第一部:化学と物質構造 化学の基本
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現代化学に寄与した基礎法則
現代化学の体系化に寄与した基礎法則,化学理解のために必要な基本的な法則や定義などを紹介する。
質量保存の法則( law of conservation of mass :ラボアジェ 1774年)
物質が化学変化(化学反応)するとき,反応前後の物質の質量の和は等しい。
現代の化学では,アインシュタインの提唱する特殊相対性理論(質量とエネルギーの等価性)により,厳密な意味での質量保存の法則は成立しない。
核反応などでは質量変化を認められる。しかし,実用範囲では質量保の存則が成立するとして不都合が少ないため,一般的な化学反応では質量保存の法則に従って議論されている。
ラボアジェ( Antoine-Laurent de Lavoisier )(アントワーヌ・ローラン・ド・ラボアジェ)
フランス人化学者 ( 1743~ 1794 ),1774年に質量保存の法則を発表,燃焼現象を酸素との反応で説明した最初の人物である。
アインシュタイン( Albert Einstein )(アルベルト・アインシュタイン)
ドイツ生まれユダヤ人理論物理学者 ( 1879~ 1955 ),1905年に特殊相対性理論(光速度不変の原理, e = mc2 で知られる質量とエネルギーの等価性),光量子仮説(光を粒子として扱う理論)を発表,1916年に一般相対性理論(重力場での時空の歪み)を発表,1921年に光電効果の解明でノーベル物理学賞を受賞し,20世紀最大の物理学者,現代物理学の父とも呼ばれる。
定比例の法則( law of definite proportion :プルースト 1799年)
同じ化合物では,成分元素の質量の比は,その化合物の生成方法と関係なく,常に一定である。( ⇒ 化合物は一定の化学式で定義できる。)
プルースト( Joseph Louis Proust )(ジョセフ・ルイ・プルースト)
フランス人化学者 ( 1754~ 1826 ),1799年に定比例の法則を発表,当時は,組成比は製造方法で変化するというベルトレーの考え方が一般的であった。これは,化合物と混合物を明確に分けていないためであった。
倍数比例の法則( law of multiple proportion :ドルトン 1803年)
成分元素 A,B からなる複数の化合物において,一定質量の元素 A に対する各化合物の元素 B の質量は,簡単な整数比になる。
例えば,成分元素が炭素( C )と酸素( O )からなる化合物には,一酸化炭素( CO ),二酸化炭素( CO2 )がある。炭素を元素 A とすると元素 B である酸素の質量比は,一酸化炭素:二酸化炭素= 1: 2となる。すなわち,分子式における元素の数は,( CO2 )など整数で記述できることを示す。
ドルトンの原子説(ドルトン 1803年)
質量保存の法則,定比例の法則,倍数比例の法則を説明するための理論として提案された次の 5 項目である。
① すべての物質は,それ以上分割できない粒子(原子)からできている。
② 物質を構成する元素は,その種類により固有の質量と大きさを持つ原子からなる。
③ 2種以上の原子が一定の割合で結合した複合原子が存在する。
④ 化合や分解のとき,原子の消滅や生成はない。
⑤ 気体では 1個の原子や複合原子が 1個の気体粒子になる。
なお,ドルトンは,アボガドロの分子説に反対したことから,ドルトンの考える複合原子は,アボガドロの提唱するる分子とは異なると考えられる。
ドルトン( John Dalton )(ジョン・ドルトン)
イギリス人化学者 ( 1766~ 1844 ),1801年に分圧の法則,1803年に倍数比例の法則,原子説,1810年に原子量表を発表
気体反応の法則( law of gaseous reaction :ゲーリュサック 1808年)
気体同士が反応した場合,又は反応後に気体が生じる場合に,気体間の体積に簡単な整数比が成り立つ。
これは,化学式 2H2 + O2 = 2H2O における係数が整数比( 2:1:2 )で示されることを意味する。
ゲーリュサック( Joseph Louis Gay-Lussac )(ジョセフ・ルイ・ゲイリュサック)
フランス人化学・物理・気象学者 ( 1778~ 1850 ),気体の膨張に関する法則をまとめ1808年に気体反応の法則を発表,高層気象の観測などを行った。
アボガドロの分子説(アボガドロ 1811年)
ドルトンの原子説と気体反応の法則の矛盾解決のために,分子の概念を用いて提唱された次の仮説である。
① 気体はいくつかの原子が結合した分子からできている。
② すべての気体において,同温・同圧のとき,同体積中には同数の分子が含まれる。
③ 気体同士が反応するとき,分子は分割されて原子となり,原子同士の組み合わせが変わった分子になることができる。
現在は,② をアボガドロの法則と呼び,現代の化学反応式の基本としている。また,彼の功績を称え,後に解明された 1 モル中の粒子数をアボガドロ数と称するようになった。
アボガドロ( Lorenzo Romano Amedeo Carlo Avogadro )(アメディオ・アボガドロ)
イタリア人物理・化学者 ( 1776~ 1856 ),分子の存在を仮定し,現代化学の概念を築いた。後に,彼の功績を称え,1モル中の粒子数をアボガドロ数と称した。
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