第六部:生化学の基礎 酵素,ビタミン,ホルモン

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  ここでは,生体に必須で生合成できないビタミンに関連し, 【ビタミンとは】, 【ビタミンの種類】 に項目を分けて紹介する。

  ビタミンとは

 ビタミン( vitamin )
 生命を維持するために必要な栄養素で,糖質,たんぱく質,脂質,ミネラルに分類されず,生体内で必要量を合成することができない有機化合物をいう。
 この定義から分かるように,生体内の代謝機構に依存することになり,ビタミンに分類される化合物は,生物種で異なる。例えば,ビタミン C は,人やサルの体内で必要量を合成できないためビタミンに該当するが,他の哺乳類では十分な量を生合成できる代謝経路を持つのでビタミンに該当しない。

 すなわち,ビタミンは,体内で必要量を生合成できない栄養素であり,食物として外部から摂取が必要不可欠で,欠乏するとビタミン欠乏症といわれる疾病や成長障害などが起きる。
 このため,食品衛生法施行規則 別表第一 指定添加物リスト栄養強化剤として,30 品目のビタミン及びビタミン様化合物の使用が認められている。
 なお,ビタミン様物質とは,ビタミンではないが,ビタミンに似た生理作用をもつ有機化合物をいう。

 【参考】
 食品衛生法
 平成 30年 6月 13日に「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布され,平成 30年 6月 15日に 15年ぶりに食品衛生法が改正された。関連する政令,省令,条例等の改正が進み,令和 2年 12月 4日に新しい食品衛生法施行規則(省令第二十三号)が施工された。
 食品衛生法の改正の背景を,
 「前回の食品衛生法等の改正から約 15年が経過し,世帯構造の変化を背景に,調理食品,外食・中食への需要の増加等の食へのニーズの変化,輸入食品の増加など食のグローバル化の進展といった我が国の食や食品を取り巻く環境が変化。」
 と定め,これに対応するため,次に示す 7つの課題に対応するための改正が行われた。
 1.広域的な食中毒事案への対策強化
 2.HACCP( Hazard Analysis and Critical Control Point )に沿った衛生管理の制度化
   すべての食品等事業者に,一般衛生管理に加え,HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。
 3.特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
 4.国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
 5.営業許可制度の見直し,営業届出制度の創設
 6.食品リコール情報の報告制度の創設
 7.その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化,自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)

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  ビタミンの分類

 人のビタミンとして,13 種が認められている。ビタミン 13 種とは,化合物種による分類ではなく,機能による分類である。
 例えば,網膜の視物質ロドプシンの構成成分で,光による興奮(視興奮)の引き金機構に必要なビタミン種として分類されるビタミン A は,レチノール,レチナール,レチノイン酸などの化合物群をいう。

 一般的には,ビタミンは,溶解性により,水に溶け易い水溶性ビタミンと,水に溶け難い脂溶性ビタミンに大別される。
 ビタミンは,体内での用途,作用機構,酸・塩基に対する安定性,酸化され易さなどの特性に大きな違いがある。

 水溶性ビタミン
 ビタミン B 群,ビタミン C が水溶性ビタミンに分類される。水溶性ビタミンは,には安定であるが,塩基には弱い。
 ビタミン B 群は,体内で補酵素の合成原料となるので,物質代謝に欠くことができないビタミンである。
 なお,ビタミン B 群とは,ビタミン B1 ,ビタミン B2 ,ナイアシン( B3 ),パントテン酸( B5 ),ビタミン B6 ,ビオチン( B7 ),葉酸( B9 ),ビタミン B12 の 8 種をいう。

 脂溶性ビタミン
 ビタミンA ,ビタミンD,ビタミン E,ビタミン K は,脂溶性ビタミンに分類され,に弱く,塩基に安定である。

 熱に対する安定性
 ビタミン E >ビタミンD >ビタミンB2 >ビタミンB1 >ビタミンA >ビタミンCの順で,二重結合を持つビタミン A ,ビタミン C ,ビタミン E は酸化され易い。

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