第一部:化学と物質構造・化学結合

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒ “基礎化学(目次)“ ⇒

 ここでは,化学結合の紹介に際して,【化学結合に関わる物質】, 【化学結合の基礎分類】  に項目を分けて紹介する。

  化学結合に関わる物質

 化学結合( chemical bond )
 分子や化合物の中で原子同士を結び付けている力である。原子同士を結び付ける力は,原子の周りの電子の挙動で決まる。
 分子内結合には,共有結合,配位結合がある。集団を形成する結合には,イオン結合,金属結合,水素結合(分子間力),ファンデルワールス結合(分子間力)がある。

 復習になるが,「物質の構成」で紹介したように,物質( material,substance,matter )は,ろ過,蒸留,再結晶などの物理的な方法では分離できない純物質( pure substance )と複数の純物質に分離可能な混合物( mixture )に分けられる。

 純物質とは
 1 種類の元素からなる単体( elementary substance )と 2 種以上の元素で構成される化合物( compound )とに分けられる。一般的には,単体,化合物とも分子( molecule ),又はイオン( iron )で構成される。

 分子とは
  2つ以上の原子( atom )から構成される電荷的に中性な物質を指す。分子には,酸素など 2つの原子で構成される分子から,金属,ダイヤモンドのように,原子数に定めがなく,物質そのものが一つの分子(巨大分子)のものまである。
 特異な例として,ヘリウム ( He ),ネオン ( Ne ),アルゴン ( Ar )などの希ガス元素は,単原子で安定して存在できるので単原子分子などとも呼ばれる。

 イオンとは
 原子,又は分子が 1 個,又は数個の電子を授受することで電荷を持つ物質を指す。
 なお,プラズマなどの特殊な条件を除き,一般的な環境条件(室温付近,大気圧付近など)では,反応前後で電荷の総量が変わらない(電荷保存則,電気中性条件ともいう)ので,正の電荷を持つイオンが生成しても,対となる負の電荷を持つイオンが生成し,全体としては電荷的に中性が保持される。
 (例えば, NaCl ⇒水に溶解 ⇒ Na+ + Cl-

 ページのトップへ

  化学結合の基礎分類

 一般に,主要な化学結合として,イオン結合,共有結合,金属結合,及びその他の結合(配位結合,水素結合など)に分類される。
 イオン結合( electrovalent bond )
 正の電荷を持った原子,又は分子(陽イオン)と負の電荷を持った原子,又は分子(陰イオン)とが静電気力(クーロン力,静電的引力と静電的斥力)によってできる結合をいう。
 共有結合( covalent bond )
 原子同士が電子を共有しあうことで生じる化学結合である。
 金属結合( metallic bond )
 いくつかの電子を出した陽イオン(正電荷を持つ金属の原子核)と,自由電子(全体に広がる負電荷)とによる結合。
 配位結合( coordinate bond )
 結合する二つの原子において,結合に関わる電子対が一方の原子のみから提供される化学結合である。
 配位結合は,ルイス酸とルイス塩基との結合でもある。電子対を受け取る物質はルイス酸,電子対を与える物質はルイス塩基となる。
 水素結合( hydrogen bond )
 分子間に水素を介して働く力を水素結合という。
 第 2 周期の元素(炭素,窒素,フッ素)の水素化物は,分子量が小さいにもかかわらず,同族元素の第 3 周期の元素より異常に高い沸点,融点を有する。このことは,これらの分子にファンデルワールス力以外の強い分子間力(水素結合)が働いていることを示す。

 【参考】
 電荷( electric charge )
 素粒子の持つ性質の一つである。電荷の量を電気量(quantity of electricity)や電荷量(quantity of electric charge , charge quantity)という。
 なお,電気量や,電荷を持つ粒子そのものを電荷と称する文献,参考書,解説なども少なくなくない。
 電荷を持つ粒子(電子や陽子など)を荷電粒子(charged particle),大きさを無視できる理想化された荷電粒子を点電荷(point charge)という。
 電気素量( elementary charge )
 電気量は原子的な最小の単位量をもち,この単位量を電気素量(elementary charge)あるいは素電荷(elementary charge)と呼ばれる。
 記号 e で表わす原子的な最小の電気量をいい,電子の電荷は -e ,陽子の電荷は +e である。
 SI (国際単位系)では e = 1.6021766208(98)×10−19 C(クーロン)で与えられる。
 分子間力( intermolecular force )
 分子間力とは,電気的に中性の分子間に作用する力で,気体から液体や固体への相転移( phase transition :変態ともいう)で重要な役割を果たす。
 一般的な液体で影響する主要な力は,“ファンデルワールス力”で,液体の特性や固体の結晶化などでは“双極子に基づく力”の影響を受けると考えられる。
“水素結合”については,原子間の電気陰性度に大きな差があり,大きい双極子モーメントが発生する構造を持つ特定の分子(水やアンモニアなど)で問題となる。
 ファンデルワールス力( Van der Waals force )
 互いに近づいた原子,分子,及びイオン間に働き,その力は粒子間の距離の 6 乗( 7 乗とする文献も)に反比例する。従って,力の作用する距離は限られた範囲となる。
 自由電子( free electron )
 自由電子とは,束縛を受けていない電子をいう。即ち,特定の原子核の近傍に留まらず結晶全体に非局在化している電子である。
 自由電子の存在が,電気や熱の高い伝導性の要因の一つとなっている。このため,自由電子は伝導電子とも呼ばれる。
 ルイス酸・塩基( Lewis acid,base )
 アメリカの物理化学者ギルバート・ニュートン・ルイス( 1875 ~ 1946 )が 1923年に定義した酸・塩基。.
 酸とは電子対を収容しうる空の軌道をもつ原子を含むもの,塩基とは非共有電子対をもつもの。すなわち,電子対を受け取る物質はルイス酸,電子対を与える物質はルイス塩基となる。

  ページの先頭へ