化 学 (物質の構造)

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 【自由電子と特性】

 自由電子( free electron )とは,束縛を受けていない電子をいう。即ち,特定の原子核の近傍に留まらず結晶全体に非局在化している電子である。
 自由電子の存在が,電気や熱の高い伝導性の要因の一つとなっている。このため,自由電子伝導電子とも呼ばれる。
 次に,金属の定義に規定される性質と自由電子の関係を解説する。
 
 【可塑性】
 自由電子の存在が,金属の性質をもたらす。すなわち,物体が外力で変形した場合に,イオン結晶や共有結合の物質では,イオンや電子対の移動範囲が制限され,これを超えると結合の破壊が起きる。
 これに対し,金属結合では結合電子が自由に動き回るため,陽子の移動が起きても,自由電子の移動範囲が広いので,電子の分布状態が変わらず,比較的大きな変形でも結合は破壊されない。このため,金属特有の可塑性(延性や展性)が生まれる。
 
 【金属光沢】
 自由電子は,ほとんどの可視光を反射(種々の波長の光を吸収し,再放出)するため,金属光沢と称される光沢を有する。
 
 【電気の伝導性】
 外部から電圧を加えた時,電荷を持つ電子が互いの反発力により,均一な分布状態を保つため,自由電子が容易に移動する。これにより,外部の電極間に電荷を受け渡すことができる。自由電子を持たない物質での固体内のイオン移動に比較して著しく高い導電性を持つ。
 
 【熱の伝導性】
 熱の伝導は,電子や原子の振動エネルギーとして伝わる。自由電子を持たない物質では,原子間の振動で熱を伝えるが,金属では自由電子の振動でも熱を伝えることができるので,多くの金属が熱の良導体となれる。
 
 【参考】
 ● 可塑性( plasticity )
 外力を加えて変形させ,外力を除いた後で,元の寸法に戻らず変形(ひずみ)する物質の性質をいう。元の寸法に戻る性質は弾性( elasticity )という。なお,完全に外力を除いた後で残るひずみ(寸法の伸び,縮みのこと)を永久ひずみあるいは残留ひずみという。
 可塑性は,定義の違いで,次に示すように延性と展性に分けられる。なお,展性と延性は,金属種(結晶構造など)で影響する要因が異なるため,必ずしも正の相関はない。
 ● 延性( ductility )
 物質に引張り力を加えた時の変形する能力をいう。一般的には,針金状に延ばせる能力をいう場合が多い。
 金属の延性は,金( Au )>銀( Ag )>白金( Pt )>鉄( Fe )>ニッケル( Ni )>銅( Cu )>アルミニウム( Al )>亜鉛( Zn )>スズ( Sn )>鉛( Pb )の順にである。鋼(鉄の合金)の延性は,合金成分の種類と量(特に炭素)で大きく変わる。
 ● 展性( malleability )
 物質に圧縮力を加えた時の変形する能力をいう。工業的な作業工程の鍛造や圧延で薄いシート状に成形できる能力をいう場合が多い。そのため展性を可鍛性(かたんせい)とも呼ぶ。
 金属の展性は,金( Au )>銀( Ag )>鉛( Pb )>銅( Cu )>アルミニウム( Al )>スズ( Sn )>白金( Pt )>亜鉛( Zn )>鉄( Fe )>ニッケル( Ni )の順である。

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