第六部:生化学の基礎 糖質(炭水化物)

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  ここでは,植物などで行われる糖質の光合成に関連し, 【光合成とは】, 【葉緑体の構造】, 【明反応とは】, 【暗反応とは】 に項目を分けて紹介する。

  光合成とは

 光合成( photosynthesis )
 一般的には,植物,緑藻や一部の細菌(光合成細菌)などで葉緑体(クロロプラスト,chloroplast )内の光合成色素(クロロフィルなど)を用いて行われる光化学反応( photochemical reaction )による二酸化炭素( CO2 )の固定反応と考えられている。
 光合成の過程は,明反応と呼ばれる光エネルギーを利用する過程,それに続く暗反応と呼ばれる過程に分けられる。

 明反応( light reaction )
 光化学反応とも呼ばれ,光エネルギーを利用した反応である。
 明反応は,水を酸化する酸素発生型硫化水素や水素などを酸化する酸素非発生型に分けられる。
 何れでも,最終的には NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と ATP(アデノシン三リン酸)を生成する反応である。

 暗反応( dark reaction )
 明反応で生成した NADPHATP を利用し二酸化炭素還元して糖質を合成する反応(固定反応)である。

 光化学反応と光反応の違いは?
 化学分野全般で,光により引き起こされるさまざまな化学反応を光反応( photoreaction )と称しているが,光合成などを扱う生化学分野では,色素分子が光エネルギーを吸収し,励起された電子が飛び出し,物質の酸化還元を引き起こす光反応を特に光化学反応( photochemical reaction ,light‐dependent reaction )と称している。

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  葉緑体の構造

 光合成は,葉緑体( chloroplast )の中のチラコイド( Thylakoid )が結合した構造の膜(チラコイド膜に配置したたんぱく質複合体(構造解析が困難)で起こる。
 チラコイドとは,光化学反応が起きる場所で,【明反応とは】で紹介するように,膜に光合成色素( photosynthetic dye ),ATP 合成酵素などのたんぱく質複合体が直接埋め込まれている。

 光合成色素とは,光エネルギーを吸収する色素(たんぱく質複合体)である。植物では葉緑素と呼ばれ,マグネシウムイオン( Mg2+ )が 4 個のピロールが環状に配置したテトラピロール環の中心に配位(キレート)した構造のクロロフィル a ( C55H72O5N4Mg ),クロロフィル b ( C55H70O6N4Mg )である。
 なお,植物以外の藻類などでは,クロロフィル a の他に,クロロフィル c ,クロロフィル d ,クロロフィル f などを光合成色素として利用されている。

 【参考】
 クロロフィル( chlorophyll )
 4つのピロールが環を巻いた構造で,中心にマグネシウムイオン( Mg2+ )を抱えたテトラピロールに,フィトールと呼ばれる長鎖アルコールがエステル結合した基本構造をもつ。クロロフィルは,中性~塩基(アルカリ)性では安定であるが,酸性や光にに対して不安定な化合物である。
 ピロール( pyrrole )
 分子式 C4H5N の五員環構造を持つ複素芳香族化合物のアミンの一種である。4個のピロールを含む化合物群をテトラピロール( tetrapyrrole )という。
 フィトール( phytol )
 天然に存在する直鎖状のジテルペンアルコール( 4つのイソプレンによって構成され C20H32 の分子式を持つテルペンのアルコール)の一つである。

植物の葉に存在する葉緑体のイメージ図

植物の葉に存在する葉緑体のイメージ図
出典:国立研究開発法人 理化学研究所葉緑体内部のダイナミックな構造変化を生きたまま観察

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  明反応とは

 明反応( light reaction )
 光化学反応とも呼ばれ,光エネルギーを利用した反応である。
 明反応は,水を酸化する酸素発生型硫化水素や水素などを酸化する酸素非発生型に分けられる。
 何れでも,最終的には NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と ATP(アデノシン三リン酸)を生成する反応である。

 ここでは,一般的な植物の酸素発生型光合成の非循環型電子伝達系おける明反応の概要を紹介する。
 模式図(明反応の流れ)に示すように,葉緑体の中のチラコイド膜に配したたんぱく質複合体〔光化学系Ⅱ( PSⅡ),シトクロム b6 /f 複合体,光化学系Ⅰ( PSⅠ),CFo-CF1 ATP 合成酵素〕を経て,2分子の酸化で,1分子の酸素,2分子の NADPH ,4分子のATPが生産される。たんぱく質複合体それぞれの役割を次に紹介する。

 光化学系Ⅱ( PSⅡ)
 複合体は,色素 P680 , フェオフィチン( Pheo ),膜結合型プラストキノン( QA , QB ),膜結合型プラストキノンプールなどで構成されている。
 色素 P680は,波長 λ=680 nm (可視光(赤))の光を吸収し,色素分子の励起で酸化還元反応が起き,2 分子の( H2O )が分解され,1 分子の酸素( O2と4 個のプロトン( Hが発生する。
 放出された電子は,フェオフィチン PheoD1 →プラストキノン QA →プラストキノン QB →キノンプールへと順次移動する。

 シトクロム b6 /f 複合体
 複合体は,シトクロム b6 ,シトクロム f , 膜結合型プラストキノール( PQ ),リスケ型Fe-Sタンパク質,他で構成される。
 複合体では,プラストキノールから電子を受け取り,プロトン濃度勾配を発生させ,最終的に酸化型プラストシアニンに電子を伝達する。

 光化学系Ⅰ( PSⅠ)
 複合体は,色素 P700 ,電子受容体クロロフィル A-1 ,A0 ,フィロキノン A1 ,鉄 - 硫黄クラスター FX ,FA ,FB ,フェレドキシン,フェレドキシン-NADP+レダクターゼ( FNR )などで構成される。
 色素 P700 は,波長 λ=700 nm (可視光(赤)の吸収で励起し,放出された電子が近傍の電子受容体クロロフィルに伝達され,最終的にフェレドキシンに伝達され生じた還元型フェレドキシンがフェレドキシン-NADP+レダクターゼ( FNR )で触媒されることで NADPH を生産する。

 CF0-CF1 ATP 合成酵素
 CF0-CF1 ATP合成酵素では,プロトン濃度勾配を利用(濃度勾配を解消するためにプロトンが合成酵素を通って汲み出される現象)し,ADPとリン酸から 1 分子の ATP が合成される。これを光リン酸化( photophosphorylation )という。

明反応の流れ

明反応の流れ
元図:科学技術振興機構光合成最大の謎を解明

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  暗反応とは

 暗反応( dark reaction )
 明反応で生成した NADPHATP を利用し二酸化炭素還元して糖質を合成する反応(固定反応)である。
 なお,暗反応は,光合成の中で,光と無関係な反応をいう。

 ここでは,一般的な植物の酸素発生型光合成の非循環型電子伝達系おける暗反応の概要を紹介する。
 この反応では,明反応でつくられた 3分子の ATP および 2分子の NADPH を用いて,二酸化炭素から糖を生成する回路反応で,炭酸固定回路(カルビン=ベンソン回路:Calvin-Benson's cycle ,カルビン回路や還元型ペントースリン酸回路ともいう)といわれる。

暗反応(炭素固定回路)

暗反応(炭素固定回路)
図出典:東京大学生命科学教育用画像集(2017年参照;現在はアクセス不可)・カルビン回路の簡略図

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