JIS K 0130 電気伝導率測定方法通則

 JIS K 0130  2008年版 電気伝導率測定方法通則(General rules for electrical conductivity measuring method)を  【目次・適用範囲・用語・一般事項】,   【電気伝導率の測定】,   【測定上の注意・附属書 A 】  に分けて紹介する。

 目次・適用範囲・用語・一般事項

 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 1 適用範囲,2 引用規格,3 用語及び定義,4 一般事項,5 電気伝導率計(5.1 測定方式の種類,5.2 形態,5.3 構成),6 試薬,7 準備(7.1 塩化カリウム標準液の調製,7.2 セル定数の測定方法),8 電気伝導率の測定(8.1 電気伝導率計の準備,8.2 静止試料の測定,8.3 流動試料の測定),9 測定上の注意,10 データの質の管理(10.1 測定装置の性能確認,10.2 適切な試料の採取方法及び取扱方法),11 個別規格に記載すべき事項
 附属書 A(参考) 白金黒めっき
 
 1 適用範囲
 この規格は,電解質水溶液及び水(河川水,海水,雨水,蒸留水,脱イオン水など)の 5µS/m~200S/m(25℃)の範囲の電気伝導率の測定方法について規定する。
 
 3 用語及び定義
 この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」によるほか,次による。
 電気伝導度 (conductance)
 電解質水溶液を満たした電極間の溶液の電気抵抗 ( R ) の逆数。
 注記 記号は G,単位は S(ジーメンス)。
 電気伝導率 (electrical conductivity, electric conductivity, electrolytic conductivity)
 面積 1m2 の 2個の平面電極が,距離 1m で対向している容器に電解質水溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数。
 注記 導電率ともいう。記号はκ,単位は S/m であるが,電気伝導率の数値によって,mS/m,µS/m などを用いる。
 セル (cell)
 電気伝導率測定用電極を,電気絶縁体で作った容器に固定したもの。
 セル定数 (cell constant)
 塩化カリウム標準液を満たしたセルの電極間で測定した電気伝導度で,その標準液の電気伝導率を除したもの (κ/G ) 。
 注記 単位は m-1 。電磁誘導方式では,上記のように定義されるセル定数はないが,それと等価なものをセル定数とする。
 交流 2電極方式電気伝導率計 (AC two − terminal electric conductivity meter)
 2個の電極間に正弦波,方形波などの交流を印加し,電極間を流れる電流を測定して電気伝導率を求める計測器。
 交流 4電極方式電気伝導率計 (AC four − terminal electric conductivity meter)
 4個の電極を適切な間隔で配置し,外側の 2個の電極間に電流を流して,内側の 2個の電極間の電位差を測定し,電気伝導率を求める計測器。
 電磁誘導方式電気伝導率計 (inductive conductivity meter, electromagnetic conductivity meter)
 電磁誘導作用を利用して電気伝導率を求める計測器。
 
 4 一般事項
  a) : 電気伝導率の単位として,従来は,µS/cm が用いられていたが,この規格では,主に,mS/m を用いる。
 注記 1  電気伝導率としては,µS/m の単位で表した数値を 0.01倍するか,又は mS/mの単位で表した数値を 10倍すると,µS/cm の単位で表した数値となる。
  b) : セル定数の単位として,従来は cm−1 が用いられていたが,この規格では,主に,m−1 を用いる。
 注記 2  m−1 で表した数値を 0.01倍すると,cm−1 の単位で表した数値となる。
  c) : この規格における電気伝導率の標準の温度は,25℃とする。

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 電気伝導率の測定

 8 電気伝導率の測定
 セルの電極の材質は,白金,白金黒,チタン,ステンレス鋼,ニッケル,黒鉛などで,試料に侵されないものとする。
 容器の材質は,ガラス,合成樹脂などで,試料に侵されないものとする。試料の圧力,流量及び温度に対して変形することなく耐えるものであり,試料の置換がよく,容易に洗浄できるものとする。
 8.1 電気伝導率計の準備
 電気伝導率計は,その形態及び検出部の種類を試料の状態に応じて適切に選択し,設置する。必要に応じてセル定数を測定して確認し,試料の電気伝導率を測定する。セル定数を測定して,従来のセル定数と大きく異なる(20%以上)場合は,検出部の電極板の汚れの影響によることが多い。汚れに応じた適切な洗浄方法で清浄にして再度セル定数を測定する。
 電気伝導率の小さい試料を測定する場合には,接触する配管の材質,空気などが試料へ溶解しないように注意する。また,腐食性及びセルに汚れを生じるような物質がないことを確認する。
 卓上用及び定置用の電気伝導率計の設置場所は,一般に次の条件を備えていなければならない。ただし,携帯用電気伝導率計を使用する場合は,計測器の取扱説明書による。
 a)  振動がなく,直射日光が当たらない。b) 腐食性ガス及びほこりが少なく,換気がよい。c)  大形変圧器,高周波加熱炉などからの電磁誘導を受けない。
 d)  指定された電圧,電気容量及び周波数で,電圧変動は定格の 10%以下であり,周波数変動がない。また,接地抵抗 100Ω以下の接地点がある。
 バッテリー駆動形などの携帯用電気伝導率計は,接地端子がない場合があるので,特に,低電気伝導率の場合などは,試料を電気的に接地するような工夫が必要である。
 8.2 静止試料の測定
 この方法は,屋外及び通常の実験室において,試料容器に採取した試料に浸せき形(潜せき形)又はピペット形検出部を用いて測定する場合に適用できる。測定範囲は,1mS/m(25℃)以上に限定するのが妥当である。
 測定範囲の下限に近い,電気伝導率が低い領域の場合,両電極間の残余起電力の影響によって,測定値が安定しない場合がある。
 電気伝導率が低い領域ではある程度大きい電圧をかけることで,これを防ぐことができるので,測定範囲に応じて印加電圧及び周波数が適正な条件に設定された装置を使用することが望ましい。
 8.2.1 温度補償を行わない場合の操作
 恒温槽などを用いて,試料温度を指定温度(通常は 25℃±0.1℃)に調節して測定する方法である。温度補償に伴う誤差がないので,指定温度における電気伝導率を最も正確に測定できる。
  a)  電気伝導率計のセル定数補正目盛,又は計器に表示されるセル定数の数値を,使用する検出部の正しいセル定数に合わせる。
  b)  検出部及び試料容器を水で 3回以上洗浄し,次いで試料で 3回以上洗浄する。
  c)  試料を満たした試料容器に検出部を浸し,試料温度を指定温度(通常は 25℃±0.1℃)に調節する。温度計は,JIS Z8710 「温度測定方法通則」の精密級の温度計を使用する。また,温度測定の精度は,測定目的による。
  d)  温度補償を行わない状態に設定して,十分に恒温となった後,電気伝導率を測定する。
 8.2.2 温度補償を行う場合の操作
 任意の試料温度で測定し,温度補償を行って指定温度(通常は 25℃)における電気伝導率を求める方法である。
  a)  電気伝導率計のセル定数補正目盛,又は計器に表示されるセル定数の数値を,使用する検出部の正しいセル定数に合わせる。
  b)  検出部及び試料容器を水で 3回以上洗浄し,次いで試料で 3回以上洗浄する。
  c)  試料を満たした試料容器に検出部を浸し,試料温度が 0.1℃以内で安定するまで待ち,温度を読み取る。
  d)  温度補償方式に応じて電気伝導率計の温度補償の設定を行い,電気伝導率を測定する。
   1)  温度補償機能がない場合は,測定温度において試料に応じた温度補正係数を測定値に乗じて試料の電気伝導率を算出する。ただし,この方法は,0.1mS/m(25℃)以下の試料には適用できない。
   2)  手動温度補償の場合は,温度補償の設定を測定温度に合わせる。
   3)  自動温度補償の場合は,測定温度を設定する必要はない。ただし,温度補償用測温体が試料温度に等しくなっていることを確認する。
   4)  0.1mS/m(25℃)以下の試料を測定するときは,二重温度補償を行う必要がある。また,電気伝導率の高い試料を測定するときは,特に,温度補正係数が試料と適合していることが大切である。
 
 8.3 流動試料の測定
 この方法は,試料を流液形(流通形)検出部に連続的に導入するか,又は試料が流れる配管中に配管挿入形検出部を直接取り付けて測定する場合に適用できる。
 8.3.1 温度補償を行わない場合の操作
 熱交換器,恒温槽などを用いて,試料温度を指定温度(通常は 25℃±0.5℃)に調節して測定する方法である。温度補償に伴う誤差がないので,指定温度における電気伝導率を最も正確に測定できる。
  a)  電気伝導率計のセル定数補正目盛,又は計器に表示されるセル定数の数値を,使用する検出部の正しいセル定数に合わせる。
  b)  試料の流量を,計測器の取扱説明書を参考に,適切に調節した後,試料温度を指定温度(通常は 25℃±0.5℃)に調節する。
  c)  温度補償を行わない状態に設定して,十分に恒温となった後,電気伝導率を測定する。
 8.3.2 温度補償を行う場合の操作
 任意の試料温度で測定し,温度補償を行って 25℃における電気伝導率を求める方法である。
  a)  電気伝導率計のセル定数補正目盛,又は計器に表示されるセル定数の数値を,使用する検出部の正しいセル定数に合わせる。
  b)  試料の流量を,計測器の取扱説明書を参考に,適切に調節した後,測定温度が 0.5℃以内で安定するまで待ち,温度を読み取る。
  c)  温度補償方式に応じて電気伝導率計の温度補償の設定を行い,電気伝導率を測定する。
   1)  温度補償機能がない場合は,測定温度において試料に応じた温度補正係数を測定値に乗じて試料の電気伝導率を算出する。
   2)  手動温度補償の場合は,温度補償の設定を測定温度に合わせる。
   3)  自動温度補償の場合は,測定温度を設定する必要はない。ただし,温度補償用測温体が試料温度と等しくなっていなければならない。
   4)  0.1mS/m(25℃)以下の試料を測定するときは,二重温度補償を行う必要がある。また,高い電気伝導率の試料を測定するときは,特に,温度補正係数が試料に適合していることが大切である。

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 測定上の注意・附属書 A

 9 測定上の注意
 電気伝導率の測定における妨害要因として,次のようなものがある。
  a)  溶存気体 試料が大気と接触すると,気体の溶解によって溶存気体の量が変わるために,試料の電気伝導率が変化する。特に,1mS/m以下の水は,大気中の二酸化炭素の溶解によって電気伝導率が増加する。
 このような場合,流液形(流通形)若しくは配管挿入形検出部を用いることによって,又は試料の表面を JIS K 1107 に規定する窒素,ヘリウムなどの不活性気体で覆うことによって,大気との接触を避けることができる。
 
  b)  セルの汚れ 試料中にグリース,油,微生物などの不溶性又は粘着性物質があると,セルが汚れ,正しい測定ができないので,適切な溶剤又は洗剤でセルを洗浄する必要がある。
 
  c)  試料中の異物 電解質水溶液の電気伝導率を測定する場合,試料中に懸濁物,気泡などがあるときは,測定値に影響を及ぼすことがあるので注意する。
 
 附属書 A(参考)白金黒めっき
 序文 この附属書は,本体の規定を補足するものであって,規定の一部ではない。
 A.1 一般事項
 電極の白金黒めっきが必要な場合は,次のとおり行う。
  a)  白金黒の除去方法 白金黒は,JIS K 8180 に規定する塩酸中で白金(黒)電極を陽極として電解すると,容易に取り除くことができる。
  b)  白金黒めっき方法 白金黒めっき方法は,次による。
   1)  JIS K 8153 に規定するヘキサクロロ白金 ( Ⅳ ) 酸六水和物を 30g 及び JIS K 8374 に規定する酢酸鉛 ( Ⅱ ) 三水和物を 0.25g ひょう量し,JIS K 0557 に規定する水 A2 ,A3又は A4を用いて全量 1Lとなるように調製された電解液に,白金電極を入れ,直流約 6V の電源を用いて,電解液をかき混ぜながら,一定電流密度(100~400A/m2)で数回極性を切り替え,約 10分間通電する[ 35~140kC(クーロン)/m2 ]。
   2)  次に,硫酸(1+360)中で約 30分間,ときどき電流の方向を変えて通電し,付着又は吸蔵されたヘキサクロロ白金 ( Ⅳ ) 酸及び塩素を除く。

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