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 鉄及び鋼

 鉄鋼の微細構造

 鉄鋼材料の性質を支配する重要なパラメータの一つは金属組織(structure of metal)である。金属組織は,添加した合金成分の量,加熱過程及び冷却過程で決まる。
 実際の鉄鋼材料製造過程では,凝固過程,連続鋳造鋼片の冷却,再加熱,圧延,熱処理などで種々の熱処理履歴(heat treatment hysteresis)を受ける。この熱処理過程で,鉄鋼材料の内部で様々な相変態(phase transformation)が起こり,金属組織が複雑に変化する。
 一般的な物理・化学用語では,「相変態」とは固体(固相),液体(液相),気体(気相)に変化することを言うが,金属学では,固体のままで結晶構造(crystal structure , crystalline structure)が変わることを意味する。なお,相変態は,固相変態,同素変態や単に変態とも称する。
 平衡状態図(equilibrium diagram)
 鉄鋼材料の相変態により,結晶構造に加えて,結晶と結晶の界面,すなわち結晶粒界(grain boundary)でも変化が起こる。
 これらの変化は,平衡状態図を用いると理解しやすい。次には,炭素鋼の一般的な平衡状態図を用いて金属組織の変化を紹介する。
 
 炭素を 0.2%含む鋼(構造用鋼における一般的な炭素濃度)において,概ね 800℃以上の変態開始前の組織は,炭素が固溶したオーステナイト( 2.14%まで固溶可)の多角形結晶粒図中の①)となっている。
 鋼の温度が,図中の G-S線と交差する点まで低下すると,γ-α変態と称される変態が始まり,炭素をほとんど含まないフェライト( 0.02%まで固溶可)が結晶の粒子界面からオーステナイト粒子内部に向って成長し始める(図中の⑤)。
 フェライト結晶の成長に伴い,オーステナイト中の炭素濃度が S点に向って増加し,温度が 727℃まで低下した段階でオーステナイト中の炭素濃度は S点の 0.765%になる。
 S点に置いて,オーステナイトは,変態(共析変態,あるいはパーライト変態という)しフェライトとセメンタイトが層状に重なったパーライト組織が形成される。
 温度の低下で,最終的には,図中の⑥に示すフェライトとパーライトの混合した組織(フェライト・パーライト組織という)が形成される。

炭素鋼を徐冷する際の組織の形成過程

炭素鋼を徐冷する際の組織の形成過程
出典:谷野満,鈴木茂「鉄鋼材料の科学―鉄に凝縮されたテクノロジー」内田老鶴圃(2006)p.81

 【参考】
 東部金属熱処理工業組合のホームページには,様々の鋼の熱処理によって変化する金属組織写真が掲載されている。

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