物理 第一部:物理学とは

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 ここでは,力を理解するための基本として, 【力の単位】【力の分類】【重力】【電磁気力】【弱い力・強い力】 に項目を分けて紹介する。

【力の単位】

 地球上の物体には,重力(gravity)をはじめ多くの力が働いている。物体の運動を理解するためには,物体に掛かる力を把握しなければならない。
 
 力の単位 N(ニュートン:newton)
 質量 1 kg の質点に力を加えて,加速度 1 ms‐2 を得た時の力を 1 N(=1 kg・ms‐2と定義される。
 1948 年に国際単位系( SI 単位)として N が採用されるまでは,力の単位として重量キログラム( kgf:kilogram-force,又は kgw:kilogram-weight )が用いられていた。
       1 kgf = 9.80619920 N(≒9.8 N )
 
 重量キログラムは,加速度に重力加速度 g (9.80619920 ms‐2 ≒ 9.8 N/kg)を用いているため,地上では感覚的に受け入れやすく,バネばかりなどによる重さ測定などの実用面でも受け入れやすい。このため,現在でもしばしば利用されている単位である。

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 【力の分類】

 ニュートン力学では,力を物体の運動量を変化させる原因として定義,特殊相対論により質量の変化が考慮されるようになり,力の概念が拡張された。
 この結果として,力は,古くからある重力(gravity)電磁気力(electromagnetic force)に加えて,原子核崩壊等の反応の分類から弱い力強い力の 2 種類が特定され,あらゆる自然現象はこの 4 種類の力の作用として説明標準理論:standard model)されている。現在は,自然界に存在する力は 4 種類しかないと言われている。
 
 物理学者は,4 つの力の統一を図り,1967年にアメリカのスティーブン・ワインバーグ,アブダス・サラムにより,統一理論といわれる電磁気力と弱い力を統一できるとした「電弱統一理論」(ワインバーグ=サラム理論)が発表された。その後,強い力を加えた大統一理論の確立に挑戦しているが未だに完成していない。
 
 実用上の力
 実生活に関わる実用上の力は,(重力場,電場,磁場)で説明される接触していなくとも作用する重力,電磁気力,物体の接触界面を通じて作用する垂直抗力(normal reaction),摩擦力(force of friction),張力(tension),弾性力(elastic force)などに分けられる。なお,接触界面を通じて作用する力は,電磁気力で説明される力で,基本的な力ではなく,便宜的に分類された力である。
 
 (field)は,界ともいわれ,存在がその近傍・周囲に連続的に影響を与えること,その影響を受けている状態にある空間をいう。
 
 【参考:基礎用語】

  • 万有引力の法則(law of universal gravitation)
      ニュートンは,太陽を公転する地球の運動や木星の衛星の運動の説明を試み,ケプラーの法則(Kepler's laws)に運動方程式を適用し,引力(重力)が 2 つの物体の質量(重力質量)に比例し,距離の 2 乗に反比例することを証明した。
     比例定数 G を万有引力定数(重力定数)といい, CODATA(科学技術データ委員会: Committee on Data for Science and Technology)の2014年の推奨値は,G = 6.674 08(31)×10-11(Nm2kg-2)である。
  • 重力加速度(gravitational acceleration)
      重力(gravity)で生じる加速度をいう。重力のみが作用する物体の運動は,等価原理により物体の質量によらない。なお,重力という場合は,一般的に,地球上の物体に作用する地球の万有引力を意味する。
     重力加速度の記号は,万有引力定数の記号 G と区別するため小文字の g が用いられる。重力加速度 g は,地球上の観測地点や地上からの距離で異なるが,一般的には,緯度 45度の海面上で,物体を自由落下させた時の値として定めた標準重力加速度(standard gravity) 9.80665 ± 0 m・s‐2 を用いる例が多い。
  • ニュートン力学( Newtonian mechanics )
      アイザック・ニュートンが構築した力学の体系である。なお,ニュートン力学は,アインシュタインの相対性理論や量子力学などと対比するために命名されたものである。
     ニュートン力学とは,「絶対時間」と「絶対空間」を前提とし,ニュートンの運動の法則(運動の第1法則,第2法則,第3法則),万有引力の法則など二体間に働く力を基礎とした力学体系で,古典力学(classical mechanics)ともいわれる。
  • 慣性力(inertial force)
      観測者が非慣性系にいる場合,ニュートンの運動方程式 と同様に扱うために,慣性系から観測した場合に見られる力(真の力)に加えて導入される,観測者自身の運動に依存する見かけの力(fictitious force)をいう。
     2 つの物体が接触している時,作用反作用の法則により,真の力に対し必ず反作用を伴う。しかし,慣性力には反作用が加えられる物体が存在しない。
     すなわち,反作用の存在により慣性力と真の力を区別できる。
  • クーロンの法則( Coulomb’s Low )
      フランスの物理学者シャルル・ド・クーロン(1736 ~ 1806年)が提案した電荷と磁荷に関する電磁気学の基本法則である。
     荷電粒子間(又は磁気を帯びた粒子間)に働く反発し,又は引き合う力が,それぞれの電荷(又は磁荷)の積に比例し,距離の2 乗に反比例(逆 2 乗の法則)する。
  • 放射性崩壊(radioactive decay)
      放射性崩壊は,α壊変とβ壊変に分けられる。γ線を放出する現象をγ崩壊というが,これは放射性崩壊ではない。
     α壊変( alpha decay :α崩壊ともいう) とは,原子核から放出される粒子がα粒子(ヘリウムの原子核)の放射性壊変をα壊変という。 この放射性壊変によって元の核種の原子番号は 2 減り,質量数は 4 減る。放出されるヘリウム原子核をα線と呼ぶ。
     β壊変( beta decay :β崩壊ともいう)とは,原子核がβ粒子(電子,又は陽電子)を放出,又は原子核が軌道電子を捕獲することによる核変換をβ壊変という。
     β壊変には,中性子が電子と反電子ニュートリノを放出して陽子になるβ壊変,陽子が陽電子と電子ニュートリノを放出して中性子になるβ壊変,陽子が核外電子(軌道電子)を捕獲し,電子ニュートリノを放出して中性子になる軌道電子捕獲の 3種類がある。
     なお,単にβ壊変といった場合は,β壊変を指す。

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 【重力】

 物体の静止・運動に関わらず,万有引力の法則(law of universal gravitation)に従い,物の重心方向に引力(attractive force , attraction)が発生する。
 古典力学で説明される重力(gravity)とは,他の質量から受ける引力と,物体の運動で生じる慣性力(inertial force , force of inertia;例えば遠心力)との合力である。
 
 地球表面の重力 FG は,地軸のまわりを等速円運動しているため,地軸に対して垂直に発生する慣性力(遠心力)と万有引力との合力となるが,一般的には, 質量 mG とその場所での重力加速度 g (9.80619920 m/s2 ≒ 9.8 N/kg)により,
       FGmG g
で表される。
 例えば,質量 10kg の物体の重力の大きさは,10 kgf ≒ 98 Nとなる。

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 【電磁気力】

 電磁相互作用(electromagnetic interaction)で発生する力を電磁気力(electromagnetic force)という。
 電磁相互作用は,実用面では,電気力(electric force)磁気力(magnetic force)に分けて取り扱われるが,学問上は電気力と磁気力を理論的に同じもので,電磁気力として統一的に扱われる。
 
 電磁相互作用(electromagnetic interaction)
 ゲージ場理論より,荷電粒子と電磁場(光子)の相互作用で,荷電粒子間に働く作用は光子によって伝搬されると説明される。電磁相互作用を媒介する光子を仮想光子と呼ぶ事もある。
 光子の質量がゼロのため,作用の到達距離は無限に長く,電荷(electric charge)を帯びた粒子間,及び磁気を帯びた粒子間の強度が距離の逆二乗に比例するとするクーロンの法則として定式化されている。
 
 電気力(electric force)
 荷電粒子間に働く力で,静電気力やクーロン力などともいわれ,同符号の電荷(electric charge)には斥力,異なる符号の電荷には引力が働く。
 電荷に関するクーロンの法則では,2 つの荷電粒子(電荷 q1 , q2 )の間に働く力の大きさ F は,電荷の積に比例し,粒子間の距離 rの二乗に反比例する。
       
 比例定数 k は,真空の誘電率 ε0 (= 8.854×10‐12 A2·s2·N‐1·m‐2)を用いて, k = (4πε0 ) ‐1(= 8.9876×109N・m2·A‐2·s‐2)と表される。
 
 磁気力(magnetic force)
 電荷に対応する磁荷(magnetic charge)は発見されていないが,磁極の帯びている磁気の量(単位ウェーバ)を磁荷,磁気量,磁極の強さとして扱われる。この時,N 極の磁荷を正,S 極の磁化を負と定義される。
 これは,磁荷をもちいることで,電磁気学の計算が簡単になる利点があるため,道具として使われている。実際に観測される磁気は,磁荷によるものではなく電荷の移動(電子の運動)によるものである。
 磁荷を帯びた粒子間に働く力は,クーロンの法則の電荷を磁荷に置き換えた形で書くことができる。

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 【弱い力・強い力】

 弱い力
 弱い相互作用(weak interaction)ともいい,光子と重力子以外のすべての素粒子が関与する相互作用で,中性子のβ壊変(陽子に変わる放射性崩壊)を引き起こす力で,作用をおよぶ距離は10‐17m 程度である。
 
 強い力
 強い相互作用(strong interaction)ともいい,自然界に実在する粒子の間に働く最も強い相互作用。この相互作用を行う非常に多種類の中間子やバリオンをハドロンと総称する。
 微粒子の探査で明らかにされた新しい力の一つで,原子核の基本的な粒子のクォークを結びつけ,原子核として安定させる。作用をおよぶ距離は10‐15m 程度である。
 
 弱い力と強い力は原子核内などの素粒子同士の間で素粒子を交換することによって生じる。このため,交換力とも呼ばれる。

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