第六部:生化学の基礎 核酸(DNA , RNA)
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ここでは,生体物質の代表的な核酸(RNA , DNA)に関連し, 【核酸とは】, 【核酸の構造】 に項目を分けて紹介する。
核酸とは
核酸( nucleic acid )
ウイルスを含むすべての生物にとって,増殖をはじめとし,生命活動の維持に重要な働きをする物質で,リボ核酸( ribonucleic acid :RNA )とデオキシリボ核酸( deoxyribonucleic acid :DNA )の 2 種類に大別される。
リボ核酸( RNA )
分子中の糖がリボース( ribose :5 個の炭素を持つ五炭糖,単糖)のものをいう。
デオキシリボ核酸( DNA )
分子中のリボースの 2' 位の水酸基が水素基に置換された 2-デオキシリボースのものをいう。
化学的特徴
核酸に共通する化学的特徴は,核酸塩基,五炭糖(リボース又はデオキシリボース),リン酸で構成されるヌクレオチドがホスホジエステル結合で枝分かれなしに連続した高分子(ポリヌクレオチド)である。
ヌクレオチド( nucleotide )
ヌクレオシドにリン酸基が結合した物質である。
ヌクレオシド( nucleoside )
五炭糖(リボース又はデオキシリボース)の 1 位の炭素に,核酸塩基がグリコシド結合(糖分子と他の有機化合物との脱水縮合による結合)したものである。
ホスホジエステル結合( phosphodiester bond )
炭素原子の間がリン酸を介した 2 つのエステル結合によって共有結合することをいう。
核酸塩基( nucleobase )
核酸を構成する塩基成分には,下図で紹介するプリン塩基に分類されるアデニン( A ),グアニン( G ),ピリミジン塩基に分類されるシトシン( C ),チミン( T ),ウラシル( U )がある。カッコ内は,一般的に用いられる塩基の略号である。
プリン塩基( purine base )
プリン体ともいわれ,プリン環を基本骨格とする生体物質で,核酸塩基のアデニン,グアニンの他にビタミン補酵素の NAD ,FAD やカフェイン,テオブロミンなどがある。
ピリミジン塩基( pyrimidine base )
ピリミジン核を基本骨格とする生体物質で,核酸塩基のシトシン,チミン,ウラシルの他に,5‐メチルシトシン,5‐(ヒドロキシメチル)シトシンがある。
なお,リボ核酸( RNA )には,アデニン,グアニン,シトシン,ウラシルが用いられ,デオキシリボ核酸( DNA )には,アデニン,グアニン,シトシン,チミンが用いられる。
核酸分子の結合
核酸は,分子中の糖の 1' 位に核酸塩基が結合し,3' 位と隣の糖の 5' 位がリン酸エステル構造で繰り返し結合している。核酸の転写や翻訳では,5' 位から 3' 位の方向へ進む。
糖鎖の両端のうち,リン酸が結合して切れている側を 5' 末端,反対側を 3' 末端と呼んで区別する。核酸上の領域について, 5' 位側を上流,3' 位側を下流という。
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核酸の構造
核酸は,ヌクレオチドがホスホジエステル結合で枝分かれなく連なったポリヌクレオチドで,分子内の相互作用などで特徴的な立体構造(一次~四次構造)を持つ。
一次構造
連続的に枝分かれのない五炭糖(リボース又はデオキシリボース)とリン酸が繰り返す一本鎖を一次構造という。
二次構造
主なリボ核酸( RNA )は,一次構造の一本鎖の五炭糖から核酸塩基がはみ出したような構造となるため,隣接する塩基間の相互作用により一本鎖の螺旋構造となる。
主なデオキシリボ核酸( DNA )では,隣接する塩基間の相互作用に加え,互いに平行に配置する鎖の対向する塩基間の水素結合が生じ,規則的な二本鎖の二重螺旋構造となる。
三次,四次構造
二次構造とそれ以外の配列が混合する構造を三次構造,核酸以外の成分と相互作用した状態を四次構造(たんぱく質合成の場であるリボゾームや DNA が巻き付いたヌクレオソームなどの核たんぱく質との構造)という。
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