腐食概論:腐食の基礎

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  【環境因子と腐食速さ】

 金属鋼表面に到達する酸素量や腐食反応で生成したイオンの移動に影響する要因は,金属の腐食速さに影響する。この例として,鋼表面に付着した水膜厚みと腐食速度の関係で解説する。
 下図は,水膜厚みと腐食速度の関係を説明する一般的な模式図である。

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度
参考:H. Uhlig, D. Triadis, M. Stern, J. Electrochem. Soc., 102, 59(1955)

 水分子吸着層が100分子程度までの水膜厚みによる腐食をかわき大気腐食と呼ばれる。この領域では,水膜の大多数が吸着水,すなわち液状の水とは異なり移動困難な水分子で構成されている。このため,イオンの移動が著しく制約される。これは,電気抵抗が著しく大きい腐食電池に相当し,アノードとカソードの電位差が大きくとも電流に相当する腐食速度は非常に小さくなる。

 水膜が厚くなると,【清浄表面の濡れ】で説明するように,吸着層の上に自由に動ける水の層が増え,イオンの移動が容易になる。水膜厚みの増加でイオンの移動し易さが増すことで,腐食速度が増加する。この領域をしめり大気腐食と称する。

 さらに水膜が厚くなり,イオンの移動に対する制約が液体の水と変わりなくなると,腐食速度は,【酸素拡散律速とは】で解説したカソード部での酸素消費量に依存する。
 水膜が1μm程度になると,目視で表面の濡れが確認できる状態となり,この状態から濡れ大気腐食などと呼ばれる。水膜厚みの増加(酸素拡散層の増加)と共に,カソード部に供給される酸素量が減少する。このため腐食速度も水膜厚みの増加と共に減少し始める。
 水膜厚みが1mm程度以上では,酸素拡散層の厚み(静止した水で概ね 500μm)より厚いため,鋼表面で消費される酸素量,すなわち水膜の沖合から鋼表面に拡散してくる酸素量が水膜厚みの増加によらず,ほぼ一定となる。このため,水膜厚みが増えても,腐食速度が一定になる。

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