第一部:化学と物質構造・金属結合

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  金属結合とは

 金属( metal )に関する明確な定義はないが,固体状態で,次の性質を示すものの総称として用いるのが一般的である。

 塑性変形が容易で,展延加工ができる。
 不透明で輝くような金属光沢がある。
 ③ 電気およびをよく伝導する。
 水溶液中で 陽イオン(カチオン,cation , positive ion )になる。

 金属で見られる結合は,電子対を共有する結合の他に,いくつかの電子を出して陽イオン(正電荷を持つ金属の原子核)と,自由電子(全体に広がる負電荷)とを形成する金属結合( metallic bond )からなる。
 液体及び固体の金属は,電子を放出した陽イオンの間を自由電子が動き回り,これらの間に働くクーロン力(静電気力,静電引力)で結び付けられている。
 【参考】
 塑性( plasticity )
 力を加えて変形(ひずみ)した物質が,力を除去しても元に戻らない性質(変形のまま)。
 弾性と塑性
 力を加えて変形(ひずみ)した物質が,力の除去で元の形に戻ろうとする性質を弾性(elasticity)というが,元に戻らない性質(変形のまま)を塑性(plasticity)という。 ゴムなど金属に比べて大きな変形をする材料は,エラストマー(elastomer)と呼ばれ,この弾性をエントロピー弾性いう。金属材料等の示す弾性(エネルギー弾性)とは弾性の生じる原理が異なる。
 エネルギー弾性とは,内部エネルギー(internal energy)の変化による弾性で,原子の間隔が元に戻ろうとする復元力に由来する弾性をいう。
 エントロピー弾性とは,外力による体積変化(気体や高分子材料)した材料が,エントロピー増大の法則(熱力学の第二法則)に従い元の状態に戻ろうとする復元力による弾性をいう。
 陽イオン( cation , positive ion )
 カチオン(cation)ともいい,正の電荷を帯びたイオンをいう。イオン(ion)とは,原子や原子団(分子)が電子を得たり失うことで電荷を帯びた状態をいう。
 歴史的には,ファラディーが電気分解の実験で,陽極(アノード:anode )に向かう粒子と陰極(カソード:cathode )に向かう粒子を発見し,これらの粒子をイオン(ion)と名付け,陽極に向かう粒子を陰イオン(anion :アニオン),陰極に向かう粒子を陽イオン(cation :カチオン) と呼んだのが始まりである。
 自由電子( free electron )
 自由電子とは,束縛を受けていない電子をいう。即ち,特定の原子核の近傍に留まらず結晶全体に非局在化している電子である。
 自由電子の存在が,電気や熱の高い伝導性の要因の一つとなっている。このため,自由電子は伝導電子とも呼ばれる。
 クーロン力( Coulomb force )
 クーロン力は,静電気力( electrostatic force ),静電力,静電引力などともいわれる荷電粒子( charged particle )間に働く力。
 クーロンの法則( Coulomb’s Low )
 フランスの物理学者クーロンが提案した電磁気学の基本法則で,電荷のクーロンの法則と磁荷のクーロンの法則がある。
 電荷のクーロンの法則とは,荷電粒子間に働き,反発又は引き合う力(クーロン力)が,それぞれの電荷の積に比例し,距離の2 乗に反比例(逆 2 乗の法則)する。
 磁荷のクーロンの法則とは,磁気を帯びた粒子間に働く力に関しても,電荷のクーロンの法則と同様に,距離の逆2 乗の関係がある。
 クーロン(単位)( coulomb )
 電荷・電気量の SI 組立単位で,C = s A (秒・アンペア)
 クーロン(人)( Charles-Augustin de Coulomb )
 シャルル=オーギュスタン・ド・クーロン(1736年 ~ 1806年)は,フランスの物理学者で,帯電した物体間に働く力を測定からクーロンの法則を発見した。業績に因んで,電荷の単位に「クーロン」が用いられている。

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