第一部:化学と物質構造・金属結合

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 化学的性質による金属元素の分類

 金属元素の化学的性質による分類は,分析化学における元素分析(湿式分析)の発展に支えられた分類でもある。
 化学反応性など化学的性質の違いを利用した元素分析,元素分析のための分離・濃縮技術など,分析化学については,別の機会に紹介したいと考えている。
 典型金属
 典型元素(周期表の第 1 族,第 2 族と第 12 族から第 18 族)の中で第 1 族のアルカリ金属( Li ,Na ,K ,Rb ,Cs ,Fr ),第 2 族の中のアルカリ土類金属( Ca ,Sr ,Ba ,Ra )を典型金属と称す。
 アルカリ金属
 周期表第 1 族の水素( H )を除くリチウム( Li ),ナトリウム( Na ),カリウム( K ),ルビジウム( Rb ),セシウム( Cs ),フランシウム( Fr )の総称である。
 一般的には,放射性元素のフランシウム( Fr )を除く場合も多い。
 電気的に最も陽性の強い元素で,1 価の陽イオンになり易く,水と反応し強塩基性の水溶液を与える。各元素とも特徴のある炎色反応を示す。
 アルカリ土類属
 周期表第 2 族のベリリウム( Be ),マグネシウム( Mg )を除く 4 元素,カルシウム( Ca ), ストロンチウム( Sr) ,バリウム( Ba ),ラジウム( Ra )の総称である。
 アルカリ金属に次いで陽性が強く,2 価の陽イオンになり易い。フッ素イオン( F- )と水酸化物イオン( OH- )を除く 1 価のあらゆる陰イオンと水可溶性塩を形成するが,2 価以上の酸素酸塩は水不溶性塩となる。各元素とも特徴のある炎色反応を示す。
 マグネシウム族元素
 周期表第 2 族(最外殻の s 軌道が電子対で満たされた典型元素)の中で,共有結合性が強いベリリウム( Be ),マグネシウム( Mg )を指す。
 周期表第 12 族の亜鉛族元素を含めてマグネシウム族元素と称する場合もある。
 各元素のイオンを含む水溶液に,シアン化カリウム,アンモニア水を加えると水酸化物の沈澱が生じる。
 希土類元素
 周期表第 3 族のスカンジウム( Sc ),イットリウム( Y ),ランタノイド 15 元素の総称で,レアアース( rare earth elements )ともいわれ,当初は,水に不溶の酸化物で産出量が少ないため,希土やレアアースなどの名称がつけられたが,現状では必ずしも希少ではない。
 単体金属は常温で強磁性を示す。4f 軌道電子の特性を利用した用途に珍重されている。主な用途には,蓄電池,発光ダイオード,磁石,水素吸蔵合金,光学ガラス,蛍光体などがある。なお,後述のレアメタルと混用される例があるので注意すること。レアアースはレアメタルの一部である。
 チタン族元素
 周期表第 4 族の 3 元素,チタン( Ti ),ジルコニウム( Zr ),ハフニウム( Hf )の総称である。
 融点と沸点が高く,酸化数 4 の状態が最も安定で塩基性である。炭化物や窒化物は極めて融点が高い。純金属では,常温で表面に酸化被膜を形成し,優れた耐腐食性を示す。
 土酸族元素
 周期表第 5 族の 3 元素,バナジウム( V ),ニオブ( Nb ),タンタル( Ta )の総称である。
 融点と沸点が高く,炭化物や窒化物は極めて融点が高い。硬く強靭で耐食性があり,超硬材料に利用される。主な酸化数は 5 で,酸化物は水に難溶である。酸化物が酸性を示すため土酸金属(土酸類)とも称される。
 クロム族元素
 周期表第 6 族のクロム( Cr ),モリブデン( Mo ),タングステン( W ),シーボーギウム( Sg )の総称である。
 単体の融点,沸点が非常に高く硬い。酸性が顕著な元素である。
 マンガン族元素
 周期表第 7 族のマンガン( Mn ),テクネチウム( Tc ),レニウム( Re )の総称である。
 酸化数 7 は強酸性を示す。酸化数 2 ,3 のマンガンは塩基性である。
 鉄族元素
 一般的には,周期表第 8 族の鉄( Fe ),周期表第 9 族のコバルト( Co ),周期表第 10 族のニッケル( Ni )の総称である。
 常温常圧で強磁性の金属となり,数多くの実用価値の高い錯体を形成する元素である。常温で強磁性を示す単体金属は,希土類元素と鉄族元素のみである。
 まれに,短周期型周期表第 8 族(長周期型周期表第 8 , 9 , 10族)の全元素や周期表第4周期の遷移元素全てを鉄族元素と称する文献もある。
 白金族元素
 周期表第 8 族のルテニウム( Ru ),オスミウム( Os ),周期表第 9 族のロジウム( Rh ),イリジウム( Ir ),周期表第 10 族のパラジウム( Pd ),白金( Pt )の総称である。
 水とは反応せず酸や塩基に侵されにくい。金属や錯体に触媒として有用なものが数多い。
 銅族元素
 周期表第 11 族の銅( Cu ),銀( Ag ),金( Au )の総称である。古代から貨幣や宝飾品として用いたことから貨幣金属や貴金属とも称される。融点,沸点が高く,電気伝導性と延性・展性に優れる。重ハロゲンイオン,硫黄イオン,シアンイオン,アンモニア分子に対し強い親和性を持つイオンを与える。
 亜鉛族元素
 周期表第 12 族の亜鉛( Zn ),カドミウム( Cd ),水銀( Hg )の総称である。
 亜鉛合金を貨幣として用いていたことから準貨幣金属とも称される。また,マグネシウム族元素に分類される場合もある。
 各元素のイオンを含む水溶液に,硫化アンモニウムを加えると硫化物沈殿を生じる,シアン化カリウムを加えるといったん生じた沈殿が,過剰の試薬で溶解する。
 アルミニウム族元素
 周期表第 13 族のホウ素( B )を除くアルミニウム( Al ),ガリウム( Ga ),インジウム( In ),タリウム( Tl )の総称である。
 岩石などに広く分布するので土類金属とも呼ばれる。酸化数 3 の状態が安定な両性金属である。
 スズ族元素
 一般的ではないが,周期表第 14 族のスズ( Sn ),鉛( Pb )を称してスズ族元素という。低融点金属で,揮発性ハロゲン化物を与え,酸化数 2 ,4 とも安定で両性である。
 ヒ素族元素
 一般的ではないが,周期表第 15 族のアンチモン( Sb ),ビスマス( Bi )をヒ素族元素と称する場合がある。固体より液体の電気伝導性が大きい。酸化数 5 は酸性,酸化数 3 では,アンチモン( Sb )は両性で,ビスマス( Bi )は塩基性である。
 低融点金属で,揮発性ハロゲン化物を与え,酸化数 2 ,4 とも安定で両性である。なお,ヒ素( As )は,金属光沢があり電気伝導性も高いが,半金属に分類される。

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