子)。その値はプランク定数 h と放射の周波数 ν の積に等しい。フォトンともいう。
 光線(ray of light)JIS Z 8120
 幾何光学で,光のエネルギーの伝搬経路を表す線。
 可視放射,可視光,可視光線( visible radiation , light )JIS Z 8120
 目に入って,視感覚を起こすことができる放射。 光線という概念で用いる場合は可視光線という。一般に可視放射の波長範囲の短波長限界は 360 ~ 400 nm ,長波長限界は 760 ~ 830 nm にあると考えてよい。
 白色光( white light )JIS Z 8120
 肉眼で白色に見える放射。 通常連続スペクトルから成る。
 波長( wavelength )JIS Z 8120
 光波の隣り合う同位相の 2 点間を伝搬方向にはかった距離。平面波の場合,λ=υ/νである。ここに,λ(ラムダ)は媒質中の波長,υ(イプシロン)は媒質中での位相速度,ν(ニュー)は周波数である。
 波数( wave number )JIS Z 8120
 a ) 単位長さに含まれる波の数で,波長の逆数。
 b ) 2πを波長で除した値。量記号κ(カッパ)で表す。
 周波数( frequency )JIS Z 8120
 時間当たりの光の振動数。 周波数に 2 π(パイ)を乗じたものを角周波数という。
 光路長( optical path length )JIS Z 8120
 屈折率 n の媒質において,光の進む道筋の長さ l ,その道筋に沿った媒質の屈折率 n との積。光学距離ともいう。
 反射( reflection )JIS Z 8120,JIS Z 8105
 放射が,その単色放射成分の周波数を変えることなく,ある表面又はある媒質によって戻される過程。
 全反射( total reflection )JIS Z 8120
 屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質へ光が入射するとき,特定の角以上の入射角で,入射光のエネルギーがすべて反射される現象。
 拡散,散乱( diffusion , scattering )JIS Z 8105
 放射ビームが,その単色放射成分の周波数を変えることなく,ある表面又はある媒質によって多くの方向に散らされて,その方向分布を変える過程。
 屈折( refraction )JIS Z 8120
 光がその単色光成分の周波数を変えずに光学的に不均質な媒質中を進むとき,又は異種の媒質間の境界面に入射するとき,位相速度の変化に応じて伝搬方向が変わる現象。
 透過( transmission )JIS Z 8120,JIS Z 8105
 光がその単色光成分の周波数を変えずに媒質を通過する現象。
 吸収( absorption )JIS Z 8120
 放射エネルギーが物質との相互作用によって他の種類のエネルギーに変換する現象。
 光の強度( intensity of light )JIS Z 8120
 光波が媒質の中を伝搬する場合,エネルギーが流れる方向に垂直な単位面積を単位時間に通過するエネルギーの時間平均値。光波の振幅の二乗に比例する。
 スペクトル[光の]( spectrum )JIS Z 8120
 光を単色光成分に分解して波長の順に並べたもの,又はそれを表示したもの。
 光束( luminous flux )JIS Z 8120
 放射束を CIE 標準分光視感効率と最大視感効果度に基づいて評価した量。 量記号:Φv ,単位:ルーメン ( lm )
 光量( quantity of light )JIS Z 8120
 光束の時間積分値。量記号:Qv ,単位:ルーメン秒 ( lm・s )

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 【幾何光学関連の基本用語】

 幾何光学に関連する主な用語を JIS Z 8120 「光学用語 」より抜粋し以下に示す。
 物点(object point)
 物体空間における物体の一点。これは理想的な点光源とみなされる。
 像点(image point)
 光学系の物点から出る共心光線束が,像空間において収束する点,又は共心光線束を光線の進む方向と反対の方向に延長したとき像空間において収束する点。
 像面(image surface)
 a) 光学系の物体面から出る共心光線束によって像が生じる面。すなわち,物体面と共役な面。
 b) 像空間において像を表す面。通常は平面で表す。
 像空間(image space)
 光学系の結像において,光線が入射する側の空間(屈折率 n)と,射出する側の空間(屈折率 n')とを考えるとき,屈折率 n'を用いて表される空間。
 実像(real image)
 光学系の射出面から出た収束光線束が,像空間で結ぶ像。
 虚像(virtual image)
 光学系の射出面から出た発散光線束が,像空間で結ぶ像。
 収束光線束(convergent pencil of rays)
 一点に向かって収束する光線束。
 発散光線束(divergent pencil of rays)
 一点から発散する光線束。
 
 収差(aberration)
 光学系によって結像する場合,像の理想像からの幾何光学的なずれ。球面収差,コマ収差,非点収差,像面の湾曲,ディストーション,色収差などがある。
 波面収差(wavefront aberration, wave aberration)
 光学系を通過した波面の理想波面からのずれ。
 球面収差(spherical aberration)
 光軸上の一点から出る光線が光学系に入射する場合,入射点の光軸からの距離によって,光線が光軸と交わる位置が異なる収差。
 コマ収差(coma, comatic aberration)
 光学系の軸外物点から出た光線束による軸外像点が一点に集まらず,かつ,サジタル平面に対して非対称になる収差。
 非点収差(astigmatism)
 光学系の軸外物点から出た光線束による軸外像点が一点に集まらず,かつ,サジタル像点とメリジオナル像点が一致しない収差。
 像面湾曲(curvature of field)
 平面の物体の像面が湾曲する収差。
 デイストーション(distortion)
 横倍率が像の大きさによって異なる収差。
 色収差(chromatic aberration)
 光学系によって結像する場合,光の波長によって,像の位置及び倍率が異なる収差。前者を軸上色収差といい,後者を倍率色収差という。

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 【物理光学関連の基礎用語】

 物理光学に関連する基礎用語を JIS Z 8120 「光学用語 」より抜粋し以下に示す。
 干渉(interference)
 二つ以上の光波が同一点で重なりあって互いに強め合い,又は弱め合う現象。
 コヒーレンス度(degree of coherence , coherence factor)
 光波の干渉性の度合いを表す量。コヒーレンス度は |γ| は 0≦|γ|≦1 である。
 干渉性(coherence)
 互いに干渉することができる光波の性質。 この場合,コヒーレンス度 |γ| は,|γ| ≒ 1 である。
 非干渉性(incoherence)
 互いに干渉しない光波の性質。この場合,コヒーレンス度 |γ| は,|γ|=0 である。
 部分干渉性(partial coherence )
 干渉性と非干渉性との中間の光波の性質。 この場合,コヒーレンス度 |γ| は,0<|γ|<1 である。
 干渉じま(interference fringes)
 光の干渉によって生じる明暗の(又は色のついた)しま。
 
 回折(diffraction)
 a) 光が物体に当たったとき,直進せずに広がって進み,物体の影の部分にも光が回りこむ現象。
 b) 強度が断面内で一様でない光束において,光線が直進せずに広がって進む現象。
 フレネル回折(Fresnel diffraction)
 物体に近い空間で観測される回折。 物体の直径を D とするとき,観測点と物体との距離が波長λに比べて十分大きく,かつ,D2/λより小さい空間での回折をいう。
 フラウンホーファー回折(Fraunhoffer diffraction)
 物体から十分遠方の空間で観測される回折。物体からの光波が凸レンズを通過した後,その焦点面上に作る像として観測することができる。
 ラマン・ナス回折(Raman-Nath diffraction)
 薄い回折格子で観測される回折。 任意の入射角に対して複数次数の回折が観測され る。
 ブラッグ回折(Bragg diffraction)
 厚い回折格子において,特定の入射角で特定の方向に観測される高い効率の回折。
 回折角(angle of diffraction)
 回折光線が回折格子の面の法線となす角(鋭角)。
 回折次数(diffraction order)
 回折格子の隣り合う格子点からの回折光波の光路差を波長で除した値(正又は負の整数値)。この値が m のとき,回折光を m 次の回折光という。
 回折格子(diffraction grating)
 光の回折を利用してスペクトルを得るために用いる光学素子。平面格子,凹面格子などがある。
 ホログラフィック回折格子(holographic grating)
 レーザ光の干渉を用いて製作した回折格子。
 ブレーズ波長(blazed wavelength)
 回折格子において回折効率が最大になる波長。
 回折効率(diffraction efficiency)
 回折格子において,特定次数の回折光(普通は 1 次の回折光)の強度と入射光の強度の比。一般に百分率 (%) で表す。
 
 分散(dispersion)
 a) 光が物質の中を伝搬する場合,光学的性質が波長によって異なる現象。
 b) 媒質の屈折率が放射の単色光成分の周波数に応じて異なる現象。
 分散度(degree of dispersion)
 分光器がスペクトルを分散する程度を表す量。光の波長をλとし,光が分散する方向をθ(λ) とすれば,分散度は dθ(λ) /dλで表される。
 散乱,拡散(scattering , diffusion)
 光が極めて小さい凹凸のある反射面に入射する場合,又は極めて小さい粒子を含む媒質の中を通過する場合に,光の進行方向が空間的に多くの方向に変わる現象。
 散乱角(scattering angle , diffusion angle)
 光の散乱において,散乱光の方向と入射光の進行方向とがなす角。
 ラマン散乱(Raman scattering)
 散乱光の周波数が入射光のそれとは異なっている散乱,すなわち,非弾性散乱。
 ブリルアン散乱(Brillouin scattering)
 物質中の音波によって生じる,光の周波数がわずかにずれる非弾性散乱。
 液体や固体の屈折率が熱振動の音波,すなわち,フォノンによって変化して,光に対する回折格子を形成するため,光がブラッグ条件を満たす方向に散乱される。
 
 偏光(polarized light)
 光波(電気ベクトル)の振動方向が規則的な光。 直線偏光,円偏光,だ円偏光がある。
 部分偏光(partially polarized light)
 偏光と自然光とからなる光。
 自然光(natural light)
 偏光特性が検出されない光。
 直線偏光(linearly polarized light , plane polarized light)
 光波(電気ベクトル)の振動方向が同一平面内に含まれる光。 平面偏光ともいう。
 円偏光(circularly polarized light)
 光の進行方向に正対する観測者から見た場合,光波(電気ベクトル)の振幅ベクトルの先端が円運動をするもの。右(左)回りのものを右(左)円偏光という。
 だ円偏光(elliptically polarized light)
 光の進行方向に正対する観測者から見た場合,光波(電気ベクトル)の振幅ベクトルの先端かだ円運動をするもの。 右(左)回りのものを右(左)だ円偏光という。
 偏光角(angle of polarization)
 屈折率 n の媒質から屈折率 n'の媒質に光が入射角θで入射するとき,θ= tan −1(n'/ n) の関係を満足する角θ。ブルースター角ともいう。
 偏光面(plane of polarization)
 直線偏光における電気ベクトルの振動面(偏波面)に垂直で光の進行方向を含む平面。
 備考 歴史的に偏光面は直線偏光の電気ベクトルの振動面ではなく,磁気ベクトルの振動面と定められている。
 旋光(rotatory polarization)
 媒質の中を直線偏光が進行するとき,偏光面が回転する現象。
 直交ニコル(crossed nicols , cross polarization)
 偏光子,検光子を透過する直線偏光の電気ベクトルの振動面が互いに垂直になるように配置した状態,又はこの状態における一組の偏光素子。
 平行ニコル(parallel nicols)
 偏光子,検光子を透過する直線偏光の電気ベクトルの振動面が互いに平行になるように配置した状態,又はこの状態における一組の偏光素子。
 
 放射(radiation)
 a) 電磁波(又は光子)によるエネルギーの放出又は伝搬。
 b) これらの電磁波(又は光子)。
 熱放射(themal radiation)
 物質の粒子(原子,分子,イオンなど)の熱じょう乱の結果生じる放射。
 ルミネセンス(luminescence)
 熱放射以外の放射で,放射,電気などのエネルギーを吸収して物質が励起状態となった後に,吸収したエネルギーを放射の形で放出する現象。 ルミネセンスには蛍光,りん光などがある。
 蛍光(fluorescence)
 励起後約 10−8s 以内しか持続しないルミネセンス。
 りん光(phosphorescene)
 励起後約 10−8s 以上持続するルミネセンス。
 
 吸収(absorption )
 放射エネルギーが物質との相互作用によって他の種類のエネルギーに変換する現象。
 吸収係数(absorption coefficient)
 媒質が光を吸収する程度を表す量。 次の式の中のα又はβをいう。
    I = I0e−αx = I010−βx
 ここに,I:透過光の強度,I0:入射光の強度,x:光が媒質を通過する距離
 吸収率(absorptance)
 物質によって吸収される光の放射束又は光束Φa と,物質に入射する放射束又は光束φi との比。φa/ φi 。一般に百分率 (%) で表す。
 光学濃度,吸光度(optical density , absorbance)
 物質が光を吸収する程度を表す量。単に濃度ともいう。次の式で表される。
    D = log10 (I0/ I)
 ここに,D:光学濃度,I0:入射光の強度,I:透過光又は反射光の強度

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