第一部:化学と物質構造・イオン結合

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 イオンの表記

イオン式( ionic formula )
 イオン( ion )電荷( electrical charge )の種類(+,-)と価数を物質の化学式( chemical formula )の右上に添えて表す。

 イオンは,ナトリウムイオン( Na ),鉄(Ⅱ)イオン( Fe2+ ,第一鉄イオンともいう),塩化物イオン( Cl ),酸化物イオン( O2- )などの単原子のイオンを単原子イオンという。
 水酸化物イオン( OH ,ヒドロキシイオン,水酸イオンともいう),硫酸イオン( SO42- ),炭酸イオン( CO32- )などの原子団のイオンを多原子イオンという。
 例えば,多原子イオンのイオン式 SO42-(硫酸イオン)は,S (硫黄)原子 1 個,O (酸素)原子 4 個で構成された原子団が 2価の負イオンであることを示す。


主なイオンの名称とイオン式
  陽イオンの名称    イオン式    陰イオンの名称    イオン式 
  水素イオン参考    H    水素化物イオン参考     H 
  ヒドロニウムイオン参考     H3O    水酸化物イオン    OH 
  リチウムイオン    Li    フッ化物イオン    F 
  ナトリウムイオン    Na    塩化物イオン    Cl 
  カリウムイオン    K    臭化物イオン    Br 
  マグネシウムイオン    Mg    硝酸イオン    NO2 
  銀イオン    Ag    酢酸イオン    CH3COO 
  亜鉛イオン    Zn2+    過マンガン酸イオン    MnO4 
  カルシウムイオン    Ca2+    酸化物イオン    O2- 
  鉄(Ⅱ)イオン    Fe2+    硫化物イオン    S2- 
  コバルト(Ⅱ)イオン    Co2+    炭酸イオン    CO32- 
  アルミニウムイオン    Al3+    硫酸イオン    SO42- 
  鉄(Ⅲ)イオン    Fe3+    クロム酸イオン    CrO42- 
  コバルト(Ⅲ)イオン    Co3+    リン酸イオン    PO43- 

 【参考】
 水素イオン( H
 酸塩基反応式などでは,イオン式で( H )と表記するが,水素原子(陽子 1 個,電子 1 個)から電子を放出した陽子 1 個(ヒドロン)は,反応性が著しく高く安定して存在できない。
 通常は,溶媒と反応(配位結合)した多原子イオン(水の場合はヒドロニウムイオン: H3O )として存在する。 溶媒中での化学反応式で扱う場合は,簡単のために溶媒の水分子を省略し,H と表記する場合が多い。
 ヒドロニウムイオンオキソニウムイオン
 高等学校教育では,ヒドロニウムイオン( H3O )をオキソニウムイオンと記述している。
 厳密には,オキソニウムイオンは,3つの化学結合を持つ酸素の陽イオンの総称(一般イオン式 R R’R”O )であり,その中で R ,R’,R”を水素に置き換えた最も単純なものをヒドロニウムイオンという。
 水素化物イオン( H
 例えば,水素化リチウム( LiH ),水素化ナトリウム( NaH ),水素化アルミニウムリチウム( LiAlH4 )として存在する。
 水素化リチウムは乾燥空気中で比較的安定で,水があると直ちに反応し,水酸化リチウムと水素を発生する。研究試薬の精製目的で微量水分の脱水目的や有機化学の還元剤(水素化アルミニウムリチウム)の原料などに用いられている。
 水素化ナトリウムは,可燃性,腐食性が高いため,鉱物油に分散して保管される。有機合成で炭化水素から水素(プロトン)を引き抜くための強塩基として用いられている。

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