腐食概論:腐食の基礎

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 腐食現象の分類

  【はじめに】

 腐食現象は,腐食の形態,使用環境,腐食の発生原因・個所などにより様々な名称で分類されている。
 このサイトでは,一般的な腐食分類の例,一般的な均一腐食の原理,鋼橋などの陸上構造物で観察される局部腐食として隙間腐食など酸素濃淡電池作用,金属の組み合わせで問題となる異種金属接触腐食について,次の要領で紹介する。
 【環境による分類】:大気腐食,土壌腐食など設置環境による分類。
 【腐食形態・機構による分類】:均一腐食,局部腐食など腐食現象の形態別分類,濃淡電池腐食,孔食,異種金属接触腐食など腐食機構の違いによる分類。
 【均一腐食:腐食反応】:水で濡れた鋼表面の腐食反応について。
 【均一腐食:表面の揺らぎ】:均一腐食となる理由として,アノードの移動について。
 【均一腐食:清浄表面の濡れ】:大気腐食に大きく影響する濡れの原理について。
 【均一腐食:汚染表面の濡れ】:塩で汚染された表面での塩の潮解による濡れ現象について。
 【局部腐食とは】:大気腐食で想定される局部腐食と特徴について。
 【局部腐食:酸素濃淡電池】:大気腐食で観察される酸素濃淡電池例,すき間腐食について。
 【異種金属接触腐食の可能性】:大気腐食で懸念される異種金属接触腐食の可能性について。
 【異種金属接触腐食の程度】:実用上問題となる異種金属接触腐食の程度と条件について。

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  【主な腐食現象の概説】

 腐食現象の分類名称とその概要を紹介する。
 【水の関与による分類】
 湿食(しっしょく;wet corrosion)
 液体状の水が存在するために起こる金属の腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 金属表面の濡れ,結露,吸着など液体状の水が存在する比較的低い温度で見られる一般的な金属の腐食。
 乾食(かんしょく;dry corrosion)
 液体状の水の作用を受けることなく,腐食性の気体と反応して生じる金属の腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 例えば,水が関与しない高温の空気,反応性ガスによる特殊環境での腐食。
 
 【腐食形態による分類の例】
 均一腐食(きんいつふしょく;uniform corrosion)
 金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食(きょくぶふしょく;localized corrosion)
 金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
 粒界腐食(りゅうかいふしょく;intergranular corrosion)
 金属材料の結晶粒界に選択的に生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 結晶粒の界面(結晶粒界)は,二つの結晶粒の格子が乱れた不連続領域になっている。結晶粒界は,結晶粒内部に比べて,不純物が入り込む機会が多く,金属の腐食にとって欠陥部として働き,甚だしい場合には,局部的な腐食である粒界腐食(intergranular corrosion)として問題となることがある。
 一般的には,表面に腐食生成物が多量に観察されないため,目視で認識困難であるが,放置すると材料の破断などの原因になる。
 選択腐食(せんたくふしょく;selective leaching)
 脱成分腐食(dealloying)ともいわれる。特定の合金成分が選択的に溶解する腐食。黄銅から亜鉛が溶解する場合を脱亜鉛腐食(dezincification)という。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 
 【腐食環境による分類の例】
 大気腐食(たいきふしょく;atmospheric corrosion)
  大気中で起きる金属の腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 大気中では,乾食に分類されるかわき大気腐食,湿食に分類される薄い水膜(大気中の水蒸気の付着)による湿り大気腐食,厚い水膜(結露や降雨)による濡れ大気腐食に分けられる。
 一般的に問題となるのは湿食,すなわち,水膜に溶け込んだ酸素の還元で腐食反応が進む大気腐食で,その腐食速度は,大気に含まれる汚染物質,特に水に溶けてイオンとなる電解質が大きく影響する。
 淡水腐食(たんすいふしょく;corrosion in fresh water)
 河川水,上水,地下水などの淡水中で起きる腐食の総称である。
 海水腐食(かいすいふしょく;corrosion in sea water)
 海水中で起きる腐食の総称である。海水面からの深さで腐食速度が異なるのが特徴である。
 土壌腐食(どじょうふしょく;soil corrosion)
 土壌中で起きる金属の腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 土質の違い,通気性の違いなどによるマクロ腐食電池形成による腐食,微生物の影響を受けた腐食などがある。人工的な環境として,電車線路や高圧線からの漏れ電流による埋設管などの局部的腐食を特に迷走電流腐食(電食)(stray current corrosion)と呼ぶ。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)はマクロセルともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
 高温腐食(こうおんふしょく;high temperature corrosion)
 高温の水又は水蒸気による腐食で,一般にはボイラの腐食という。高温高圧下では酸素がなくても水と金属が直接反応して腐食が起こる。
 ガス腐食(gaseous corrosion)
 液体の水の存在しない場での腐食現象を総称してガス腐食という。単に乾食ということもある。
 
 【腐食原因や機構による分類の例】
 濃淡電池腐食(のうたんでんちふしょく;concentration cell corrosion)
 金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 濃淡を原因とする電位差で生じた電池(マクロ腐食電池)による腐食で,広義のガルバニック腐食(galvanic corrosion)の一種である。なお,酸素の濃淡電池形成の場合を通気差腐食(differential aeration corrosion)などともいう。
 すき間腐食(crevice corrosion)
 濃淡電池腐食の一種で,金属又は金属と他の材料との間にすき間が存在する場合,すき間の内外においてイオン,酸素などの濃淡電池が構成されて生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 酸素の濃淡のみで生じる濃淡電池は通気差電池(differential aeration cell)といわれ,これによる腐食を通気差腐食(differential aeration corrosion)という。
 異種金属接触腐食(いしゅきんぞくせっしょくふしょく;bimetallic corrosion , galvanic corrosion)
 異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による腐食一種であるが,ガルバニック腐食(galvanic corrosion)という場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが一般的である。なお,電解質を介して電気回路が形成し腐食する場合を接触腐食ともいわれる。
 孔食(こうしょく;pitting corrosion)
 金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 糸状腐食(いとじょうふしょく;fillform corrosion)
 主に塗料又は油脂などで被覆した金属表面に,糸状に進行する腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 主に,塗料又は油脂などで被覆した金属表面に,糸状に進行する腐食。一般に,金属の塗装されていない端面から,又は塗膜の部分的にきずのついた場所から始まる。備考:一般に,糸さびは,長さや成長する方向が不規則であるが,ほぼ平行に大体同じ長さに成長する。【JIS K5500「塗料用語」】
 重ねた板の間又は塗膜の下に生じる糸状の腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 迷走電流腐食(めいそうでんりゅうふしょく;stray current corrosion)
 正規の回路以外のところを流れる電流によって生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 直流電鉄の線路付近の線路から漏れた電流(漏れ電流)による埋設鋼管などの局部的腐食は,特に電食(でんしょく)といわれる。
 応力腐食割れ(おうりょくふしょくわれ;stress corrosion cracking:SCC)
 腐食と引張応力との相乗作用によって金属材料に割れを生じる現象。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 溶射被膜に応力と腐食環境の相互作用で亀裂が発生し,そのき裂が時間と共に進展する現象。【JIS H8200「溶射用語」】
 腐食疲労(ふしょくひろう;corrosion fatigue)
 腐食と繰り返し応力との相乗作用によって,金属材料に生じる強度低下。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 繰り返しの応力単独の場合より金属疲労が促進され,応力から計算される疲労寿命より著しく短命になり,損傷・事故の原因になり易い。
 水素脆性(すいそぜいせい;hydrogen embrittlement)
 腐食,酸洗い,電解,溶接などによって生じた水素が金属中に吸蔵されて,材質がもろくなる現象。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 前処理及びめっき処理の過程で,被めっき物が水素を吸蔵して延性又はじん(靱)性が低下する現象。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
 現象が現れるまで時間を要するため,遅れ破壊(delayed fracture)ともいう。
 エロージョン・コロージョン(erosion corrosion)
 流動する水,土砂などの環境物質の摩耗作用と腐食作用の相乗作用によって金属に生じる損耗。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 摩耗腐食(まもうふしょく)ともいい,各作用が単独の場合の損傷の単純和より大きい損傷となる。
 キャビテ-ション・コロージョン(cavitation corrosion)
 キャビテーション損傷(cavitation damage)とは,金属表面でこれに接触する液体の圧力の繰返し変動によって気泡の発生,崩壊が起こることによって金属に生じる損傷。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 この現象で金属表面の不動態皮膜などの酸化皮膜が破壊され,腐食が促進されることをキャビテーション・コロージョンという。
 フレッティング・コロージョン(fretting corrosion)
 空気中で金属とそれに接触する金属又は他の物質との接触面で,微小の滑りが繰り返し起こるときに金属表面に生じる腐食をいう。擦過(さっか)腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】

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