第一部:化学と物質構造・原子の構造

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 原子とは

国際原子力機関IAEA

 原子( atom )は,古代ギリシャの哲学者(レウキッポス,デモクリトスら)が提唱した分割不可能な存在としての哲学の概念として,近年まで実在を証明された対象ではなかった。
 1900年代の初めに,原子は,正電荷の粒子と負電荷の粒子の集まりであるらしいことが話題になり,多くの物理学者がその構造について考察した。
 日本では,1903年(明治36年)に,長岡半太郎が,正電荷を帯びた原子核を中央に置き,その周りを負電荷の電子が土星の輪のように,リング状に取り囲む土星型原子モデルを提唱している。
 実験的な検証に基づいたモデルとしては,1911年にアーネスト・ラザフォードがα線の散乱実験(原子核を発見)に基づいてラザフォードの原子モデルを発表した。
 これは,小さな中心核(すなわち原子核)に原子量の大部分と電荷が集中し,その周りを電子が回るモデルで,国際原子力機関の紋章のデザインにみられるような惑星モデルである。
 現在の原子モデルは,正の電荷を持つ陽子と電気的に中性な中性子から構成される原子核( atomic nucleus )が,ある空間の中央に点状で存在し,原子核のまわりに負の電荷を持つ電子( electron )が確率的に分布し,原子核を電子雲が包むモデルを用いている。

 原子構成要素の大きさ
 原子の大きさは,元素の種類で異なるが,概ねで直径 10-10m ( 1Å ,0.1nm ,10-4μm )である。
 原子を構成する原子核の直径は 10-15 ~ 10-14m と非常に小さい。電子については,大きさを持つのか判明していない。
 このように,原子の直径に比較して原子核が著しく小さく,例えば,太陽系の海王星の軌道を原子の大きさとすると,太陽では原子核より大きすぎる。原子のイメージは,太陽の代わりに木星を中心に置いた時の太陽系に近い。

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 【参考】
 長岡 半太郎( 1865~ 1950年)
 日本の物理学者,土星型原子モデル提唱などの業績がある。東京帝国大学教授,初代大阪帝国大学総長や帝国学士院院長などを歴任した。
 アーネスト・ラザフォード( Ernest Rutherford )( 1871 ~ 1937年)
 ニュージーランド出身の物理学者,化学者。マイケル・ファラデーと並び称される実験物理学の大家で,α線とβ線の発見,ラザフォード散乱による原子核の発見,原子核の人工変換などの業績により「原子物理学の父」と呼ばれる。1908 年にノーベル化学賞を受賞。
 国際原子力機関( IAEA : International Atomic Energy Agency )
 原子力の平和的利用の促進,原子力の軍事的利用への転用防止を目的とした国際連合傘下の自治機関である。
 1953 年のアメリカ合衆国大統領のドワイト・D・アイゼンハワーによる国際連合総会演説「平和のための核」を契機に 1957 年に創立された。オーストリアのウィーンに本部,トロントと東京に地域事務所,ニューヨークとジュネーヴに連絡室がある。
 電子軌道( electron orbital )
 当初の原子モデル(惑星モデル)では,電子の運動を“orbital”と考え,軌道と訳されているため,電車の軌道,衛星軌道などのように,一定の法則に従って運動するときの筋道と錯覚されるが,最新の原子モデルでは,electron(電子の)orbital(軌道のようなもの)は,電子の状態を波動関数(wave function)で表したもので,雲のように広がった連続的分布をしていると考えられている。この電子の分布は,電子雲(electron cloud)ともいわれる。

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