第六部:生化学の基礎 酵素,ビタミン,ホルモン

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  ここでは,生体活動の調整に必要不可欠の生体物質ホルモンに関連し, 【ホルモンの定義】, 【分泌とは】, 【内分分泌腺】, 【ホルモンの分類】 に項目を分けて紹介する。

  ホルモンの定義

 ホルモン( hormone )
 微量であるが,生体での代謝,神経伝達,発生,分化など生体活動の調節機構に密接に関与する一群の物質のうち,特定の器官または組織(分泌腺で作られ,血液やリンパ管に分泌され,別の特定の細胞で効果を発揮(内分泌)するものをいう。
 なお,微量で生体活動に関連する点では,ビタミンと似ているが,ビタミンは生合成できない化合物と定義され,生合成されるホルモンとは定義が異なる。
 ホルモンとは,一般的には,内分泌腺から放出される物質をいう。

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  分泌とは

 ヒトの分泌は,分泌腺(分泌する組織や臓器)から導管を介して体の表面や消化管などへ分泌される汗,唾液などの外分泌( exocrine secretion )分泌する組織から導管を経由せずに直接に血液中や体液中に分泌される内分泌(エンドクリン)に分けられる。
 この組織を内分泌腺( endocrine gland )といい,分泌され,血液やリンパ液などの体液によって離れた器官に運ばれそこで作用する物質をホルモン( hormone )という。

 内分泌( endocrine )
 分泌された物質と標的細胞との関係から次の様に分類される。
 傍分泌(パラクリン,パラ分泌,paracrine )
 分泌された物質が近隣の受容体を持つ細胞に作用する神経伝達物質など。
 自己分泌(オートクリン,autocrine )
 分泌された物質が,分泌した細胞自身の受容体に作用する。
 接触分泌(ジャクスタクリン,juxtacrine )
 分子は放出されず,細胞膜に結合しているシグナル分子が標的細胞の細胞膜に結合している受容体に作用する。

 【参考】
 外分泌腺( exocrine gland )
 外分泌腺は,腺上皮が上皮からずれて結合組織内に陥入してつくられる腺体と,分泌物を導出するための道管とからなる。道管は一般に腺体近くでは細いが,被蓋(ひがい)上皮に近い部分では太い。
 外分泌を行う腺組織をいう。外分泌腺には,たとえば,唾液腺・胃腺・汗腺・乳腺・涙腺・皮脂腺・毒腺・塩類腺・絹糸腺などさまざまな種類のものがある。
 唾液腺(だえきせん);動物の唾液を分泌する腺で,大唾液腺と小唾液腺とに分類され,脊椎動物の大唾液腺には,耳下腺と顎下腺があり,哺乳類では更に舌下腺がある。
 胃腺(いせん);胃の内壁の粘膜に開口する 3種の腺(固有胃腺 ,噴門腺,幽門腺)の総称である。狭義には,固有胃腺だけを指す。
 汗腺(かんせん);哺乳類の皮下組織内にある皮膚腺の一つで,汗を分泌する。普通の汗を分泌するエクリン腺と臭いとねばりのある液を分泌するアポクリン腺の 2種類がある。
 乳腺(にゅうせん);脊椎動物の哺乳類だけにある乳汁を分泌する腺。皮膚腺の一種で,汗腺から進化したもの。
 涙腺(るいせん);爬虫類以上の動物における涙の分泌器官。ヒトでは眼窩内で眼球の上外側にある。
 皮脂腺(ひしせん);脂腺(しせん),毛包腺(もうほうせん)ともいわれる。脂肪酸やコレステロールを成分とする皮脂を分泌し,毛や皮膚を潤して乾燥を防ぐ役割を果たす。
 毒腺(どくせん);動物がもつ腺で,他の動物に対して有毒な作用がある化学物質を分泌するものをいう。
 塩類腺(えんるいせん);海ガメ,海鳥や爬虫類などにみられる分泌腺で,過剰に摂取した塩分を排出する分泌腺である。
 絹糸腺(けんしせん);絹糸のもとになる液状絹を生成して分泌する器官。カイコなどの鱗翅(りんし)目,トビケラなどの毛翅(もうし)目,コマユバチなどの膜翅(まくし)目をはじめ,さまざまな昆虫の幼虫にみられる。

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  内分泌腺(内分泌器官)

 ホルモンを分泌する内分泌腺(内分泌器官)には,脊髄動物の場合,視床下部,下垂体,甲状腺,副甲状腺,副腎,膵臓,腎臓,卵巣,精巣,胎盤など部位の数は多い。
 これらを分泌開始の刺激の違いで分類すると,視床下部・下垂体・副腎髄質などは神経の情報で,性腺・副腎皮質・甲状腺濾胞細胞・心臓などは細胞状態の情報で,消化管・膵臓・甲状腺濾胞傍細胞・副甲状腺などは栄養情報で分泌する。

主な内分泌器官

主な内分泌器官
和歌山県立医科大学内科学第一講座ホルモンとは

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  ホルモンの分類

 ホルモンを合成・分泌する臓器は多岐にわたるが,化学構造で分類すると,ホルモンは,ペプチド(たんぱく質)系ホルモン,ステロイド系ホルモン,アミノ酸誘導体系ホルモンの 3 種に大別される。

 ペプチド(たんぱく質)系ホルモン
 ペプチドホルモン( peptide hormone ),ペプチド型ホルモンともいい,他のタンパク質のように,mRNA の鋳型によってアミノ酸を組み合わせて作られる。
 ペプチド系ホルモンは,分子量が大きく細胞内に入れない。機能は,細胞膜表面の受容体にホルモンが結合することにより,細胞内のセカンドメッセンジャーにより情報が伝達され機能が発現する。

 ステロイド系ホルモン
 一般的に,生殖腺や副腎でコレステロールから合成される。ホルモン分子の構造が脂質(脂溶性)で分子量が小さいので,細胞膜に達すると容易に内部の細胞核へ到達する。
 ステロイド系ホルモンは,機能により性ホルモン,糖質コルチコイド,鉱質コルチコイドなどに分類される。

 アミノ酸誘導体系ホルモン
  アドレナリンや甲状腺ホルモンなど,アミノ基を持つホルモンで,セロトニンはインドール基をもつのでインドールアミン( indoleamine )ともいう。なお,インドール( indole )とは,ベンゼン環とピロール環が縮合した構造の有機化合物である。
 ドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリンはカテコール基をもつのでカテコールアミン( catecholamine )とも呼ばれる。
 なお,カテコールアミンとは,一般にチロシンから誘導されたカテコール( catechol ,示性式 C6H4(OH)2 のフェノール類)とアミンを有する化学種をいう。

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