腐食概論:腐食の基礎

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 腐食現象の分類

  【はじめに】

 腐食現象は,腐食の形態,使用環境,腐食の発生原因・個所などにより様々な名称で分類されている。
 このサイトでは,一般的な腐食分類の例,一般的な均一腐食の原理,鋼橋などの陸上構造物で観察される局部腐食として隙間腐食など酸素濃淡電池作用,金属の組み合わせで問題となる異種金属接触腐食について,次の要領で紹介する。
 【環境による分類】:大気腐食,土壌腐食など設置環境による分類。
 【腐食形態・機構による分類】:均一腐食,局部腐食など腐食現象の形態別分類,濃淡電池腐食,孔食,異種金属接触腐食など腐食機構の違いによる分類。
 【均一腐食:腐食反応】:水で濡れた鋼表面の腐食反応について,その概要を解説。
 【均一腐食:表面の揺らぎ】:均一腐食となる理由として,アノードの移動について。
 【均一腐食:清浄表面の濡れ】:大気腐食に大きく影響する濡れの原理について。
 【均一腐食:汚染表面の濡れ】:塩で汚染された表面での塩の潮解による濡れ現象について。
 【局部腐食とは】:大気腐食で想定される局部腐食と特徴の概要。
 【局部腐食:酸素濃淡電池】:大気腐食で観察される酸素濃淡電池例,すき間腐食の概要について。
 【異種金属接触腐食の可能性】:大気腐食で懸念される異種金属接触腐食の可能性について。
 【異種金属接触腐食の程度】:実用上問題となる異種金属接触腐食の程度と条件。

 【基礎用語】

 腐食現象の分類名称とその概要を紹介する。

    【水の関与による分類】
  • 湿食(wet corrosion)
     金属表面に,液体状の水が存在するために起こる金属の腐食。比較的低い温度で見られる一般的な金属の腐食。
  • 乾食(dry corrosion)
     液体状の水の作用を受けることなく,腐食性の気体と反応して生じる金属の腐食。例えば,水が関与しない高温の空気,反応性ガスによる特殊環境での腐食。
    【腐食形態による分類の例】
  • 均一腐食(uniform corrosion)
     金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。
  • 局部腐食(localized corrosion)
     金属表面の腐食が均一でなく,腐食箇所の固定により局部的に集中して生じる腐食。金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
  • 粒界腐食(intergranular corrosion)
     金属材料の結晶粒界に選択的に生じる腐食。表面に腐食生成物が多量に観察されないため,目視で認識困難であるが,放置すると材料の破断などの原因になる。
  • 腐食割れ(dry corrosion)
     腐食と応力の相乗効果で金属が応力単独の場合より早期に割れる現象。応力腐食割れ,腐食疲労などがある。
     目視では確認困難で,応力計測から予測される疲労寿命より著しく短い期間に疲労亀裂の発生や破断に至る場合がある。
  • 選択腐食(selective leaching)
     特定の合金成分が選択的に溶解する腐食。脱成分腐食(dealloying)ともいわれる。黄銅から亜鉛が溶解する場合を,特に脱亜鉛腐食(dezincification)という。
    【腐食環境による分類の例】
  • 大気腐食(atmospheric corrosion)
      大気中で起きる金属の腐食の総称である。大気中の水蒸気で金属表面に薄い水膜が形成し,水膜に溶け込んだ酸素の還元で腐食反応が進む。部位や気象条件により,結露や降雨により表面に厚い水膜が形成することもある。
     腐食速度には,大気の汚染物質,特に水に溶けてイオンとなる電解質が大きく影響する。
  • 淡水腐食(corrosion in fresh water)
     河川水,上水,地下水などの淡水中で起きる腐食の総称である。
  • 海水腐食(corrosion in sea water)
     海水中で起きる腐食の総称である。海水面からの深さで腐食速度が異なるのが特徴である。
  • 土壌腐食(soil corrosion)
     土壌中で起きる腐食の総称である。土質の違い,通気性の違いなどによるマクロセル形成による腐食,微生物の影響を受けた腐食などがある。人工的な環境として,電車線路や高圧線からの漏れ電流による埋設管などの局部的腐食を特に電食と呼ぶ。
  • 高温水腐食(high temperature corrosion)
     高温の水又は水蒸気による腐食で,一般にはボイラの腐食という。高温高圧下では酸素がなくても水と金属が直接反応して腐食が起こる。
  • ガス腐食(gaseous corrosion)
     液体の水の存在しない場での腐食現象を総称してガス腐食という。単に乾食ということもある。
    【腐食原因や機構による分類の例】
  • 濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)
     金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素濃度が局部的に異なるため,その濃淡を原因とする電位差で生じた電池(セル)による腐食。酸素濃淡電池形成の場合を通気差腐食などともいう。電池作用腐食(galvanic corrosion)の一種。
  • すき間腐食(crevice corrosion)
     金属と金属又は他の材料との間にすき間が存在する場合,すき間の内外においてイオン,酸素などの濃度差が生じる。濃淡電池腐食の一種である。
  • 異種金属接触腐食(galvanic corrosion)
     異種金属が直接接続(電気的に)されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。電池作用腐食の一種で,ガルバニック腐食というと主に異種金属接触腐食をいう場合が多い。
     電解質を介して電気回路が形成し腐食する場合を接触腐食ともいう。
  • 孔食(pitting corrosion)
     金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。
  • 糸状腐食fillform corrosion)
     主に塗料又は油脂などで被覆した金属表面に,糸状に進行する腐食。
  • 迷走電流腐食(stray current corrosion)
     正規の回路以外のところを流れる電流(漏れ電流)によって生じる腐食。迷走電流の原因が直流電車線路の場合を特に電食という。
  • 応力腐食割れ(stress corrosion cracking:SCC
     腐食と引張応力との相乗作用によって金属材料に割れを生じる現象。
  • 腐食疲労(corrosion fatigue)
     腐食と繰り返し応力との相乗作用によって,金属材料に生じる強度低下。応力単独の場合より金属疲労が促進される。
  • 水素脆性(hydrogen embrittlement)
     腐食,酸洗い,電解,溶接などによって生じた水素が金属中に吸蔵されて,材質がもろくなる現象。現象が現れるまで時間を要するため,遅れ破壊ともいう。
  • 摩耗腐食,エロージョン・コロージョン(erosion corrosion)
     流動する水,土砂などの環境物質の摩耗作用と腐食作用の相乗作用によって金属に生じる損耗。各作用が単独の場合の損傷の単純和より大きい損傷となる。
  • キャビテ-ション・コロージョン(cavitation corrosion)
     金属表面で,これに接触する液体の圧力が繰返し変動することで,高速での気泡の発生・崩壊が起こることによって,金属表面にに生じる損傷をキャビテーション損傷という。この現象で金属表面の不動態皮膜などの酸化皮膜が破壊され,腐食が促進されることをキャビテーション・コロージョンという。
  • フレッティング・コロージョン(fretting corrosion)
     空気中で金属とそれに接触する金属又は他の物質との接触面で,微小の滑りが繰り返し起こるときに金属表面に生じる腐食をいう。擦過(さっか)腐食ともいう。

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