化 学 第二部:物質の構造

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  物質の基本である【原子】, 【分子】  に項目を分けて紹介する。

 原子

 自然科学で扱う原子( atom )とは,元素の最小単位で,その実態は原子核と電子の電磁相互作用による束縛状態にあり,物質の一つの中簡単位である。
 自然科学で扱う原子は,構造を有し分割可能(核反応など)である。従って,哲学で扱う原子,すなわち,分割不可能な存在,事物を構成する最小単位とはニュアンスが異なる。そこで,現代の自然科学では,過去に“原子論”と呼ばれた分野を素粒子論と称している。
 
 原子の大きさ( atomic size )
 原子の大きさは,【原子の構造】で紹介するように,電子雲の広がりと定義すると直感的に理解しやすい。
 しかしながら,電子雲は電子の存在確率を意味し,その境界面の明確な定義は困難である。さらに,複数の原子の化学結合による分子では,特定の原子に属する電子雲を定義する必要がある。
 従って,原子の大きさを定量的に示す原子半径は,必要不可欠の情報でありながら,原子の状態により,統計力学(量子力学)の自己無撞着(じこむどうちゃく;self-consistent)を用いた理論的な原子半径,共有結合半径,金属結合半径,イオン半径,ファンデルワールス半径などの複数の定義と複数の値が使い分けられるている。


主な元素の原子サイズ例(共有結合半径/金属結合半径) 単位: pm (ピコメートル,10-12m )
 ここで掲載した数値は,複数の便覧,文献を参考にした参考値である。
元素 共有/金属 元素 共有/金属 元素 共有/金属
 水素( H )  約 30 / -  リチウム( Li )  約 130 / 152  ナトリウム( Na )  約 170 / 186
 ベリリウム( Be )  約 95 / 112  マグネシウム( Mg )  約 140 / 160  カルシウム( Ca )  約 170 / 197
 アルミニウム( Al )  約 120 / 143  ガリウム( Ga )  約 120 / 135  インジウム( In )  約 140 / 167
 けい素( Si )  約 110 / 111  ゲルマニウム( Ge )  約 122 / 122  スズ( Sn )  約 140 / 140
 亜鉛( Zn )  約 120 / 134  カドミウム( Cd )  約 140 / 151  水銀( Hg )  約 130 / 151
 銅( Cu )  約 130 / 128  銀( Ag )  約 145 / 144  金( Au )  約 130 / 144
 鉄( Fe )  約 130 / 126  コバルト( Co )  約 120 / 125  ニッケル( Ni )  約 120 / 124
 炭素( C )  70~80 / -  窒素( N )  約 70 / -  酸素( O )  約 70 / -
 フッ素( F )  約 60 / -  塩素( Cl )  約 100 / -  臭素( Br )  約 120 / 120

 【参考】
 素粒子( elementary particle )
 素粒子は,物質を構成する最も基本的,かつ要素的な粒子をいい,フェルミ統計に従うフェルミ粒子(fermion;フェルミオン),ボース統計に従うボース粒子(boson;ボゾン)に大別される。
 フェミオン(fermion)は,強い相互作用で陽子や中性子などのハドロン(hadron;強い相互作用で結びついた複合粒子のグループ)の構成要素であるクォーク,強い相互作用をしないレプトンに分けられる。
 クォーク(quark)には,電荷+2/3 e を持つ 3 種の上系列クォーク(アップ〈u〉,チャーム〈c〉,トップ〈t〉),電荷‐1/3 e を持つ 3 種の下系列クォーク(ダウン〈d〉,ストレンジ〈s〉,ボトム〈b〉)がある。
 レプトン(lepton)には,電荷‐e を持つ 3 種の荷電レプトン(電子,μ粒子,τ粒子),電荷を持たない 3 種のニュートリノ(電子ニュートリノ,μニュートリノ,τニュートリノ)がある。
 ボゾン(boson)には,素粒子間の相互作用(力)を媒介するゲージボソン(gauge boson),素粒子に質量を与えるヒッグスボゾン(Higgs boson)がある。ゲージボゾンには,電磁相互作用を媒介する光子,強い相互作用を媒介するグルーオン,弱い相互作用を媒介するウィークボソン,重力を媒介する重力子がある。
 原子半径( atomic radius )
 自己無撞着場方程式によって求めた,荷電していない状態(結合状態に影響されない)の原子の大きさと考えられる。
 共有結合半径( covalent radius )
 共有結合で結びついた原子間の距離から計算する。例えば,酸素分子(O2)などの原子が同じ種類の原子間距離の 1/2 と考える。
 金属結合半径( metallic radius )
 単体の金属の結晶格子から求めた原子間距離の半分を金属原子半径または金属結合半径と定義され,イオン結晶から求めるイオン半径とは区別される。
 イオン半径( ionic radius )
 イオン結合で形成された結晶格子中で,イオンを剛体球と仮定して求めた半径である。結晶構造により値が変わる。
 ファンデルワールス半径( van der Waals radius )
 ファンデルワールス力で単体の結晶を作る元素について,隣接する原子の距離から求まる。
 自己無撞着(じこむどうちゃく;self-consistent)
 適当に計算を何度も繰り返して条件に合致するものを見つけ出す自己無撞着(セルフコンシステント)な計算を扱った論文,記事などのネット情報:非線形方程式の数値解法:自己無撞着な方程式を解く,  数値的計算法,  自己組織化と自己無撞着場理論・線形平均場近似

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  分子

 分子( molecule )とは,一般的には,化学結合により, 2つ以上の原子から構成される電荷的に中性な物質を指している。
 一般的に知られる分子の多くは,例えば水( H2O )のように,2種以上の元素で構成される化合物である。
 単体の分子は,同じ元素の原子で構成されるので,化合物とは言わず,等核分子と呼ばれる。例えば酸素( O2 )のように 2 原子で構成される分子は,等核二原子分子と呼ばれる。
 ヘリウム ( He ),ネオン ( Ne ),アルゴン ( Ar )などの希ガス元素は,単原子で安定して存在できるので単原子分子と呼ばれる。
 
 【参考】
 化学結合( chemical bond )
 分子や化合物の中で原子同士を結び付けている力である。原子同士を結び付ける力は,原子の周りの電子の挙動で決まる。
 分子内結合には,共有結合,配位結合がある。
 集団を形成する結合には,イオン結合,金属結合,水素結合(分子間力),ファンデルワールス結合(分子間力)がある。
 共有結合( covalent bond )
 原子同士が電子を共有しあうことで生じる化学結合である。
 金属結合( metallic bond )
 いくつかの電子を出した陽イオン(正電荷を持つ金属の原子核)と,自由電子(全体に広がる負電荷)とによる結合。
 イオン結合( electrovalent bond )
 正の電荷を持った原子,又は分子(陽イオン)と負の電荷を持った原子,又は分子(陰イオン)とが静電気力(クーロン力,静電的引力と静電的斥力)によってできる結合をいう。
 ファンデルワールス力( Van der Waals force )
 互いに近づいた原子,分子,及びイオン間に働き,その力は粒子間の距離の 6 乗( 7 乗とする文献も)に反比例する。従って,力の作用する距離は限られた範囲となる
 分子間力( intermolecular force )
 分子間力とは,電気的に中性の分子間に作用する力で,気体から液体や固体への相転移( phase transition :変態ともいう)で重要な役割を果たす。
 一般的な液体で影響する主要な力は,“ファンデルワールス力”で,液体の特性や固体の結晶化などでは“双極子に基づく力”の影響を受けると考えられる。“水素結合”については,原子間の電気陰性度に大きな差があり,大きい双極子モーメントが発生する構造を持つ特定の分子(水やアンモニアなど)で問題となる。

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