化 学 第二部:物質の構造

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  金属結晶の構造について,【最密充填構造】, 【体心立方格子】, 【結晶構造の転移】  に項目を分けて紹介する。

  最密充填構造

 サイズの異なる複数のイオンからなる【イオン結晶】とは異なり,純金属は,等核原子による結晶のため,同じ寸法の剛球の積み重なりで説明できる。
 すなわち,剛球間の相互作用が非常に小さい場合は,配位数 12 となるように,球が密に積み重なる。これを最密充填構造(又は最密構造)という。アルカリ金属元素などの一部の金属を除き,金属結晶の多くは,最密充填構造をとる。
 
 最密充填構造には,下図に示すように,第 3 段目の重なり方の違いで,六方最密充填( hcp : hexagonal close - packing )立方最密充填( cubic close - packing )に分けられる。
 六方最密充填を構成する結晶格子をちょう密六方格子( close - packed hexagonal lattice )立方最密充填を構成する結晶格子を面心立方格子( fcc : face – centered cubic lattice )という。
 
 六方最密充填が安定な金属には,ベリリウム( Be ),マグネシウム( Mg ),チタン(α- Ti ),亜鉛( Zn ),カドミウム( Cd ),ニオブ( Nd ),オスミウム( Os ),タンタル( Tl )などがある。
 立方最密充填が安定な金属には,アルミニウム( Al ),カルシウム( Ca ),鉄(γ- Fe ),ニッケル( Ni ),銅( Cu ),ロジウム( Rh ),パラジウム( Pd ),銀( Ag ),インジウム( In ),イリジウム( Ir ),白金( Pt ),金( Au ),鉛( Pb )などがある。

配位数12(六方最密充填)

配位数12(六方最密充填)

配位数12(立方最密充填)

配位数12(立方最密充填)

 なお,結晶構造の分類では,高等学校教育など一般的には,六方最密充填( hcp ),面心立方格子( fcc )との混用が一般的である。

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  体心立方格子

 アルカリ金属元素や鉄など約 12 種の金属は,【イオン結晶の構造】で紹介した配位数 8 体心立方格子( bcc : body – centered cubic lattice )の構造をとる。
 体心立方格子が安定な金属には,リチウム( Li ),ナトリウム( Na ),カリウム( K ),チタン(β- Ti ),バナジウム( V ),クロム( Cr ),鉄(α- Fe,δ- Fe ),スズ(β- Sn ),タンタル( Ta ),タングステン( W )が知られている。

配位数8(体心立方格子)

配位数8(体心立方格子)

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  結晶構造の転移

 相転移( phase transition )
 物質の三相(気相,液相,固相)が,温度や圧力を変えることで,相互に変化することをいう。
 物質の三相間の相互転移などエントロピーや体積などの値が両相で有限の差をもつような一般的な相転移を一次相転移という。
 鉄鋼の相転移など,固体であっても温度や圧力により結晶構造の違いなどで生じる複数の相の間での転移,例えば,磁性体における常磁性-強磁性転移,合金の秩序無秩序転移,液体ヘリウムの λ 点における正常流体から超流動流体への転移など定圧比熱容量や等温圧縮率の値に有限の差をもつような相転移を二次相転移という。なお,材料学の分野では,二次相転移を相変態と呼ぶのが一般的である。
 チタン( Ti )
 常温では六方最密充填構造のαチタンが安定で,880 ℃以上で体心立方格子構造のβチタンに転移する。
 純鉄( Fe )
 常温ではα鉄(フェライト層:体心立方格子),911 ℃を超えると 1392℃まではγ鉄(オーステナイト層:面心立方格子),1392 ℃から 1536 ℃(融点)まではδ鉄(デルタフェライト層:体心立方格子)が安定である。
 合金成分として炭素を含む鉄鋼の炭素量と温度とによる金属組織の変化(相変態は,鉄鋼の開発や使用環境の見極めに,重要な知見を与える。
 スズ( Sn )
 13 ℃以下では半導体のαスズ(灰色スズ,ダイヤモンド構造)で,常温では金属のβスズ(白色スズ:体心立方格子)が安定である。実際には,βスズを-10 ℃ほどまで冷却すると,徐々に延性のないαスズに変態し体積が増大(密度 7.28 ⇒ 5.77 g/cm3 )する。

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