第六部:生化学の基礎 酵素,ビタミン,ホルモン
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ここでは,生体に必須の脂溶性ビタミンに関連し, 【ビタミン A 】, 【ビタミン D 】, 【ビタミン E 】, 【ビタミン K 】 に項目を分けて紹介する。
ビタミン A
ビタミン( vitamin )
生命を維持するために必要な栄養素で,糖質,たんぱく質,脂質,ミネラルに分類されず,生体内で必要量を合成することができない有機化合物をいう。
この定義から分かるように,生体内の代謝機構に依存することになり,ビタミンに分類される化合物は,生物種で異なる。例えば,ビタミン C は,人やサルの体内で必要量を合成できないためビタミンに該当するが,他の哺乳類では十分な量を生合成できる代謝経路を持つのでビタミンに該当しない。
すなわち,ビタミンは,体内で必要量を生合成できない栄養素であり,食物として外部から摂取が必要不可欠で,欠乏するとビタミン欠乏症といわれる疾病や成長障害などが起きる。
脂溶性ビタミン
ビタミンA ,ビタミンD,ビタミン E,ビタミン K は,脂溶性ビタミンに分類され,酸に弱く,塩基に安定である。
ビタミンA( Vitamin A )
レチノール( Retinol ,ビタミンAアルコール),レチナール( Retinal ,ビタミンAアルデヒド),レチノイン酸( Retinoic Acid ,ビタミン A 酸)のビタミン A1 と,これらの 3,4 – デヒドロ体( 3-4位に二重結合)のビタミン A2 とがある。
なお,体内でビタミン A に変換される物質のα‐,β‐,γ‐カロテン,β‐クリプトキサンチン,エキネノンなどをプロビタミンA( Provitamin A )という。
生理作用
網膜細胞の保護に用いられ,欠乏すると夜盲症などの症状を生じる。レチナールは,網膜の視物質(ロドプシン)の構成成分で,光により酸化して 11-シス-レチナールに変化するなど,光による興奮の引き金機構として重要な物質である。
欠乏症
夜盲症(トリ目),角膜乾燥,発育不全(骨,歯など),皮膚や粘膜の上皮の角質化,感染に対する抵抗力低下など
多く含む食べ物
肝油,レバー,ウナギ,乳製品(牛乳,チーズ,バターなど),β‐カロテンなどのカロチノイドを多く含む緑黄色野菜(しそ,カボチャ,人参,ホウレン草など)
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ビタミン D
ビタミン D ( Vitamin D )
エルゴカルシフェロール( C28H44O ,Ergocalciferol ,ビタミンD2 )とコレカルシフェロール( C27H44O ,Cholecalciferol ,ビタミン D3 )に分けられる。なお,ビタミン D2 は植物に,ビタミン D3 は動物に多く含まれる。
紫外線照射によってビタミンD活性を発現するエルゴステロール( C28H44O ,ergosterol )や 7‐デヒドロコレステロール( C27H44O ,7-dehydrocholesterol )は,プロビタミン D( Provitamin D )という。
生理作用
腸管からのリンやカルシウムの吸収促進,類骨組織への石灰化の促進,歯芽の石灰化助長の作用がある。また,活性型ビタミンD(カルシトリオール,1,25‐ジヒドロキシコレカルシフェロール)として、血中のカルシウム( Ca2+ )濃度を高める作用がある。
欠乏症
骨のカルシウム沈着障害が発生し,くる病,骨軟化症,骨粗鬆症など
多く含む食べ物
魚肉(しらす干し,紅鮭,サンマ,イワシ,サバなど),乳製品,シイタケなどのキノコ類
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ビタミン E
ビタミン E( Vitamin E )
α-,β-,γ-,δ-トコフェロール( tocopherol ),α-,β-,γ-,δ-トコトリエノール( tocotrienol )の 8 種類の異性体がある。なお,トコトリエノール側鎖には,トコフェロールにはない 3 つの二重結合を有する。
α-トコフェロール( C29H50O2 )の IUPAC 名は,2,5,7,8-tetramethyl-2-(4',8',12'-trimethyltridecyl)-6-chromanol で,α-トコトリエノール( C29H47O2 )の IUPAC 名は,2,5,7,8-tetramethyl-2-(4',8',12'-trimethyltrideca-3',7',11'-trienyl)-6- chromanol である。
生理作用
生体膜中でリン脂質の不飽和脂肪酸の酸化抑制,過酸化脂質の増加を防止。腸管におけるビタミンA の酸化分解防止,溶血防止などの特性を有する。
欠乏症
脂肪吸収障害やある場合には溶血性貧血や運動失調などの神経症状。
多く含む食べ物
油脂類(ひまわり油,べにばな油,米ぬか油など),種実類(アーモンド,ラッカセイ,大豆など),魚卵類(いくら,たらこなど),青魚,マヨネーズなど
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ビタミン K
天然のビタミンK( Vitamin K )
2-メチル-1,4-ナフトキノン( C11H8O2 )を基本骨格とし,3 位に結合した側鎖の構造により区別される。
ビタミン K1 は,フィロキノン,ファイトメナジオンなどとも呼ばれ,植物の光合成に使われる。ビタミン K2 は,メナキノンとも呼ばれ,側鎖の長さでメナキノン-4 ,メナキノン-7 などがある。メナキノン-4 は動物体内に多く存在する。ビタミン K3 は,メナジオンとも呼ばれ,動物体内で代謝されてビタミン K2 になる。ビタミン K4 は,メナジオールとも呼ばれ,ビタミン K3 の還元型である。ビタミン K5 は,ビタミン K4 の水酸基をアミノ基に置換した 4-アミノ-2-メチル-1-ナフトール。
なお,ビタミン K は,人の腸管内に棲んでいる腸内細菌が合成している。
生理作用
動物体内で血液の凝固や組織の石灰化に関わっている。ビタミン K1 (フィロキノン)は光合成の光受容に関与する。ビタミン K2(メナキノン)は,血液凝固因子を活性化(γ-カルボキシグルタミン酸の合成に関与)する。
欠乏症
出血傾向,血液凝固不良など血液凝固能の低下,潜在的な欠乏は骨粗鬆症や骨折,動脈硬化に影響する。
多く含む食べ物
ビタミン K1 は,緑葉野菜,植物油,マーガリン,豆類,海藻類,魚介類に,ビタミン K2 は,納豆,アオノリ,鶏卵,肉類,乳製品に含まれる。
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