腐食概論腐食の基礎

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 ここでは,イオン化し易さの尺度に関連し, 【イオン化エネルギー】, 【主な用語】 を紹介する。

 腐食の開始と継続

 イオン化エネルギー(イオン化し易さの尺度)

 イオン化エネルギー(ionization energy)は,電離エネルギーやイオン化ポテンシャルともいわれる。イオン化エネルギーは,原子やイオンなどから電子を取り去るのに要するエネルギーである。すなわち,取りだされた電子の結びつきの強さの目安となる。
 
 すなわち,取りだされた電子の結びつきの強さの目安で,エネルギーが小さいほど陽イオンになり易く,陽性が強いという。
 イオン化エネルギーは,気体状態の単原子(又は基底状態の分子)から取り去る電子が 1 個目の場合を第一イオン化エネルギー,2 個目を取り去る場合を第二イオン化エネルギー,3 個目は第三イオン化エネルギーと言う。
 単にイオン化エネルギーという場合は,第一イオン化エネルギーのことを指す。
 イオン化エネルギーの一般的な測定は,真空状態で,一定エネルギーの電子ビームを原子(分子)に照射し,飛び出す電子のエネルギーを測定して求められる。
 
 イオン化エネルギーの大きさは,電子の軌道準位の単位にならって慣習的に eV(electron volt;電子ボルト)単位で表す。
 ● エネルギー単位の換算
 1eV = 1.602×10-12 erg =1.602×10-19 joule = 3.827×10-20 cal
 1モル当たりのエネルギーは,アボガドロ数( N = 6.0225×1023 molecule / mol )を用いて,
 1eV×N = 1.602×10-19 joule ×6.0225 × 1023 molecule / mol = 96.48 k J /mol
 
 イオン化エネルギーは,電子軌道(electron orbital)の相対的エネルギー,及び核の電荷の効果で説明される。原子核の正電荷が増すにつれ,軌道電子はより強く保持される。例えば,ヘリウムの 1s電子を除去するには水素の 1s電子を除去するより多くのエネルギーを必要とする。

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  主な用語の概説

 電子軌道(electron orbital)
 軌道と訳されているため,電車の軌道,衛星軌道などのように,一定の法則に従って運動するときの筋道と錯覚されるが,electron(電子の)orbital(軌道のようなもの)は,電子の状態を波動関数(wave function)で表したもので,雲のように広がった連続的分布をしていると考えられている。電子の分布を電子雲(electron cloud)ともいう。
 電子軌道は,主量子数( main quantum number ) n ,方位量子数( azimuthal quantum number ) l (エル) ,磁気量子数( magnetic quantum number ) m で指定される。
 主量子数 n は,軌道の大きさとエネルギーを決定し,1, 2 , 3 , …の整数値をとる。これは,電子殻( K 殻, L 殻, M 殻, … )に対応する。
 方位量子数 l は,軌道の形を決定し,0 , 1, 2 , … n-1の整数値をとる。これは,s 軌道,p 軌道,d 軌道,f 軌道,h 軌道に対応する。すなわち,K 殻 ( 主量子数 1 ) では l = 1 - 1 = 0となり,s 軌道しかとりえないが, N 殻 ( 主量子数 4 ) では l = 4 - 1 = 3 となり,s 軌道,p 軌道,d 軌道をとることができる。
 磁気量子数 m は,各軌道を決定し,0 , ± 1, ± 2 , … ± l の整数値をとる。従って,s 軌道は, l = 0, m = 0 で 1 つの軌道を,p 軌道は l = 1 , m = -1 , 0 , 1 で 3 つの軌道を,d 軌道は l = 2 , m = -2 , -1 , 0 , 1 , 2 となり 5つの軌道を持つことができる。

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